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第11話 ディープ・ラブ・タイム
しおりを挟むなでしこ先輩とお風呂から上がり、二人で牛乳を飲む。
(お風呂後は牛乳に限るね! うっほ! うめえ!)
なでしこ先輩が私の髪の毛をドライヤーで乾かす。
(わお! すげえ! キューティクル!)
「まる、歯磨いて」
「はーい」
二人でしゅこしゅこ。ぺっ。
「電気消すぞ」
「はーい」
二人で日曜日ぶりの寝室へ。お布団を敷く。枕を置く。
「えっと」
私は布団の中に入り、手を押し当てた。ふみふみふみふみ。
(これで良し)
なんかこうすると寝やすい気がする。布団に潜る。
「ふえぇ…」
あああああああ。お布団きもちいいいよおおおおお! しゅごいよおおおおお! お布団だいしゅき! お布団! お布団しゅき! しゅきだよお! お布団最高だよぉおおおお!!
「お休みなさい!」
「まだ寝ない」
なでしこ先輩が私の上に乗っかった。
「うげっ。重たいです…」
「乙女に重たいと言うのは失礼だぞ」
「乙女同士なら失礼にはなりません」
「どうだか」
なでしこ先輩が私の上に被さり、額にキスをしてきた。
「んっ」
なでしこ先輩が私の頰にキスをしてきた。
「ん、…ふぇ」
なでしこ先輩が耳にキスをしてきた。
「あの、ん、何を」
「一週間、寝不足だって?」
さっきも眠れてなかったと言ってたな。
「寂しさによるストレスだろうな」
「えっ」
「今週、お互い触れてなかっただろ?」
なでしこ先輩の手が、そっと私の頬に触れた。
「どうだ、まる。暖かいだろ?」
「……はい」
「人は、ぬくもりがなくなると、寝不足になるらしい」
「えーーーーーー!? そうだったんですかーーーー!?」
私は目を丸くして、なでしこ先輩を見た。
「そっか! だから私、寝不足だったんですね!」
「その通り。毎日私と寝てるのに、急に一人になって、お前は無意識にストレスを抱えていたんだ。だからよく眠れなかった」
「はへー! そうだったんですね!」
「そうだ。だから」
なでしこ先輩が私の頬を撫でた。
「触れなかった今週の分、沢山触ってやる」
「あ、お気になさらず」
私はなでしこ先輩の手を掴み、お布団に置いた。
「私、今日はこのままでも眠れそうです!」
横をぽんぽん叩く。
「なでしこ先輩もお疲れでしょうから、寝てください!」
私はお布団を被った。
「おやすみなさい!」
すやぁ( ˘ω˘ )
「寝るな」
なでしこ先輩に両頬を潰された。
「ふぶっ!」
「まだ寝る時間じゃない」
「な、なでしこ先輩がお布団に行くって言ったんじゃないですか!」
「だから、戯れる時間を作ってやった」
なでしこ先輩が私の肩に頭を埋めた。
「猫の動画でもあるだろ。構ってほしくてキーボードの上を占領したりするやつ」
「ああ。見たことあります。でも、私は大丈夫ですよ。人間ですから」
「まる、さっき言ったことをもう忘れたか?」
私はお前のお姉ちゃんじゃない。
「私は?」
「……私の、ご主人様です」
「お前は?」
「……なでしこ先輩の、猫です」
「ということは?」
「…………私が、なでしこ先輩に、触られる?」
「よろしい」
「何ですか! それ! 横暴だ!」
両手をばたつかせると、なでしこ先輩が上から私を抱きしめた。
「うるさい。大人しくしろ」
「私じっとしてなきゃいけないんですか? 無理です! やだやだ! せっかくの金曜日の夜なんだからゲームしたいです! BL読みたいです!」
「ほう? 私に逆らう気か?」
言っても分からない奴だな。
「指導だ」
「指導いにゃぁぁああああ!」
私は慌ててお布団から逃げ出す。しかし、なでしこ先輩に足首を掴まれた。
「ひぇっ」
「逃がさない」
お布団に引きずられる。
「ああーーーーーー!」
「大人しくしろ」
「大根抜きぃーーー!」
うつ伏せでお布団に逆戻り。背中からなでしこ先輩に抱きしめられる。
「ちゅ」
「ひゃ」
うなじにキスをされる。
「ちゅ」
「ん」
違うところにキスをされる。
「ちゅ、ちゅ」
「ん、…んん」
なでしこ先輩の手がパジャマの中に入ってきて、私の脇腹に触れた。
「ん?」
こちょこちょこちょこちょ。
「あははははははは!!」
私が暴れ出す。
「やめっ! ひー! やめてください!」
こちょこちょこちょこちょ。
「あははは! やめーー! あひゃひゃひゃひゃ!!」
こちょこちょこちょこちょ。
「駄目です! あははは! だめぇ! あはははははは!!」
なでしこ先輩の手が腋に行った。
こちょこちょこちょこちょ。
「ぎゃははははは! 腋はあかんですって! あははははははは!!」
私は足をばたつかせる。
「やめ! 先輩、やめてくださ!」
こちょこちょこちょこちょ。
「あはははははははははは!」
なでしこ先輩の手が止まる。私は荒い呼吸を繰り返す。
「ひー…。駄目です…。はぁ…。疲れた…」
「いいことだ。遊び疲れたらよく眠れるんだぞ」
「取ってつけたようなことを…」
なでしこ先輩が枕の下に手を入れた。
(うん?)
