5 / 5
セーブポイント
しおりを挟む「突き飛ばすなんてひどいですぅ」
その言葉に、もしかして踵を返そうとしたシーラとぶつかったのかとシーラを見た。
だけど、シーラは困ったように首を横に振る。
みんなの隙間から、なんとか声の主を見ると、金髪を両サイドでツインテールにした橙色の瞳の少女が廊下に座り込んでいた。
あー。
多分、多分だけど、ヒロインだ・・・
しかも、転生者っぽい。
隙間から覗く私が見えたのか、その橙色の瞳をウルウルとさせて(でも涙は出てないけど)ヒロインは顔を両手で覆った。
「私が男爵家の娘だからって・・・どうしてこんな酷いことをするんですかぁ」
「・・・」
私やシーラだけでなく、護衛の人たちもどうしたものかと戸惑った。
シーラ自身もぶつかっていないというし、護衛の人たちも困り顔ということは、ぶつかっていないのだろう。
ということは、彼女は一人で転んで、こちらに文句を言って来た、ということである。
当たり屋か。
それにヒロインは理解していないみたいだけど、本当にぶつかっていたとしても、相手が王族である時点で、ぶつかった自分が悪いと言われるんだけど。
周囲には、生徒や訪れている父兄の姿もある。
ここは手早く撤収するべきだろう。
ハンカチは残念だけど、エルム兄様が戻ってきたら一応忘れ物がなかったか聞いてみよう。
「お父様、お母様。帰りましょう?シーラ、ハンカチは兄様にお願いするからいいわ」
「ああ、そうだな」
「護衛の方。彼女を起こして差し上げて」
お母様の指示で、護衛の方がヒロインの手を取って立ち上がらせる。
「どこのご令嬢かは知りませんけど、廊下は走るものでなくてよ?ご自分もそれから相手も怪我をしてしまうわ」
「わっ、私は突き飛ば・・・」
「王妃殿下の許可なく口を開くな!大体、我々は君が我々の後ろから駆けてきて、手前で転んだのを見ている。王族に嘘偽りを述べることが罪だと理解しているか?」
「グズッ。酷いですぅ。権力を笠に着て、身分の低い相手を断罪しようとするなんて。ぐすん・・・」
護衛の方は睨みつけてヒロインを叱責するけど、逆にヒロインは泣き真似をして周囲の同情を誘おうとしている。
何がしたいんだろうか。
私を悪役に仕立てたいのかもしれないけど、発言しているのはお母様だ。
それに、攻略対象がいない場所で、誰に同情してもらうつもりなんだろう。
この学園は貴族だけが通う学園、それはつまり成人した後に貴族として生きていくことを学ぶための場所、ということだ。
学園では身分なんて関係ない、なんてところも他国にはあるらしいが、ここは違う。
それを本当にヒロインは理解していないの?
その言葉に、もしかして踵を返そうとしたシーラとぶつかったのかとシーラを見た。
だけど、シーラは困ったように首を横に振る。
みんなの隙間から、なんとか声の主を見ると、金髪を両サイドでツインテールにした橙色の瞳の少女が廊下に座り込んでいた。
あー。
多分、多分だけど、ヒロインだ・・・
しかも、転生者っぽい。
隙間から覗く私が見えたのか、その橙色の瞳をウルウルとさせて(でも涙は出てないけど)ヒロインは顔を両手で覆った。
「私が男爵家の娘だからって・・・どうしてこんな酷いことをするんですかぁ」
「・・・」
私やシーラだけでなく、護衛の人たちもどうしたものかと戸惑った。
シーラ自身もぶつかっていないというし、護衛の人たちも困り顔ということは、ぶつかっていないのだろう。
ということは、彼女は一人で転んで、こちらに文句を言って来た、ということである。
当たり屋か。
それにヒロインは理解していないみたいだけど、本当にぶつかっていたとしても、相手が王族である時点で、ぶつかった自分が悪いと言われるんだけど。
周囲には、生徒や訪れている父兄の姿もある。
ここは手早く撤収するべきだろう。
ハンカチは残念だけど、エルム兄様が戻ってきたら一応忘れ物がなかったか聞いてみよう。
「お父様、お母様。帰りましょう?シーラ、ハンカチは兄様にお願いするからいいわ」
「ああ、そうだな」
「護衛の方。彼女を起こして差し上げて」
お母様の指示で、護衛の方がヒロインの手を取って立ち上がらせる。
「どこのご令嬢かは知りませんけど、廊下は走るものでなくてよ?ご自分もそれから相手も怪我をしてしまうわ」
「わっ、私は突き飛ば・・・」
「王妃殿下の許可なく口を開くな!大体、我々は君が我々の後ろから駆けてきて、手前で転んだのを見ている。王族に嘘偽りを述べることが罪だと理解しているか?」
「グズッ。酷いですぅ。権力を笠に着て、身分の低い相手を断罪しようとするなんて。ぐすん・・・」
護衛の方は睨みつけてヒロインを叱責するけど、逆にヒロインは泣き真似をして周囲の同情を誘おうとしている。
何がしたいんだろうか。
私を悪役に仕立てたいのかもしれないけど、発言しているのはお母様だ。
それに、攻略対象がいない場所で、誰に同情してもらうつもりなんだろう。
この学園は貴族だけが通う学園、それはつまり成人した後に貴族として生きていくことを学ぶための場所、ということだ。
学園では身分なんて関係ない、なんてところも他国にはあるらしいが、ここは違う。
それを本当にヒロインは理解していないの?
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白いです!