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無垢の花と絆のワイン

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 ※こちらは番外編になります(*´∀`*)
 


 雲一つない晴々とした空が広がるT市。
 明るい天気でありながら無造作で無計画に建てられた建築物が乱立しているせいで薄暗い状態の路地裏の一角にある小さな部屋で、一人の少年がワインボトルを片手にボーッと天井を眺めていた。
 艶のある黒髪にどこか可愛らしさすら感じる少年だが、どこか退廃的で年齢に似つかわしくない雰囲気を漂わせている。
 部屋はテーブルとベット、数冊の本が乱雑に置かれたデスクのみと生活感が希薄さが滲んでいる。
 
 それでも彼が住むこの場所では裕福と言っても過言ではない環境である。


 そんな彼がまた口をつけようとボトルを近づけた瞬間、ノックも無しに勢いよく家の扉が開けられた。
 可愛らしい顔立ちに少しくすんだ赤毛の少女である。
 少年より少し年上に見える彼女は、強気そうな目付きと雰囲気が相まってお姉さんっぽく振る舞っているようにも見える。

 少女は少年が持つボトルを見て困ったように眉根を寄せる。

 「また何処かからお酒盗んできたの?」

 「お酒っていうかワインだよ、スパークリングワイン。 ユリも飲んでみる?」

 「いらなーい。 お酒って頭痛くなるもん」
 
 ユリと呼ばれた少女は嫌そうに舌を出して拒否する。
 そんな少女の反応に少し可笑しそうに少年は笑う。
 
 「意外と美味しいんだけどなぁ」

 「はいはい。 それより仕事の依頼だよ」
  
 「あぁ……今度は誰がターゲットなの?」

 
 ユリはスカートのポケットから一枚の写真を取り出す。
 撮されているのは頬がこけ神経質そうな目付きの金髪をオールバックにした男性。
 上等なスーツを着崩したその容姿は一般人よりも暴力団のような気質を感じさせる。

 「男の名前はエミリッヒ・トラヴァスタイン。 見て分かる通り堅気の人間じゃないわ。 バルドルの組織の構成員なんだけど、どうもキャディの縄張りで売っちゃったらしくてね。 キャディはお冠みたい」

 「バルドルのとこかぁ……。 キャディはバルドルの事毛嫌いしてるもんね。 …………了解。 期日と希望はある?」

 「さっさと殺れ!……だって」

 「おぉぅ……」
 
 彼等が話しているバルドルというのは麻薬を取り扱う組織のボスで凶暴な性格で有名な男である。
 目的の為には手段を選ばない男で、彼の意向に逆らって殺された人も多い。

 もう一人のキャディというのは彼等の雇い主であり、キャデラック・アルドミランという女性でこのT市を裏で実質的に支配しているマフィアの幹部である。ちなみに偽名らしい。
 美しく冷酷な彼女はその辣腕を振るい、女性でありながら若くしてマフィアの幹部に上り詰めた。
 冷酷ではあるが仲間を大切にする事でも有名である。

 もともとバルドルが支配していたT市ではあったが、後から来たキャディの組織が瞬く間に縄張りを広げていきバルドルの支配は崩壊していた。
 そんなキャディの奪った縄張りの中でバルドルの手下が麻薬を捌き始めたのである。

 「バルドルも馬鹿だなぁ。 ……いっそここから手を引いて別の町でやればいいのに」

 「ここを仕切っていたプライドがあるんでしょ? キャディは馬鹿が更に馬鹿になるから麻薬嫌いだって言ってたしね」

 「馬鹿が馬鹿にって……いやキャディらしいけど。 じゃあ今日の夜にもちゃちゃっとやりますかね」

 「じゃあユリお姉ちゃんはどうしよっか? 手伝おっか?」

 「いつも言ってるけどいらないよ。 イサネは連絡役だろ? 何にも出来ないんだから……」

 「出来ますぅ! お姉ちゃんだって強いんだからねー! お姉ちゃんにかかればバルドルだって一発なんだからねー!」

 ふんすと鼻息荒くキレの良いシャドーを見せるユリ。
 子供っぽさが残る少女のその動きは端から見れば実にコミカルである。

 少年は思う。
 決して満たされた生活とは言い難い。
 それでも彼女が一緒にいてくれるなら……それでも構わないと。
 






 


 
 日は落ちれど、煌々とした灯りによって眠らない町のとある一部は今日も騒がしい。
 バルドルが経営しているカジノでは一攫千金を求める者や純粋にギャンブルのスリルを楽しむ者が思い思いに楽しんでいた。