ピンクの変なのが出てくる。私の興味がピンクの何かに注がれる。
「わあ、可愛いですね。何ですか? それ」
「おもちゃだ」
なでしこ先輩がスイッチを入れた。おもちゃが震えだす。
「わあ! なんか、えげつないくらい震えてますよ!」
「見たことないか? 動物のおもちゃで、ぶるぶる震えるやつ」
「あ、あります! あります! 猫とか犬とかのしっぽをこう伸ばして離すと、しっぽが戻る間に震えるやつですよね!」
「その中に入ってるやつが、これだ」
「ふへえ!」
「スマホも震えるだろ? これがそれだ」
「ふっへええ! ピンクなんですね!」
「これがたまたまピンクというだけだ」
「へーえ! なでしこ先輩は何でも知ってますね!」
……………。
「で、それがなんでここにあるんですか?」
「おもちゃだから」
ピンクのおもちゃが震える。
「これで遊ぼうと思ってな」
「どうやって遊ぶんですか?」
なでしこ先輩が私の肩におもちゃを押し当てた。ぶるぶる震える。
「あ、やっべえ。なでしこ先輩、これ、マッサージにいいですよ。あ、そこそこそこそこです。あ、やべえ。これ、気持ちいいですよ…うは…やべ…」
なでしこ先輩が私の背骨におもちゃ押し当てた。ぶるぶる震える。
「あ、しゅげえ…。なでしこ先輩、これ、しゅげえ威力です…。マッサージには丁度いい…あ、そこそこそこそこです。あああああ! これいいいいいぃぃいいい……」
おもちゃが下に移動する。ぶるぶる震える。
「あ、腰にもいいですね…。これ…」
おもちゃが下に移動する。ぶるぶる震える。
「あ、お尻のマッサージにもいいかもしれませんね…」
おもちゃが一瞬股の間にひっついた。
「ひゃっ!」
すぐに離れて、太ももにくっつく。
「わあ…。ふとももって凝るもんなんですね…。うはあ…気持ちいいですぅ…」
おもちゃが上に上る。脇腹にくっついて震える。
「あはははははは! 駄目ですってば! 先輩! 脇腹は駄目です!!」
また背中をおもちゃがなぞってくる。
「んふふふふ! やめてくださいってばぁ! 私、笑い疲れちゃいます!」
くすくす笑っていると、なでしこ先輩も薄く微笑み、私のうなじに再び顔を下ろした。唇がくっついてくる。
ちゅ。
「ひぇっ」
ちゅ。
「ん」
ぶるぶる。
「ふへへ…」
ちゅ。
「ふふふ! くすぐったいです…」
ちゅ。
「…ふふ」
ちゅ。
「……ん」
ぶるぶる。
「………んん……」
ピンクのおもちゃが震える。なでしこ先輩はキスを繰り返してくる。私は顔を枕に押し付けた。
「………んぶ……」
「まる」
なでしこ先輩が私の頬を撫でた。
「こっち向け」
「…はい」
私はうつ伏せから仰向けに寝転がる。体を天井に向けると、なでしこ先輩が上から下りてきた。
「まる」
「あ」
私の顔に、なでしこ先輩の唇がくっつく。
「ん」
私の耳に、なでしこ先輩の唇がくっつく。
「んふふ…」
なでしこ先輩が首に唇を押し付けてきた。
「ふふっ。くすぐったい…」
ちゅ。
「んんっ」
ちゅ、ちゅ。
「んふふっ」
ちゅ。ちゅ。
「…………」
なでしこ先輩の言う通りだ。ぬくもりが体を包んで、暖かくて、温かくて、ぼうっとしてしまう。
(なんか、これいい…)
あったかい。
(きもちいい…)
あったかい。
(んっ)
ちゅ。
「な、でしこ、せんぱい…」
「何?」
ちゅ。
「くすぐったいです…」
「ん。そうか」
ちゅ。
「そこも、くすぐったいです…」
「そうか」
ちゅ。
「遊ぶんですよね…?」
「ああ。遊んでる」
ちゅ。
「これ、遊んでるんですか?」
「ああ」
なでしこ先輩は微笑んでいる。
「まるもして」
「え?」
なでしこ先輩が頬を差し出す。
「ここに口をつけろ」
「ほっぺたですか?」
「ん」
「じゃあ、あの、失礼します」
私は少しだけ頭を上げる。
「んっ」
ちゅ。
「ここも」
「ここもですか」
ちゅ。
「ふふっ。ここも」
「ここもですね!」
ちゅ。
「なでしこ先輩、ここもいいですか?」
「ん?」
ちゅ。
「ちゅ、ちゅ、ちゅ」
「ちょ、まる、ふふっ、くすぐったい」
「ちゅ!」
「ふふっ。まる」
「ちゅ! むちゅ! ちゅーーー!」
「うふふ! こらこら」
なでしこ先輩が笑いながら私の頭や背中を撫でる。
………。
(あのなでしこ先輩が笑ってる…!?)
私は口を押し付けながら驚愕する。
(ああ、そうか。きっとなでしこ先輩も疲れてるんだ…)
本当は遊びたい盛りなんだ。まだ16歳ですもんね。ああ、そう思ったら可哀想ななでしこ先輩。しょうがない。もう少し付き合ってあげることにしよう。感謝してくださいね。
ちゅ、とキスをすれば、なでしこ先輩がおかしそうに笑う。
「ふふっ」
(ここはどうかな? 怒られるかな?)
