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くま好き令嬢の出逢い 2
しおりを挟むどうしよう――?
このままだと窒息してしまうわ!
私はカイと沢山の本に埋もれているの――!
どうしてこんな事になったのかというと、さかのぼること数時間――
「よしっ! カイとお話する方法を見つけよう!」
大好きなカイと今日もお揃いのお洋服を着ていたの。私のふわふわな白色のワンピースに合わせて、カイは白色のベストを着ていたし、私の髪留めはカイにそっくりなくまさんのヘアゴムなの。
いつもみたいにカイとおままごとや絵本の読み聞かせをしていたのだけど、カイと本当にお話がしたくなったの! だって、今、カイと一緒に読んだ絵本は、人形が本物の人間になったのよ! お父様の読んでいる難しそうな魔道書ならきっと載っているはずよね?
私のウィンザー家は、代々王宮で魔道書司として仕えているの。魔道書は、とっても古い魔法の本で、聖女を他の世界から呼んだり、結界を作ったり、あっという間に遠くの場所へ移動する方法が載っているとお兄様から聞いたわ。
魔道書ならカイとお話をする方法があるはずよねっ!
我が家には、壁面に埋め込まれた美しい本棚のある広い読書部屋があるの。
好きな本をゆっくり読めるように、高い天井のペンダントライトから柔らかい光をきらきらあふれさせた読書スペースにふかふかのソファ――私専用のものは、ピンク色の小さなふわふわソファなの。
侍女のサラには、「今からカイと絵本を読むの」と言ってあるから呼び鈴を鳴らさなければ、しばらくだれも読書部屋にはこないわ。ウィンザー家の読書時間は、ひとりでゆっくりすると決まっているの。
カイと一緒にお父様の魔道書を本棚から次々に引っ張り出して、机の上に積み上げたわ。
どんどん積み上がっていく魔道書。
古そうな茶色や落ち着いた紺色の表紙。
私のにぎりこぶしくらい厚みのあるもの。
私に読めるかしら、と少し不安になったけど、それでもカイとお話するために、どんどん積み上げたの。
そろそろ読んでみようと思い、手に持つ一冊を最後と決めると、高く積みあがった本の山に、ぽんっと置いたの――
ぐらぐら、ぐらぐら、ぐらり……
「あっ――!」
本の山がカイと私に降りそそぐように、どさどさと落ちてきてしまい魔道書の本に埋もれてしまったというわけなの――。
これから、どうしよう?
サラはまだこないだろうし、手や頭を動かそうと思っても、ほんの少しも動かないからカイを抱きしめたまま困ってしまったの。
はあ、と大きく息を吐いても魔道書のインクとほこりの匂いがするばかりなの――。
「――アリーシア様!」
遠くから慌てたサラの声が聞こえたの。
ああ、きっと助けてもらえると安心したら急に意識が遠のいたの。
「――アリー!」
目を覚ました時は、お父様とお母様、アレクお兄様、涙目のサラに心配されて、かこまれていたの。
お母様は私の手をにぎり、優しく口をひらいたの。
「どうして本の下敷きになったの?」
みんなを困らせてしまった私は、嘘をつかないで素直にすべてを話したの。
「カイとお話がしたくなったの。きっと、お父様の魔道書ならカイと話す方法がのっていると思ったから、どんどん魔道書をつみあげたの。そうしたら、いきなり魔道書が落ちてきて、動けなくなってしまったの。――ごめんなさい」
みんなは私の話を最後まで聞いてくれたの。
「貴重な魔道書が我が家にあるわけないでしょう?」
「カイとお話をする方法か――」
「アリーがいなくなったら僕は生きていけないよ!」
「アリーシア様……」
お母様に呆れられ、お父様に考え込まれ、お兄様に泣きつかれ、サラに心配をかけた結果――
「アリーにはお友達が必要ね!」
「アリー、カイが話せるようになったぞ!」
「アリー、学校から戻ったら遊ぼうね!」
「アリーシア様、読書ですか? 私もお供いたします!」
お母様のお茶会に連れられ、同じ年ごろのお友達を作ることに決まったの。
お父様は魔法陣と魔石を組み合わせてカイに「おはよう」と「おやすみ」を話しかけると、なぜかお父様の声で「アリーおはよう」と「アリーお休み」と応えるようにしてくださったの。
お兄様は以前よりも私と遊ぶようになったの。
サラは読書のお部屋にも離れずについてくるようになったの。
そうやって過ごしている内に、私はお茶会で同じ年のエリーナとリリアンという女の子二人と、とっても仲良くなったのよ!
エリーナは凛としているのに猫みたいな気まぐれさで、リリアンはいつも穏やかに優しく笑っているの。
二人とは、初めて会った時から初めてじゃないみたいに話がとても弾んだの。
エリーナとリリアンもくまのぬいぐるみ――金色の柔らかな毛と青い瞳のくまさん――を持っていて、カイと二人のくまさんも私たちみたいにすぐに仲良しになったの。
アリーシアは、エリーナとリリアンという生涯の親友に出逢いました——。
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