 そんなカジノの裏側。
 関係者のみが立ち入りを許される一角の更に奥。
 経営者専用の一室にて一人の男が怒りを露にしていた。

 「このボケがぁ! 今のこの状況でそんな事をしたらあのアマに良い口実をやるだけじゃねぇか!」

 鍛えられた肉体によって繰り出される拳が神経質そうな男の頬を捉え、トラックにでも衝突されたかのように吹き飛んでいく。
 壁に叩きつけられた神経質そうな男はビクビクと痙攣し意識を失う。

 「ふざけやがって…………あのアマが戦争始める気になりがったら……くそっコマが足りねぇ……」

 自分が殴り飛ばした男には一顧だにせず、デスクについて頭を抱える。
 男……バルドルは部下であるエミリッヒが敵の地域で麻薬を売っていた事を後から知り焦っていた。
 ここでエミリッヒを殴殺したところで事態は解決しない。
 かといってエミリッヒをキャディに差し出して借りを作っても、後々に良いように扱われ自分達の立場が無くなるだけである。
 
 この事をきっかけに全面戦争をしても相手の組織が大きすぎる為、自分が一代で築いた程度の組織では呆気なく潰されるであろうという事は容易に想像出来た。
 
 「…………暗殺するのが手っ取り早いが……この町であの女を殺してくれる奴なんていんのか?」

 暗殺者と一言に言っても必ず引き受けてくれる訳ではない。
 暗殺者には暗殺者のルールやポリシーがある。
 この町で裏の世界を実質支配している女を暗殺となると相応のリスクもある。
 それだけのリスクに対する対価を支払うとなると巨額の費用も必要になってくる。

 「くそっ全然良いアイディアが浮かばねぇ……それもこれもてめぇ……が……あん?」

 バルドルが原因であるエミリッヒに目を向けると、その場に姿は無く這いずっていったような血の跡が残っているだけだった。

 「…………クソガキがぁ……面倒事持ち込んで逃げるたぁ良い度胸だ……手土産に渡すかとも思ったが俺の手でぶち殺してやるよ」

 唯でさえ怒りの沸点の低いバルドルの琴線に触れるようなエミリッヒの行動に激怒したバルドルが椅子を蹴り立ち上がる。
 相当な力で殴り付けた上に血痕が道標となってしまっている。
 そう遠くへはまだ逃げていないだろうと考えたバルドル。
 その血の導きに従いカジノから出たバルドルは警備の男を二人従えて更に進む。

 カジノの裏手に周り、そして異変に気づく。

 「これは……血の、臭い?」

 「ボス、俺達が先に行きやす」

 荒みきった彼等にとって血の臭いは嗅ぎなれており、日常的なものとすら言える。
 そんな彼等が異臭と感じてしまうほどの血の鉄臭い臭いが濃く、纏わりつくように辺りに漂っている。

 薄暗い曲がり角を先行した警備の男達が進み……そしてあまりの光景に胃から込み上げてくる物を思わずぶちまけてしまう。

 「おい! なにやって………………ウソだろ」

 警備の男達の反応で多少は覚悟を決めていたバルドルだったが、それでも予想以上の惨劇に思わず顔を歪める。
 
 そこにはつい先程まで生きていた筈のエミリッヒが……エミリッヒだったものが壁に磔られていた。
 腹部は大きく切り裂かれ、臓物が飛び出し夥しい量の血が流れ出している。

 剥き出しにされた胸部に直接字が刻まれており、その言葉を目にして呻く。

 「…………ここまでやるのかよ」


 エミリッヒが逃げたのは僅かな時間。
 それまでの間にこれだけの反抗をしてのけるなどただ事ではない技量である。

 「制裁……か。 エグい事しやがる。 しかし……殺しまでやるたぁな。 報復しねぇといけねぇなぁ」

 後に残されたのは胸に残る後味の悪さと血の臭い、そして燃え滾るような怒りだった。






 






 「エグい殺しかたしたねぇ……いつもあんなことしてるの?」

 「その時の状況次第……かなぁ。 キャディもイラついてたみたいだし今回で言えば見せしめの意味が強いだろうから派手にやったんだよ。 チマチマやっても抑止力にはならないだろ?」

 「んー…………………よく分かんない! さてと、私は報告書を書いてキャディに提出しないとね」

 時刻は深夜……というより夜明けに近い時間。
 仕事を手早く終えた二人は家に戻り、ユリはキャディへの報告書を書き上げる。
 実務は少年が担当し、事務の一切をユリが引き受けるというのが彼等のスタイルでもある。

 何気なしに少年はユリの報告書を覗き込み、顔をしかめる。
 
 「相変わらず……汚いというか癖が強いというか……変な字だな」

 「うっさいわね! 読めりゃいいのよ!」

 普段から細かい事に突っ込んでくるユリだが字は汚い。
 そんな報告書で大丈夫なのだろうかといつも心配になる少年。
 汚れた服をさっさと捨てて椅子に座りさっそくワインを口にする。
 炭酸が口の中で軽く弾け、一緒に広がる葡萄の香りが鼻腔を抜けてなんとも言えない満足感に包まれる。