ちゅ。
「あ、んふふ。待て、こら。まる」
「ちゅ! ちゅ!」
「ふふっ、ふふふっ、まる」
なでしこ先輩がくすくす笑ってる。
(すげえ! なんかすごくご機嫌いい!)
心なしか声もすっごく優しい。
(何これ! なでしこ先輩、今まで見たことないくらい、ご機嫌だ!)
今ならわがまま言っても怒られない気がする!
(よーし! もっと機嫌よくなってもらって、指導なんて止めてもらおう!)
むちゅ!
「あっ」
なでしこ先輩が色気めいた声を出す。
(わっ、セクシー!)
直後、なでしこ先輩の目が据わった気がした。
(……ん?)
「ふふっ。まる。一回止まれ」
「ぷえっ」
笑顔のなでしこ先輩に頬を押さえられる。そのまま顔を覗かれた。
「そんなに私にキスしたいのか? このエロ猫め」
「え? あ、いや、あの、別にそういうわけでは…」
「しょうがない奴だ。全く。キスしてやるから目を閉じなさい」
なでしこ先輩の綺麗な顔が近づいてくる。
(ふわっ!)
反射的に目を閉じる。
(え、何? これ、いつキスしてもらう流れになったの?)
目を閉じてから考えるが、答えが出る間もなく、口が塞がれた。
―――むちゅ。
「ん」
なでしこ先輩と、唇同士がくっつく。
「…………ん」
なでしこ先輩が離れない。
「……」
なでしこ先輩が離れない。
「………」
なでしこ先輩が離れない。
「………………」
なでしこ先輩が離れない。
「~~~~~~~!!」
私は慌ててなでしこ先輩を上に押して、唇を剥がした。
「ぶはっ!!」
「まる」
なでしこ先輩が角度を変えた。
「あっ」
むちゅ。
「…………………」
なでしこ先輩が離れない。
「……………………………」
なでしこ先輩が離れない。
「っ」
再び私から唇を離す。
「ふーはーふーはー!」
「まる」
「ちょ、あの!」
「キスしたいんだろ?」
「いや、あの!」
「ほら、大人しくしろ」
「いや、あの、先輩、ちが…」
ちゅ。
「せんぱ」
「まる、舌出して」
「え、舌ですか?」
ぺろっと出すと、なでしこ先輩が再び唇を押し付けてくる。
「んちゅ」
「んっ!」
なでしこ先輩が舌を絡めてきた。
「ん、ふぅ、んんっ…!」
お互いの舌が絡み合う。
「ん、んん…」
私の眉が下がると、なでしこ先輩がくすりと笑った気がした。舌が絡む。一瞬、なでしこ先輩が離れる。
「ふはっ」
再びくっつく。
「んむ」
舌が巻き付かれる。
「んんっ」
背中がぞくっと震えた。
「ん、んん…」
なでしこ先輩の腕を掴むと、なでしこ先輩が私の手を掴んだ。
(ふへ)
私の顔の横に押さえられる。
「…んぅ…」
もう一つの手でなでしこ先輩の肩を押してみる。なでしこ先輩が目を開けて、唇を離す。
「けほっ、げほっ」
「まる、遊ぼう」
耳元で囁かれ、どうしてかお尻にきゅっと力が入った。
「んっ」
「せっかくだから、使わないともったいない」
なでしこ先輩がピンクのおもちゃを掴み、私のパジャマの中に手を入れた。
「わっ」
「ここはどうだ?」
スイッチを押す。お腹が震えだす。
「あばばばば。先輩、私のお腹のお肉が震えてます!」
「ふふっ。ダイエットにも効果的らしいな」
上になぞられる。
「じゃあ、ここは?」
「え」
胸に当てられる。
「わっ」
「ここは、どう?」
胸の先端に、おもちゃがついた。
「へ」
震える。
「はへっ」
私は目を見開いた。
「あっ」
びくっと、体が強張る。
「それ、やです」
「ん?」
おもちゃが離れる。
「何が、や、なんだ?」
触れてるか触れてないかの位置で、突かれる。
「ひゃっ」
つん、つん。
「あっ」
「ぷるぷる震えて、可愛いおもちゃだろ?」
なでしこ先輩がくすくす笑う。
「ああ、でも、確かにやりづらいな」
なでしこ先輩が、私のパジャマの袖を上に上げた。
「あっ」
私のお腹が丸見えになり、次には小さな胸がぷるんと飛び出る。
「やっ、は、恥ずかしいです!」
袖を戻そうとすると、手を押さえられた。
「駄目」
「ぴぎゃ」
怯んだ隙に、なでしこ先輩が私のパジャマの袖をぐっと上に上げた。私の口に、布を入れ込む。
「ほげっ!?」
「噛め」
「ん」
首を振る。なでしこ先輩の目が私を見下ろす。
「まる」
「…………」
大人しく噛む。なでしこ先輩が微笑んだ。
「ん。偉いぞ」
「………」
「離すなよ?」
優しい声で言われて、なでしこ先輩の手が動き始める。
(…怖い)
これから何が始まるんだろう。
(怖い…!)
