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第一章
動かない猫(4)
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「おーい! そこの三バカ!」教室の隅から紅葉が声をかけてくる。「ミチルも誘って一時間後にライオン公園に集合してよ! あたしも、部活に少し顔出してから行くから!」
「冗談じゃないぞ! 俺たちだって暇じゃないんだ!」
一方的な要求にジョージが不満そうに返すと、紅葉は黙って睨みつけた。
その無言の圧力にジョージはこんな風だ。
「オ、オゥわかったよ! 一時間後にライオン公園な!」
誰もジョージの掌の返しようを責めたりなんてしない。だって紅葉は怖いんだもの。
「じゃあ頼んだわよ」
紅葉が言い残して教室を後にすると、ジョージが肩をすぼめた。
「千斗、すまねえ……」
いや、むしろ一度でも紅葉に言い返せるなんて、勇気のある方だよ……。
「それにしても、紅葉ちゃんは、なんでボクたちをライオン公園に集めるのかな?」
「大丈夫、マルコが心配するようなことじゃなくて、きっと来週の実習のことだよ」
僕がそういうと、マルコは笑顔を取り戻した。
「よかったー。ボク、ほっとしたよ」
「しかし、ミチルはどこにいるんだ? あいつはどこでなにしてるのか、さっぱりだぜ」
教室内に、すでにミチルの姿はない。でも机には、まだ手提げカバンが残っている。
「ひょっとしたら図書室かも?」
僕がそう言うと、マルコが首を振った。
「違うよ。ミチルちゃんはたぶん花園にいるよ。ほら? 校舎の裏に園芸部の花壇があるでしょ? 放課後は、いつもそこで絵を描いてるよ」
花壇は裏門の手前にある。地域住民にも公開されていて、出入りは自由。見晴らしがいいので〝花園〟と呼ばれ、人気のあるスポットだった。僕とジョージは顔を見合わせた。
「マルコ、君、ミチルと仲良いの?」
「うん。だってボク、六年間ずっと、ミチルちゃんと同じクラスだからね」
「ええ⁉ そうなのか⁉」
「そうだよ、でもそれ、そんなに驚くこと?」
「いや、まあ? それほどクレイジーでもないけどよ?」
「花園かあ。とりあえず行ってみよう」
全体が一望できる丘の上でミチルは絵を描いていた。座って木に寄りかかり、画板と風景を真剣な目つきで交互に見つめる。よほど集中しているのか、まったく気づかない。
「ミチルちゃんにはすごい感性があるんだ! きっと有名な芸術家になると思うな!」
声をかけようとすると、マルコが唇に指を当てて、僕たちを止めた。
「ミチルちゃんが気づくまで待とうよ。邪魔しちゃ悪いしね」
「それもそうだな」と、ジョージも賛成する。僕たちはその場で待つことにした。
「冗談じゃないぞ! 俺たちだって暇じゃないんだ!」
一方的な要求にジョージが不満そうに返すと、紅葉は黙って睨みつけた。
その無言の圧力にジョージはこんな風だ。
「オ、オゥわかったよ! 一時間後にライオン公園な!」
誰もジョージの掌の返しようを責めたりなんてしない。だって紅葉は怖いんだもの。
「じゃあ頼んだわよ」
紅葉が言い残して教室を後にすると、ジョージが肩をすぼめた。
「千斗、すまねえ……」
いや、むしろ一度でも紅葉に言い返せるなんて、勇気のある方だよ……。
「それにしても、紅葉ちゃんは、なんでボクたちをライオン公園に集めるのかな?」
「大丈夫、マルコが心配するようなことじゃなくて、きっと来週の実習のことだよ」
僕がそういうと、マルコは笑顔を取り戻した。
「よかったー。ボク、ほっとしたよ」
「しかし、ミチルはどこにいるんだ? あいつはどこでなにしてるのか、さっぱりだぜ」
教室内に、すでにミチルの姿はない。でも机には、まだ手提げカバンが残っている。
「ひょっとしたら図書室かも?」
僕がそう言うと、マルコが首を振った。
「違うよ。ミチルちゃんはたぶん花園にいるよ。ほら? 校舎の裏に園芸部の花壇があるでしょ? 放課後は、いつもそこで絵を描いてるよ」
花壇は裏門の手前にある。地域住民にも公開されていて、出入りは自由。見晴らしがいいので〝花園〟と呼ばれ、人気のあるスポットだった。僕とジョージは顔を見合わせた。
「マルコ、君、ミチルと仲良いの?」
「うん。だってボク、六年間ずっと、ミチルちゃんと同じクラスだからね」
「ええ⁉ そうなのか⁉」
「そうだよ、でもそれ、そんなに驚くこと?」
「いや、まあ? それほどクレイジーでもないけどよ?」
「花園かあ。とりあえず行ってみよう」
全体が一望できる丘の上でミチルは絵を描いていた。座って木に寄りかかり、画板と風景を真剣な目つきで交互に見つめる。よほど集中しているのか、まったく気づかない。
「ミチルちゃんにはすごい感性があるんだ! きっと有名な芸術家になると思うな!」
声をかけようとすると、マルコが唇に指を当てて、僕たちを止めた。
「ミチルちゃんが気づくまで待とうよ。邪魔しちゃ悪いしね」
「それもそうだな」と、ジョージも賛成する。僕たちはその場で待つことにした。
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