 「ふぅー…………」

 「あんた本当にワイン好きなのねぇ……アル中?」

 「誰がアル中だ。 飲んでみれば分かるけど?」

 「いらなーい。 …………ねぇあんたはさぁ……その、夢ってある?」

 「唐突になんだよ? 夢って言われてもな。 ……ないかな」

 少年はユリからの突然の質問に対して答えを持ち合わせていなかった。夢を語るには世界を知らず、語るべき理想がない。
 少年からすれば今の状況もある意味夢のようとも言えたのかもしれない。

 「そっか。 私はさ……ニホンって国に行ってみたいんだ」

 「ニホンって……たしか技術大国で平和な国でもあるんだっけ? なんでニホン?」

 「私の故郷らしいからさ……。 やっぱり捨てられたって分かってても……気になるじゃん」

 少し寂しそうに笑うユリ。
 彼女は両親に捨てられてこの町の裏世界で生きてきた……らしい。
 少年もそうだが、物心ついた時にはこの裏路地で生活している。
 この二人がこんな子供でありながら生きてこれたのはキャディに拾われたというただの偶然によるものだ。
 とは言えただ拾われただけではこの世界で生きていくことは出来ない。
 少年もユリも生きるために必死で足掻いた。
 少年は戦い生き残るための殺しの術を。
 ユリは勉強と称して色々な知識を叩き込まれ。

 そうして足掻いてきた結果が今に繋がっている。

 そんなユリがキャディから聞いた自分の国籍の話。例え捨てられたのだとしても、いつか自分の両親が住む国へ行ってみたいという夢が出来たのだという。

 「あ、そうだ! そう言えばもうすぐ私とあんたが出会って五年目だよ! お祝いしないとね!」

 先程までの儚い雰囲気とはうって変わって快活な笑顔を見せるユリ。
 居心地の悪さを感じていた少年にとってそれは救いでもあった。

 「お祝いって……いいけど何か欲しいものでもあるのか?」

 「むっふっふっ……あんたもそろそろ女の子の扱いを覚えなさい。 しっかりと考えて選んでみなさいよ」
 
 「別にそれはいいけど……じゃあ俺の欲しいもの分かるのか?」

 「あんたにはワインで良いでしょ?」

 「……はい」

 「じゃあ私は報告書上げてから食べ物買ってくるから、しっかりと掃除しておいてね。 御祝いはそうね……二日後とかどう?」

 「あいよ。 さっさと報告書出してきなよ」

 「はーい! じゃあ行ってくる!」

 早速走って出ていったユリを見送って少年は座っていた椅子から立ち上がる。
 ゆっくりと深呼吸をして辺りを見回して思う。

 「こんな殺風景な部屋の何処を掃除しろと」

 掃いて拭けばすぐに終わる程に何もない部屋である。
 準備はそれだけでもいいのだろうかと思い、少年はふと考えた。

 「少しくらいは部屋も飾ってみるか……そういやあいつの名前って花の名前なんだっけ。 ……買いにいってみるか」

 ユリの顔を思い浮かべ、自分にも女心が分かるんだと少し気を大きくした少年は早速買い物に出掛けていった。
 

 ほんの少し……何かが違えば……きっと結果は変わっていたかもしれない。











 時は過ぎ二日後。

 普段は仕事が無ければ飲んではぐったりとした生活を送っていた少年だが、初めての祝い事と言うことで少しソワソワとしていた。

 予定では昼前から始める予定である。
 少年は今か今かと待ちわびている。

  
 正午を過ぎ、ユリはまだ来ない。
 少年はユリが来ないことに溜め息をつく。
 きっとまた遅刻癖が出てしまったのだろうと。


 夕方になり、それでもまだ来ない。
 もしかして仕事が入ったのだろうかと。
 それなら遅くなっても仕方無いと、自分に言い聞かせ待ち続ける。


 翌日になり、連絡はまだない。
 きっと忙しいのだろうと思いユリを待つ。
 彼女が連絡をしなかった事や約束を違えたことなど無いが、きっと何か事情があるのだろうと。



 

 三日が過ぎた。
 待ち続けた少年の家に来たのは別人だった。



 プラチナブロンドの髪をセミロングに揃え、スーツを着た女性。スレンダーなモデル体型だが普段から鍛えているため華奢な印象は受けない。
 鉄面皮とも言われる彼女は表情の変化がない。
 自分達の上司であり、ある意味で親とも言える存在。