恐怖に血の気が引く。
(どうか、生きてこのパジャマをもう一度着られますように!)
祈っているとおもちゃが震え始める。私のお腹に当てられる。
「ひぅっ」
胸に触れる。
「んっ」
一瞬だけ乳首。
「っ」
すぐ離れて、また乳首に当てられる。
「んっ」
おもちゃがぶるぶる震えている。
「………んっ」
乳首に当てられる。
「ん……」
ぴくりと腰が動いた。
「……んん」
私の体が無意識に上に逃げていくのを、なでしこ先輩が元の位置に引きずり戻す。
「んむっ」
「何逃げてるんだ」
なでしこ先輩が太ももで挟み、私の体を固定する。
「遊んでる最中に、主人から逃げるな」
悪い猫め。
「少し、お仕置きも交えるか?」
「んっ!?」
なでしこ先輩に体勢をうつぶせにされる。
「腰を浮かせろ」
「…はい…」
手と膝を布団につけて、腰を浮かす。
「…人間跳び箱のポーズ…」
「ああ、悪くない」
パジャマから口を離して振り向くと、なでしこ先輩が口角を上げ、後ろから私を抱き締めてきた。
「まる、沢山遊んでやる」
「わ、私、もう大丈夫です…」
抜け出そうとすると、なでしこ先輩の腕が強くなる。
「駄目」
「んっ」
耳になでしこ先輩の吐息。
「まる」
「あ、」
これ駄目。
(ぼうっとしちゃう…)
俯いて、下にある布団を見ていると、なでしこ先輩の手が動き始める。
(あ)
おもちゃが震える音が聞こえる。
(あ…)
乳首におもちゃが押し当てられる。
「あ、まっ」
ぶるぶる震える。
「あっ、ちょ、あ、せんぱ、あ、これ」
ぶるぶるぶるぶる震える。
「あ、あ、これ、あの、あ、ちょ、これ、あの、だめ」
ぶるぶるぶるぶる震える。
「…あ…」
床につく手が震える。
「ゃ…」
何も抵抗できない。
「あ、あ…いや…あ…」
私の小さな胸がぷるぷる震える。
「あ…そんなに、揺れちゃ…」
おもちゃが震え続ける。
「ん、ん…ん…」
「まる?」
「っ」
なでしこ先輩の低い声に、心臓が高鳴った。
(なにこれ)
少しのことでも、敏感に反応してしまう。
(これ、やだ)
身じろいでも、おもちゃが同じ方向に寄せられる。
「や、…ゃ、やぁ…」
「まる、興奮したの?」
なでしこ先輩の指が私の乳首を優しく撫で、かすれた小声で囁いてくる。
「硬くなってる」
「っ」
首をすくませる。
「こっち向いて」
「あっ」
振り返させられ、口を塞がれる。
「んむっ」
なでしこ先輩がおもちゃで私の乳首を突いてくる。離れたり、押し当てたり、離れたり、押し当てたり、そればかり、つんつん、突いてくる。
(あ、あ、あ…)
変なもどかしさに、腰がぴくんと揺れる。
「んんっ…!」
逃げようと体をよじらせるが、動かない。私から無理矢理口を離して、顔を逸らす。
「も、もう、いいです…!」
「こら」
耳元でなでしこ先輩に叱られる。
「何を暴れてるんだ?」
「あ、だ、だって、これ、やです…」
「遊んでやってるのに、嫌なのか?」
おもちゃが可哀想じゃないか。
「ち、ち、ちく、び、やめて、ください…!」
「ん? どうして?」
「や、やだから、です…!」
「わかった。お前がそこまで言うならやめよう」
なでしこ先輩がおもちゃを私の胸から離した。
(あれ)
案外、あっけなく離してくれた。
(…なんだったんだろう…)
はふはふ呼吸を整えていると、なでしこ先輩に体を抱き上げられ、布団に座らされる。
「まる、楽に座れ」
「…はい…」
背中にいるなでしこ先輩に脱力して、足を少し開いて座る。なでしこ先輩の抱きしめてくる腕が気持ちいい。
(…暖かい)
クーラー利きすぎてるのかな? ちょっと身震い。
(熱い)
胸がドキドキする。
(…ん)
なんか、パンツが濡れてる。
(あれ? またおりもの?)
なでしこ先輩がおもちゃを私の内側の太ももに押し当てた。私の太ももがぶるぶる震える。
(あ、ダイエット効果…)
肌を滑る。
(…はあ)
なぞられる。
(ぼうっとする…)
下に下りてくる。
(…ん?)
