63 / 81
オニキス捜索
しおりを挟む
今日は焼印を消す日だ。刻まれたあの日を嫌でも思い出す。
気を失いそうなほどの激痛に吹きでる脂汗。じくじくとした痛みに眠れぬ夜を過ごした日々。
消すときは痛みを伴うのだろうかと不安が胸を過ぎる。
でも、これが済めばオニキスと会える。
そのあとまたしばらく会えなくなるのだとしても、ひとまず一目でもオニキスの無事を確認したい。
その思いでアンジェリカの胸はいっぱいだった。
時を同じくして、サンプトゥン城の敷地にウォルターは忍び込んでいた。
万が一クリスの交渉が失敗したときのために、アンジェリカを救出するために先に潜入することになったのだ。
「まったく、どこにいるんだ」
オニキスが捕らえられていた場合、アンジェリカだけを救出しようとしてもアンジェリカは動かないだろう。
それならば先にオニキスを解放すれば彼女も安心して逃げだすことができる。というわけで、ウォルターは捕らえられていると思われるオニキスを探していた。
クリスはアンジェリカを妻にするつもりでいる。それをアンジェリカが断らない可能性はゼロではない。
一体アンジェリカはなにを望むのか。
悶々と考え込みそうになる思考を振り払い、城内を巡回する騎士たちに見つからないよう捜索に集中する。
オニキスのような大きな生き物を城内に運び込むのは難しだろうと思い、見つかる可能性が高まってしまうが兵士舎の付近を慎重に探す。
「広いんだよ、ったく……」
騎士の目を掻い潜り探し回ること数十分、建物の中から話し声が聞こえ、ウォルターは柱の影に身を潜めた。
「え? まだ食わないって、もうひと月近く経つだろ?」
「ああ、あれはもうダメかもな。檻を開く音にも反応しなくなったし。死んだら研究機関のほうに回すらしい」
「戦力になるのかと思って期待してたんだがな」
「ああ、見てみたかったよな、ドラゴンの戦い」
聞き耳を立てていたウォルターは眉をひそめた。オニキスの話で間違いないと思うが、その内容は信じたくないものだった。
こっちに来てから1度も食事をしていないということなのだろうか。そうならば餓死してもおかしくはない。
大きな肉塊を抱えて出てきた騎士のあとをウォルターはこっそりとついて行った。
兵士の宿舎を通り抜け、遮蔽物のない広場のようなところを歩いていく兵士を遠くの物陰から視線で追いかける。
兵士は何もないところでしゃがみこむと、鍵を取りだして柵を持ち上げた。そこへ肉の塊を落とし、また鍵をかけてから立ち上がり、その場をあとにした。
周囲に見張りはいないようだが、見張りの必要がないほど弱っているということなのだろうか。
その兵士が戻ってきたところに飛びかかり、首を絞めて気絶させて引きずる。
兵士がしゃがんでいたところまでくると、そこには地面を深く掘って作った檻があった。その中心にいるのはオニキスだ。
気を失いそうなほどの激痛に吹きでる脂汗。じくじくとした痛みに眠れぬ夜を過ごした日々。
消すときは痛みを伴うのだろうかと不安が胸を過ぎる。
でも、これが済めばオニキスと会える。
そのあとまたしばらく会えなくなるのだとしても、ひとまず一目でもオニキスの無事を確認したい。
その思いでアンジェリカの胸はいっぱいだった。
時を同じくして、サンプトゥン城の敷地にウォルターは忍び込んでいた。
万が一クリスの交渉が失敗したときのために、アンジェリカを救出するために先に潜入することになったのだ。
「まったく、どこにいるんだ」
オニキスが捕らえられていた場合、アンジェリカだけを救出しようとしてもアンジェリカは動かないだろう。
それならば先にオニキスを解放すれば彼女も安心して逃げだすことができる。というわけで、ウォルターは捕らえられていると思われるオニキスを探していた。
クリスはアンジェリカを妻にするつもりでいる。それをアンジェリカが断らない可能性はゼロではない。
一体アンジェリカはなにを望むのか。
悶々と考え込みそうになる思考を振り払い、城内を巡回する騎士たちに見つからないよう捜索に集中する。
オニキスのような大きな生き物を城内に運び込むのは難しだろうと思い、見つかる可能性が高まってしまうが兵士舎の付近を慎重に探す。
「広いんだよ、ったく……」
騎士の目を掻い潜り探し回ること数十分、建物の中から話し声が聞こえ、ウォルターは柱の影に身を潜めた。
「え? まだ食わないって、もうひと月近く経つだろ?」
「ああ、あれはもうダメかもな。檻を開く音にも反応しなくなったし。死んだら研究機関のほうに回すらしい」
「戦力になるのかと思って期待してたんだがな」
「ああ、見てみたかったよな、ドラゴンの戦い」
聞き耳を立てていたウォルターは眉をひそめた。オニキスの話で間違いないと思うが、その内容は信じたくないものだった。
こっちに来てから1度も食事をしていないということなのだろうか。そうならば餓死してもおかしくはない。
大きな肉塊を抱えて出てきた騎士のあとをウォルターはこっそりとついて行った。
兵士の宿舎を通り抜け、遮蔽物のない広場のようなところを歩いていく兵士を遠くの物陰から視線で追いかける。
兵士は何もないところでしゃがみこむと、鍵を取りだして柵を持ち上げた。そこへ肉の塊を落とし、また鍵をかけてから立ち上がり、その場をあとにした。
周囲に見張りはいないようだが、見張りの必要がないほど弱っているということなのだろうか。
その兵士が戻ってきたところに飛びかかり、首を絞めて気絶させて引きずる。
兵士がしゃがんでいたところまでくると、そこには地面を深く掘って作った檻があった。その中心にいるのはオニキスだ。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました
あさひな
ファンタジー
二児の子供がいるワーキングマザーの私。仕事、家事、育児に忙殺され、すっかりくたびれた中年女になり果てていた私は、ある日事故により異世界転生を果たす。
転生先は、前世とは縁遠い公爵令嬢「イザベル・フォン・アルノー」だったが……まさかの乙女ゲームの悪役令嬢!?