 キャディだ。
 背後には多くの組織のメンバーが集まっていた。
 普段はそう多くは護衛を引き連れないキャディには珍しい光景で、少年は何かあったのかと感づいた。

 「こんな寂れた所に来るなんて珍しいねキャディ。 仕事?」

 キャディは部屋の内装を見て何かの準備をしていたのだと悟り、そして無表情なまま言葉を紡ぐ。
 
 「……報告と……仕事だ」

 「……報告?」

 「あぁ。 バルドルの手下が……ユリを殺した。 仕事はユリの弔いの為の戦争だ。 あいつらを皆殺しにする」

 「…………冗談……って訳じゃない……よな」

 「私がこんな質の悪い冗談を言うためにこんな所に来ると思うか?」

 そんな事はしない。
 少年もそれはわかっていた。
 
 いや、キャディが来た時点で何となく分かっていたかもしれない。
 ただ少年はそれを認めたくなかった。

 「ユリは麻薬を捌いていた奴の報復でバルドルの手下に殺された。 私の屋敷から出た所を見られていたらしい」

 「…………」

 受け止めきれない事実を突きつけられ少年は怒りと……それ以上の悲しみに襲われる。
 締め付けられるような胸の痛みで今にも狂いだしそうな自分をなんとか制するが、呼吸は荒くなり目の前の景色が歪んでいた。

 「どうする? 辛いなら止めておくか? 幸いユリはうちのファミリーでは皆に愛されていたからな。 仇討ちをしたい奴は大勢いる」

 キャディは背後をちらりと見て、それに釣られて少年はキャディの背後を見る。
 多くのメンバーが表情は変えてはいないが、目を赤く腫らしたものや鼻をすする音が所々にいる。
  
 (あぁ…………ユリはこんなにも愛されていたんだな。 知らなかった。 いや知ろうとしてなかったな)

 「…………いや…………殺る。 俺が…………必ず殺る」

 「そうか。 ……行くぞ、ユリを派手に送ってやろう」

 少年はキャディの後ろにつき復讐者の列に加わる。
 大切な家族の死を弔う盛大な送り火を焚くために。









 

 「こんな所にいたのか」

 「俺だってセンチメンタルな気分になることもあるよ」

 バルドル一味をこの世界から抹消させてから一週間。

 少年は貯めていた報酬でユリの墓を建てた。
 共同墓地の一角に組織と仲間達からも資金を出してもらい立派な物を作ってもらっていた。
 少年は墓が出来てからずっとそこで過ごしていた。

 「似合わんな。 …………あの前日、お前達はパーティをする予定だったらしいな」

 「なんで知ってるんだよ」

 二人だけで決めたことのはずなのに、なぜ関係のないキャディがそれを知っているのか。
 疑問に思った少年はキャディの方を振り返る。
 
 キャディは一つの箱と手紙を少年に渡す。

 「これは……」

 「ユリはな……あの日世話になっていた仲間全員に感謝の手紙を書いてたんだよ。 自分には危険なことは出来ないから、せめてこうやって感謝を伝えるんだと。 私もあいつの手紙作りを手伝っていてな。 こうして全員に直接配っているところだ」

 「はっ! あの鉄面皮って言われてる冷血なキャディさんが優しいことだな」

 「殴られたいか?」

 「冗談です」

 「黙って受けとれ」

 下らないやり取りの後に渡された手紙と箱を受けとる。
 黄色い可愛らしい便箋に入ったそれを開き中身を取り出す。


 


 

 改めてこういう手紙を書くと恥ずかしいね。

 でもこういう物だからこそ、私の気持ちをしっかりと伝えるのにいいかなと思って文字に起こしたいと思います。

 初めて出会ってからもう五年。
 あっという間だったね。
 最初は生意気で無愛想な子だなと思っていたけど、一緒に過ごしている時間が増えるうちに実は優しいけどその表現の仕方が分からないだけなんだなと思いました。
 
 これはお姉ちゃんとして、しっかりと支えてあげないといけないと思ったんだよ。
 
 キャディに拾われて、一緒に色んな仕事をして、二人で暮らしたりもしてみたりすごく楽しかった。
 辛いことや怖いこともあったけどあなたとならどんな事も耐えられたんだ。

 本当にいつもありがとう。
 
 私は怖がりで寂しがりだけど、きっとあなたとならどんな事も、どんな所でもきっと生きていけると思うの。


 だから…………



 

 「…………」


 少年が手紙を読み終わり、ふと周囲に誰もいなくなっていた。

 
 箱を開けて中身を確認しようとして視界がボヤけている事に気付く。

 歪む視界に必死に耐えて取り出した薄紅色の美しいボトルにはゼクトと書かれていた。

 ポタリポタリと小さな滴がラベルを伝い文字を滲ませていく。

 「俺も…………ずっと…………」

 少年は嗚咽を押し殺し、いつまでも彼女との繋がりを抱き締め続けていた。
 




 『だから、これからもずっと一緒にいようね』

 
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