震えている。
「あ」
ぶぅううううううん。
「あっ」
パジャマ越しから、私の股へ押し付けられた。
「っっっっっ!」
その瞬間、呼吸が出来なくなる。目を見開いて、意識がはっきりとする。おもちゃが震える。
「あっ!」
私のお股で、おもちゃが震えている。
「あああああああああ!」
おもちゃがぶるぶる震える。
「やっ! あっ! だめ! だめ!」
逃げ出そうとすると、なでしこ先輩の腕が私を放さない。
「あ! いや! だめ! せんぱい! そこは、だめです!」
ぶぅううううううん。
「あ、ふるえてる、だめ、そこ、あんっ! だめ!」
ぶぅううううううん。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
腰を引くが、なでしこ先輩がいて逃げられない。
「あ、だめ、だめ、だめ…!」
布団のシーツをぎゅっと握る。
「あっ、ふるえて、も、あ、や、これ、やだ、やだぁ!」
パンツの中がきゅんきゅんする。
「あ、あ、あ、だめ、だめ、だめ、あ、だめ、だめ…」
きゅんきゅんきゅんきゅん。
「なんだ? これは」
なでしこ先輩の手が、私のパジャマの中に入ってきた。
「まる」
「あぅっ…」
なでしこ先輩の細い指が、下着越しに私のお股を撫でた。
「ひゃっ…!」
「ずぶ濡れじゃないか」
さっき、あれほど洗ったのに。
「どうしてこんなに濡れてるんだ?」
「わ、わかんない、です!」
首を振る。
「せ、生理、かも、しれません!」
「ああ、そうかもな」
「私、あの、トイレ、いってきます…!」
「必要ない。このまま大人しくしていろ」
「あっ」
指がお股をなぞる。
「あ、あああ、あぁぁああぁああ…!」
おもちゃが震える。
「あっ、あっ、あっ、あっ…!」
「まる、気持ちいいの?」
ぶぅううううううん。
「はっ、あ、ああ、あああ…」
「ああ、気持ちいいな。じゃあ、もっと感じようか」
ぶぅううううううん。
「あ、へん、です、なんか、んっ、ちかちか、してきて…」
「そうか」
ぶぅううううううん。
「も、もう、もう、あ、もう…」
「もうイキそう?」
「なんか、あの、なんか、なんか、あの、なんか…!」
「まる、一回イって」
「あっ」
きゅん。
「あ」
「こら、起きろ」
ぱんぱん、と頬を叩かれる。
「…はえ…」
「まだ寝かせないぞ」
なでしこ先輩に後ろから抱きしめられる。一瞬だけ、私の意識が飛んでいたらしい。
(な、何…?)
股の中がきゅうんとなってる。
「ぅんっ…」
パンツが濡れてる。
「まる、こっち」
「…ふぁい…」
振り返る。体をなでしこ先輩に向き合わせる。その綺麗な顔を見られなくて、目を伏せる。
「まる」
「わっ…」
頬になでしこ先輩の手が優しく当てられる。
「まる」
「はい…」
ぼうっとした目をなでしこ先輩に向ける。なでしこ先輩の目が見つめてくる。
「ほら、キスして」
「…はい…」
催眠術でもかけられたように、頭がぼうっとして、言われるがまま。
(キス、したらいいんだよね…?)
なでしこ先輩に言われたから、唇を寄せる。
(はへ…)
なでしこ先輩が近づく。
(わあ、綺麗なお顔)
むちゅ。
「んっ」
ちゅ。
「ふぁ…」
むちゅ。ちゅ。ぷに。ちゅ。
「ふんん、んんん…」
「…まる、舌は?」
「し…た…」
舌を出して、唇を重ねる。
むちゅ。
「ん…」
私の眉が下がる。
(これ…おかしくなりそう…)
ちゅぷ、ぐちゅ、ちゅ、むちゅ。
「ん、ん、ん…」
とろとろに溶けていきそう。
(なんか、これ…)
気持ちいい。
(なでしこ先輩のキス…)
舌が絡んで、唇が重なって、抱きしめ合って、くっついて、温もりに包まれて、
(気持ちいい…)
ちゅ。むちゅ。ちゅ。ちゅ。ぷちゅ。
「…ん、…んぅ」
「まる」
耳元で囁かれると、肩が揺れる。
「ふぁ、ふぁい…」
「力が抜けてるな」
ふふっと笑われる。
「これ、好き?」
「わ、かんないです…」
ただ、
「ぼおっと、しちゃって…」
「ん」
ちゅ、と耳にキスされる。肩が揺れる。
「あ」
ちゅ、と首にキスされる。肩が揺れる。
「ん、せんぱ…」
「ちゅ」
唇が押し付けられる。
(気持ちいい)
ふわふわする。
(気持ちいい…)
「まる、寒くないか?」
「……はい……」
クーラーが利きすぎてる気がするけど、
「すごく、熱いです…」
「ああ。暖かいな」
なでしこ先輩に抱き締められたら、とろけてしまいそう。
(なでしこ先輩の胸もくっついくる)
弾力があって、柔らかい。
(はあ…どうしよう…。力入らない…)
「まる」
なでしこ先輩の手が、私の股をなでた。途端に腰がびくんっと揺れる。
「あっ!」
「さっきから濡れてるんだったな。ここ」
