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陽気な男

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前衛職がいるから平気だろ?」


 自らが担ぐ大剣を親指で指し示し、二カリと人懐こい笑みを浮かべる男。

 そのとおりなんどけど! そのとおりなんだけどあなたと行くのがいやなんです!

 とは言えず。


「とりあえずここじゃなんだし、外で話そうぜ」


  もっともなことを言われて従ったが最後、アンジェリカは男に言いくるめられてしまった。


 結局パーティーを組むことになってしまった……。


 ルンルンとご機嫌な男の後ろをどんよりとした顔でアンジェリカはついて行く。

 顔を隠しているということもあり、男のアンジェリカに対する反応は今のところ普通だ。
 こちらとしても初めての場所に行くのですぐに動ける前衛職がいるのは心強い。

 万が一のことが起こりそうになったら買ってもらってもらった品物を置いて立ち去ろうと決め、アンジェリカは荷物がたっぷりと詰まった重たいリュックを背負い直すのだった。


「それにしても、運良く腕の良さそうなヒーラーに会えるとはな」


 前を歩いていたはずの男――ウォルター・クラムホルツはいつの間にかアンジェリカの隣を歩いていた。

 突然肩が軽くなり慌てて隣を見上げると、ウォルターがパンパンのリュックをアンジェリカの背から取り上げて背負っていた。
 強引なところはあるが、そういう気遣いができるよう男のようだ。素直に小さくお礼の言葉を返す。


「さっきの店で買ったこの小瓶、魔力回復ポーション用だろ? ギルドに所属してそうでもないし、パーティー組んでるわけでもない。つまりあんたは、ソロでも生きられるだけの実力があるってことだ。
 そんなに大量にポーションが必要ってことは、拠点を移すか狩場を変えるかするつもりだったのか? 道具頼りの無茶な戦いをしそうなタイプには見えねぇし、ボスに挑む……ってのもさすがにないよな」


 伺うように覗き込もうとするウォルターの視線から逃れるようにローブのフードを深く被り直す。

 対人距離を広くとる愛珠は、こういう社交的というか人懐こい人種が苦手だ。所謂、ウォルターは陽キャラというやつだ。……魂がかわる前のアンジェリカもウォルターと同類なので複雑な気持ちではあるが。

 返事もしていないのに1人で喋っているウォルターをそっと見上げる。
 整った顔立ちで気遣いができ、性格も明るいこの男がわざわざ金を払ってまでパーティーメンバーを探す理由がわからない。

 戦うと豹変するタイプなのか、どうしようもない欠点があるのか。なんにせよ用心しておくに越したことはない。


「ところで腹減らねぇ? 腹ごしらえしてから行こうぜ」


 ニカッと笑って顔を覗き込んでこようとする男からさっと顔を隠すように俯く。警戒しておこうと思ったそばから警戒心が解かれてしまう。
「そうですね」と返しながら、心の内で警戒心を限界まで引き上げた。


 
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