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第十四章

# to the world...(5)

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 明後日から夏休み! セミのフルコーラスをBGMにしながら夕ご飯を食べていると、お父さんがいった。
「お母さんの妹の、早苗おばさんに新しい赤ちゃんができてね、もうすぐ出産なので入院するんだ」
「さなっ…さなえ、えー…おばさん? って…えーととながっながの、長野……のっ?」
「そうだよ。茜をびっくりさせたいと思って、内緒にしてたんだけど、夏休みの間、五歳になる日夏茉ちゃんを預かることになったんだよ! お父さんずっと、会わせたかったんだ。驚いた?」
「あー…あ、あわ、あーとあわ…せー、たかった人っ、ててひかっり……ひかりちゃんのこ、こ…ことっ?」
「え? 他に誰がいるんだい」
「あたっ…あた、し……」
「じつは茜は日夏茉ちゃんが赤ちゃんのときに一度会っているんだ。お母さんのね、一周忌のときに少しだけなんだけどね。茜、よろしく頼むよ。もちろん島根のおばあちゃんにも頼んだから、しばらく一緒に泊ってくれるけれどね。だからさ、お母さんの部屋に泊ってもらうなら、さすがにちょっと片付けないと狭いかなあと思ったんだ」
「あれっ、あーあれ、びび…びーっくり、したっ…した、よっ!」
 あたしは少しだけ怒った顔つきで、お父さんをにらんだ。
「ごめんな、いや冗談だよ。部屋を片付けるっていったのだって、あとでよく考えたら、不必要に心配かけちゃったよなって反省したんだ。本当にごめんね、茜の不安をわかってやれなくて。防波堤で茜がお父さんのことを怒ってくれて、よかったって思ってるんだ」
 お父さんがカレンダーをまぶしそうに見つめる。八月六日の〝6〟の数字に大きな花丸が描かれている。あたしが安西先生にもらったのと、同じくらい大きな花丸だ。
「お母さんのハローワールド、日夏茉ちゃんに読んでやってくれな」
 そういうと、お父さんはてれくさそうに笑った。
「ひか、ひーひかっちちゃ、んがきたら、このみー好実ちゃんも、呼んであげ、よっ、ようかー?」
「おお、そうだね、茜、それはいいこと!」
 好実ちゃんは無事に回復して、大和のおばさんもヤマタケの勤務に戻った。
 じつはお父さんは、大和が学校から給食を持って帰っていることを、おばさんから聞いて知っていたらしい。あまり大手振っては応援できないけど、大和が妹を思う気持ちを考えたらなにもできなかったといっていた。
 それを聞いてすごくお父さんらしいと思った。もしお母さんが生きてたら、誇らしく思うんじゃないかなって、そんなふうに感じたんだ……。

 ――違うかな?

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