なでしこ先輩が私の履いてるパジャマを掴んだ。
「脱げ」
「へっ…」
「生理かもしれない。私が見てやるから、脱げ」
「ああ…」
普段なら、嫌ですよ! トイレ行きます! って言うのだけど、今の私の頭は冷静じゃない。ぼうっとして、ひたすらぼうっとして、なでしこ先輩の言うことが、正しいと思ってしまう。
(なでしこ先輩が見てくれるんだ…)
(そうだよね。なでしこ先輩の方が、私より色んなこと知ってるし)
「…わかり、ました」
「足伸ばして」
「…はい」
なでしこ先輩の言う通りに足を伸ばす。なでしこ先輩が私のパジャマを脱がす。
(う…)
パジャマの裾を引っ張って、パンツを隠す。
(なんか、これ、恥ずかしい…)
「まる」
「ひゃ」
なでしこ先輩が私の足を取った。
「足開け」
「ん…」
足を左右に開く。なでしこ先輩が身をかがませて、私のそこを見つめてくる。
(…う…)
見られてる。
(ふへ…)
おしっこするところを、重点して、見られてる。
(………何、これ)
見られてるの、すごく恥ずかしい。
だから、早く終わらせたくて、声をかける。
「…あの、生理、ですか?」
「いいや?」
なでしこ先輩の声は、どこか弾んでいる。
「赤くなってないから生理じゃない」
なでしこ先輩がじっと見てくる。
「ただ、パンツがずぶ濡れだ」
なでしこ先輩に見られてる。
「こんなに濡れてるなんて」
なでしこ先輩に見られてる。
「ああ、どうした? また濡れてきたぞ」
「あ、あの、せんぱい…」
私は顔を逸らす。
「も、もう、大丈夫です…」
「おもらしでもしたか?」
「…してないです…」
なでしこ先輩の視線を感じる。
「なでしこ先輩、もう、大丈夫ですから」
「まる、またパンツが湿ってきたぞ」
なでしこ先輩がずっと見てくる。
「びちょびちょじゃないか」
なでしこ先輩に見られてる。
「なんでこんなことになってるんだ?」
「わ、わからないです…」
だからもう大丈夫です。
「も、もう、見ないでください…」
なでしこ先輩の視線が、痛い。私は目を瞑る。
「わ、私…」
手で自分の股を押さえた。
「き、着替えてきます…!」
「まる、お前、漏らしたんだろ」
「もっ」
私は首を振る。
「おもらしなんて、してないです…!」
「じゃあ、なんでこんなに濡れてるんだ?」
なでしこ先輩が人差し指を伸ばした。つん、と突いてくる。
「あっ!」
「なんだ? また濡れてきた」
なでしこ先輩の指が上になぞられる。下になぞられる。
「あ、あっ」
上下になぞられる。
「あ、せん、あ、あっ、あんっ」
指が少し押し込まれて、上下になぞってくる。
「あっ、あっ、それ、やだ、だめ、その、さわり、かた、だめ、です…」
「どういうことだ。私の指まで濡れたじゃないか」
いけない猫だ。
「仕方ない。主人の私が拭いてやる」
「はへ…?」
なでしこ先輩の顔が近づいた。
「じっとしてろ」
「えっ」
なでしこ先輩の指が、私のパンツをめくった。
「ひゃああ! な、何を…!?」
パンツに隠されているところが丸出しになる。なでしこ先輩にひたすら見られる。
「や、やめてください! そんなところ見ても、楽しくな…」
「毛が無くなってすっきりしたな」
「………」
ぷえ?
「あれ!?」
あれーーーー!? 本当だ! あそこの毛が、なくなってる!
目を丸くしていると、なでしこ先輩がふっと笑った。
「さっき、風呂場でお前が寝ている間に私が処理してやった。感謝しろ」
「わー! 本当だ! つるピカじゃないですか! すごい! どうやったんですか!?」
「私の祖父が開発している脱毛クリームがあってだな…」
いや、その話題は後だ。
「今はこっちが優先だ」
パンツがめくられ、布がおしりに食いこむ。
「ゃんっ! ちょ、せんぱっ」
なでしこ先輩が、私の股に、舌をつけた。
「っ」
ぺちゃ。
「あ、」
れろ。
「へ」
れろり。
「どこ、なめて…」
れろれろ。
「あ、やめ、て、くださ…」
れろれろれろれろ。
「…あ、ん、…ん…」
れろれろれろれろ。
「あ、そこ、だめ、あ、や、だめ…」
れろれろれろれろ。
「あ、あ、あ、あ、あ…」
れろれろれろれろ。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
れろれろれろれろ。
「あっあっあっあっあっあっあっあっ」
れろれろれろれろ。
「あっあっあっあっあっあっあっあっ!」
ぐちゅ。れろり、ぷちゅ、ぐちゅり。
「あっ! あっ! あっ! いやっ! あっ! あっ! だめっ! やめてっ! くださっ!」
どろ。
「また出てきた」
れろ。
「あうっ」
なでしこ先輩が息を吸った。
(え…?)