しかも乙女ゲームの内容が全く思い出せないなんて、あんまりでしょ!!
破滅フラグ(攻略対象者)から逃げるために修道院に逃げ込んだら、子供達の扱いに慣れているからと孤児達の世話役を任命されました。
そりゃあ、前世は二児の母親だったので、育児は身に染み付いてますが、まさかそれがチートになるなんて!
しかも育児知識をフル活用していたら、なんだか王太子に気に入られて婚約者に選ばれてしまいました。
攻略対象者から逃げるはずが、こんな事になるなんて……!
「貴女の心は、美しい」
「ベルは、僕だけの義妹」
「この力を、君に捧げる」
王太子や他の攻略対象者から執着されたり溺愛されながら、私は現世の運命に飲み込まれて行くーー。
※なろう(現在非公開)とカクヨムで一部掲載中
骨から始まる異世界転生~裸の勇者はスケルトンから成り上がる。
飼猫タマ
ファンタジー
トラックに轢かれて異世界転生したのに、骨になるまで前世の記憶を思い出せなかった男が、最弱スケルトンから成り上がってハーレム勇者?魔王?を目指す。
『小説家になろう』のR18ミッドナイトノベルズで、日間1位、週間1位、月間1位、四半期1位、年間3位。
完了済では日間、週間、月間、四半期、年間1位をとった作品のR15版です。
召喚巫女の憂鬱
リコピン
恋愛
成人式の日、突如異世界に召喚されてしまった澄子(とうこ)は、訳もわからぬままに世界の瘴気を祓うための巫女にされてしまう。
―汝、世界を愛せよ
巫女へと囁き続けられる声。
―私は、私の世界を愛していた
元の世界へ帰れない澄子は、やがて異世界を憎むようになる。しかし、かつて彼女を救った男の存在に、その世界の全てを憎みきることは出来ない。
成りたくないのに巫女にされ、やりたくないのに世界を浄化してしまう澄子の心は、今日も晴れないまま。
彼女は知らない。この世界が、R18乙女ゲームの世界であることを―
※召喚先が18禁乙女ゲームの世界なのでR15指定にしていますが、ラブエッチ的な表現はありません。
※娼館や女性に暴力を働く表現が出てきます。ご注意下さい。
※シリアス展開で、重い暗い表現も出てきます。作者的にはハッピーエンドです。
エロゲーの悪役に転生した俺、なぜか正ヒロインに溺愛されてしまった件。そのヒロインがヤンデレストーカー化したんだが⁉
菊池 快晴
ファンタジー
入学式当日、学園の表札を見た瞬間、前世の記憶を取り戻した藤堂充《とうどうみつる》。
自分が好きだったゲームの中に転生していたことに気づくが、それも自身は超がつくほどの悪役だった。
さらに主人公とヒロインが初めて出会うイベントも無自覚に壊してしまう。
その後、破滅を回避しようと奮闘するが、その結果、ヒロインから溺愛されてしまうことに。
更にはモブ、先生、妹、校長先生!?
ヤンデレ正ヒロインストーカー、不良ヤンキーギャル、限界女子オタク、個性あるキャラクターが登場。
これは悪役としてゲーム世界に転生した俺が、前世の知識と経験を生かして破滅の運命を回避し、幸せな青春を送る為に奮闘する物語である。
初心な人質妻は愛に不器用なおっさん閣下に溺愛される、ときどき娘
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
誰もが魔力を備えるこの世界で魔力のないオネルヴァは、キシュアス王国の王女でありながらも幽閉生活を送っていた。
そんな生活に終止符を打ったのは、オネルヴァの従兄弟であるアルヴィドが、ゼセール王国の手を借りながらキシュアス王の首を討ったからだ。
オネルヴァは人質としてゼセール王国の北の将軍と呼ばれるイグナーツへ嫁ぐこととなる。そんな彼には六歳の娘、エルシーがいた。
「妻はいらない。必要なのはエルシーの母親だ」とイグナーツに言われたオネルヴァであるが、それがここに存在する理由だと思い、その言葉を真摯に受け止める。
娘を溺愛しているイグナーツではあるが、エルシーの母親として健気に接するオネルヴァからも目が離せなくなる。
やがて、彼が恐れていた通り、次第に彼女に心を奪われ始めるのだが――。
※朝チュンですのでR15です。
※年の差19歳の設定です……。
※10/4から不定期に再開。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる