時間泥棒【完結】

虹乃ノラン

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第三章

魚海町シーサイド商店街(6)

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 追いかけるか、二人を待つか悩んで立ち尽くしていると、やがてジョージとマルコがバーガーとドリンクを持ってやって来た。

「あれ? おまえ、はぐれたの?」
「僕がはぐれたんじゃなくて、君たちがはぐれたんだよ。ねえ、それより紅葉に見つかったら大変だよ!? 合流する前に早く食べちゃいなよ?」
「大丈夫、ドリンクも買ったから」

 二人は余裕の表情で笑っている。

「なにが大丈夫なのよ?」

 聞き覚えのあるその声に血の気が引いた。
 紅葉が目の前で睨みつけている。横にはミチルもいた。

「ねえ、なにが大丈夫なの! 人に猫を追いかけさせといて自分たちはハンバーガー?」

 詰め寄られてジョージは残りのハンバーガーを口に押し込むとドリンクで押し流した。

「いい身分よね⁉ あたしだっておなか空いてるのに、自分たちだけで勝手に好きな物食べてるんだから! ミチルは、真っ先に探しに来てくれたっていうのに、あんたたちなにやってんのよ! 後であたしとミチルにもおごりなさいよ」

 御意……。

 後ろをすごすごとついていくと、商店街の真ん中で紅葉が立ち止まった。

「ここまでは確かに追ってたのよ。でもこの辺りで突然あの白猫が消えちゃって……」
「でも、これだけ賑わってるんだし、誰か見てなかったのかな?」
「それが不思議なのよ。追いかけていて気がついたんだけど、誰もあの猫を気にする様子もないのよ! 歩いてる人たちの足元をすり抜けて行ってるのによ?」

 紅葉はしかめっ面だ。

 僕は考えた。猫がアーケードを走っていくのはそんなにめずらしいことじゃない。

 でも後ろから『コスモ小の流れ星』の異名を持つ紅葉が追いかけてるんだ。
 それにいくら鈍感な人でも、足元をなにかが通ったら大抵は気づくはず。
 誰も猫の存在に気づかないなんて、そんなことってあるんだろうか? 

 そのとき、写真と辺りの景色を見比べていたミチルが声を上げた。

「ねえ、見て! あそこ!」

 ミチルが指さした先は、薬局と本屋の建物の狭い隙間だった。
 そこから白猫が顔を出し、こっちをジッと見つめている。

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