じゅるうううううう。
「っ」
思い切り吸われて、私の腰が震える。
「んんんんんんんんぅううっ…!」
じゅ、じゅぷ、ちゅ、ぷちゅ、れろり。
「あっ」
舌があそこで動いてる。
「あっ! やっ! なでしこ先輩、どこ、なめてるんですか!」
ぺろぺろ舐められてる。
「そ、そんな、ところ、舐めても、おいしく、ないじゃ、ないですかぁ…」
ぺろぺろぺろぺろ。
「あっ、だめ、あっ、あっ、いや、あっ、ああっ、あっ…」
腰を掴まれて固定される。なでしこ先輩の舌から逃げられない。
「はっ、はっ、はっ、はっ…」
私の手が自然となでしこ先輩の頭を掴む。
「やめ…やめてく、ださぃい…」
じゅるるるるるるるるるる。
「や、そんな、ふうに、すっちゃ、いや、ですって、ばぁ…」
ちゅる。れろ、れろり。ぺろ、つん。
「あっ」
つんつんつんつん。
「あ、あ、あ、あ、あ」
ぬるん。
「あっっっっ!」
「そこか」
なでしこ先輩が一度離れて、再び口をくっつけた。舌が入ってくる。
ぐちゅうぅ。
「あっ!」
きゅんとなるところを舌で舐められて、もっときゅんきゅんしてくる。
「あ、いや、です! そこ、だめ! だめです! あ、だめ!!」
れろれろれろれろ。
「せ、せんぱい、そこ、おいしく、ないですよ、お、おしっこ、だすところ、だから、きたない、です…」
れろれろれろれろ。
「あ、でちゃう…いっぱい、でちゃう…」
どろり。
「あ、なんか、でちゃ、った…」
れろり。
「あっ」
じゅるるるるるるるるる。
「ふうううううううううんっ!」
ぺろ。
「あ」
ぺろ。
「あ、も、だめ」
ぺろ。
「も、こわれ、ちゃう…」
れろり。
「はっ」
ぺろぺろ。
「んっ」
ぺろん。ぺろん。ぺろん。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ…」
れろれろれろれろれろれろ。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
れろれろれろれろれろれろ。
「あ、ああ、ああああ、ああ、あああ…」
ぺろり。
「あっ」
――――――――――――っ。
くたりと、脱力して布団に倒れる。
「はあ、はあ」
肩で息を繰り返す。
「はあ、はあ、はあ…」
瞼が下りてくる。
「はあ、ああ、はあ…はあ…」
「まだだ」
なでしこ先輩が起き上がる。
「まだ、足りない」
美しい先輩が、私に覆いかぶさる。
「味わえ。お前の味だ」
「んっ」
唇が塞がれる。舌が絡まる。
「んんっ」
美味しくない。
「っ、ん…」
唇が離れる。
「も、やです…」
「許さない」
引っ張られる。
「やっ…」
「まる」
布団の中に引きずられる。
「あ」
「まる」
布団の中に閉じ込められる。
「あっ」
ぶるぶるぶるぶる。
「はへっ!?」
ぶうううううううううううん。
「あっ! やっ! わたし! まだ、お股が、あの、きゅんって…なってるからぁ…!」
ぶうううううううううううん。
「あっ、どうしよ、はげし、ぃっ…! こんなの、わたし、おかしくなっちゃいますっ…!」
ぶうううううううううううん。
「ああっ! だめです! はやい! はやいよぉ!」
私は布団の中から逃げ出す。
「や、やですぅ!」
「駄目」
なでしこ先輩に引きずり戻される。
「あぅ!」
「まる」
ぶうううううううううううん。
「あんっ! あんっ! あんっ! あんっ!」
「可愛い、まる。まる…」
「ああっ、なでしこ、せんぱい、わたしっ」
「まる、もっと、もっと聞かせて…」
ぶうううううううううううん。
「あっ、や、あ、あ、あ、あ、あ、っあ!」
「またイッた? ふふっ。まる…」
「はあ…はあ…はあ…」
「まる、ここはまだ濡れてるみたいだ。どこまでイけるか、やってみようか」
「あ、だめ…です…も…わたし…」
ぶうううううううううううん。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
――――――――――――――――――――――。
――――――――――――。
―――――。
「……………」
ちゅんちゅん鳴く小鳥たちの声で、私は目を覚ます。
(……あれ? 昨日、寝る前に何して寝たっけ…?)
ずきっ。
「……う、…ん……?」
なんか、体中がすごく痛い…。
(あれ…? なにこれ…? 筋肉痛…? ほわい…?)
…………。
(トイレ…)
おしっこしたい…。
(トイレ行こう…)
むくりと上体を起こすと、手首を掴まれた。
(ぷえっ)
「…どこに行く?」
振り向くと、ぼうっとしたなでしこ先輩が、私の手首を掴みながら私を見上げていた。
(あ、なんか、可愛い…)
珍しい。なでしこ先輩に寝ぐせがついてる。
私はにこりと微笑む。
「おはようございます」
「……ん」
「ちょっとトイレに行こうと」
「………ん」
なでしこ先輩がむくりと起きた。
「……行く」
「あ、先輩も行きます?」
私は先を譲る。
「お先にどうぞ。私、我慢できるので」
「ん」
手を握られる。
「ん?」
「ん」
一緒に立つ。
「ん?」
なでしこ先輩と私がてくてく歩いていく。
「ん?」
なでしこ先輩がトイレの電気をつけた。
「ん?」
私と一緒に中に入った。
「先輩?」
「ん」
なでしこ先輩が私の履いてたパジャマを下にすぽーん! と下ろした。
「ほぎゃああああ!! 朝から何するんですか!」
「ん」
ぽいと投げられる。
「あああ! 私のパジャマ(下)が!」
「ん」
なでしこ先輩が私の履いてたパンツを下にすぽーん! と下ろした。
「ぎゃああああ!! 私のクマちゃんぱんてぃーが!」
「ん」
ぽいと投げられる。私の下半身は丸出し。私は慌ててしゃがみこんで下半身を隠す。
「わあああああああ! 何してくれるんですか! なでしこ先輩ぃいいいい!」
「ん」
なでしこ先輩に後ろ向きで便器に座らされる。
「え?」
「ん」
なでしこ先輩が私の肩を押さえる。
「え?」
見上げる。ぼんやりしているなでしこ先輩と目が合う。
「…え?」
「ん」
なでしこ先輩が頷く。
「え?」
「早く」
「え、あの」
「早くしろ」
「え、まさか」
私は顔を青ざめる。
「連れションならぬ、公開ションですか? HAHAHA! 冗談きついですって。先輩。いくら女子同士でも、公開ションなんてしたら、私は一生後悔ションしますよ」
「早くちーしろ」
「ちーって! ちーーーって!! 私は!! もう!! 15歳の!! 乙女です!!」
「うるさい。早くしろ」
それとも、
「させられたいか?」
「っ!?」
私の血の気がさっと下がる。
「え?」
私はなでしこ先輩に引き攣る顔を向ける。
「まじですか?」
「ん」
なでしこ先輩は頷くだけ。
「ちーしろ」
「…………」
「早く」
「…………で、」
「ん」
「出て行ってください…」
「早く」
「なんでですか!」
「ペットのトイレの管理も、主人の仕事だ」
「私! 人間です!」
おっと、…むずむずしてきた。
「はやくっ、あの、出て行ってください!」
「大丈夫。何が出てきても私は文句を言わない。それが主人というものだ」
「んなこたどうだっていいんですよ! は、はやく! 出て行ってくださ…!」
むず。
(あ)
やだ、出る。
「せ、せんぱい、はやく…!」
「ほら、出せ」
なでしこ先輩が覗き込んでくる。
「ちーして」
「…ぅ…」
むずむずする。
「み、みないで、ください…」
「早くして」
「や、やだ…」
こぽりと、出てくる。
(あ、やだ)
我慢、出来ない。
(あ)
ちょろ。
「ん」
出る。
「んんんん…!」
なでしこ先輩の見られてる前で、おしっこが出てしまう。
(あ、やだ、あ、ああ…)
ちょろちょろちょろ。
(うううううう……)
しかもこういう時に限って長い。
(むぐううううううう…!)
全部出し切る。
「……………」
「……終わった?」
こくりと頷く。
「ん。ちゃんとちーして偉いぞ。まる」
なでしこ先輩が微笑み、頭を撫でられる。
「立って」
「………」
腰を浮かすと、なでしこ先輩が手を伸ばしてきた。
「っ」
なでしこ先輩が包んだトイレットペーパーで、私のお股を拭いた。
「…………」
「ん。毛がなくなって拭きやすくなったな。まる」
ぽい、と便器の中にトイレットペーパーを投げる。
「ふう」
なでしこ先輩が息を吐いてハンドルを回す。水が流れる。私の汚物が流されていく。
「まる、手を洗え」
「…………」
一緒に手を洗う。泡をつけてごしごし洗う。
「手拭いて」
「…………」
タオルで手を拭く。
「戻るぞ」
「…………」
下着とパジャマを履いてから手を繋いで、二人でてくてく寝室に戻る。
「はあ」
二人で布団に潜る。
「ふう」
なでしこ先輩が私を抱きしめて、息を吐いた。
「土曜の朝だ。ゆっくりしよう」
「……………」
「すー…すー…」
なでしこ先輩が可愛らしい寝息を立てた。私は恥ずかしさで体を震わせた。
(………なんか)
なでしこ先輩に、何かを奪われた気分…。
「私…もう、お嫁に行けない…!」
なでしこ先輩の胸に顔を埋める。
「責任取ってくださいぃいい…!」
ん? あれ? なでしこ先輩のおっぱい、思ったより、やわらかくなーい?
(ふは…。しゅげえ…。ふわふわしてる…。ぷわぷわしてる…)
ふわふわ。
「ふはっ」
思わず、でれんと笑顔になる。
「あは。これ、わお。きもちいい…」
私は寝息を立てる。
「すやぁ( ˘ω˘ )」
―――なでしこがそっと目を開けた。
腕の中では、約一週間触れることの出来なかった猫が、すやすや眠っている。
「ふふっ」
思わず、笑い声が出る。
「責任、ね?」
つい、頭を撫でてしまう。
「これでトイレに行くたびに思い出すな」
私の存在を。
「これで夜寝る時に思い出すな」
私の存在を。
「お前の脳を支配するのは私だ」
なでしこが猫を見つめる。
「責任?」
先に心を奪ったのはお前じゃないか。
「責任はお前が取れ」
私の想いを受け取れ。
「私はどこにも行かない」
まるだけ。
「まるがいたらそれでいい」
約束したでしょう?
「ずっと傍に居るって」
だったら約束を守って。
「好き」
「好き」
「好き」
「まる」
「好き」
ずっと、
昔から、
保育園で出会って、
仲良くなって、
遊んで、
守ってもらって、
助けてもらって、
その笑顔を見てから、
「大好き」
「好き」
「まる」
まるがいてくれたらいい。
「離さないでね」
お姫様の心を盗んだ王子様。
お姫様の心を奪った泥棒猫。
私だけの猫。
「王子様」
ちゅ、と額に優しいキスをする。
唇を離して見ると、まるがふにゃりと口角を上げた。
それを見て、なでしこの口角をふにゃりと上がってしまう。
(可愛い)
頭を撫でる。
(私だけのもの)
抱きしめる。
(どこにも行かせるものか)
猫は気まぐれだから。
(ちゃんと、印をつけておかないと)
私の匂いをつけておかないと。
薔薇じゃなくて、私の匂いを。
だから、この腕の中に、永遠に閉じ込めてしまおう。
「まる、大好き」
「…うーん……なんか全体的に、重たいですー……」
まるが寝言を呟いた。
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