6 / 19
第1章 目隠し皇女
第6話 教師をやってほしいんだ
しおりを挟む
「…………なんだって?」
「”娘”の教師をやってほしい、と言った」
「いや、そうではなく……」
「ああすまない、言葉が足りなかったな。正確には娘の魔術の先生をしてやってほしいんだ」
いや、そういうことではなく……。
それがお忍びで来てまで打ち明ける内容なのか……?
グレイの娘――っていうと、つまり皇女殿下だよな?
……一応、グレイとエステルが一児を儲けたことは知っている。
終戦の一年後に生まれて、当時は国中で話題になったからな。
だが俺は、その子と直に会ったことはない。
俺は二人が結婚式を挙げたのを見届けた後、すぐにハーフェンへ向かったからな。
それに皇都へ戻ったり、グレイやエステルと連絡を取るのをできるだけ避けていたのもある。
だから詳しくは知らない――というか、皇女殿下のことを詳しく知る者なんて極少数ではなかろうか。
何故なら皇女殿下は、これまでほとんど公の場に姿を現したことがないからだ。
俺は参加しなかったので詳細は不明だが、戦後十周年の記念パレードでも姿を見せなかったらしい。
なんでも身体が病弱で、王宮の中から出られない――なんて話を風の噂で聞いた。
真偽のほどは知らないが…………正直、知りたいとも思わない。
「娘は今年で十五歳になる。彼女は『アルヴィオーネ魔導学園』への入学を目指していてね」
「――! アルヴィオーネに……?」
「ああ、懐かしいとは思わないか? 僕たちが青春を過ごした、あの学園だよ」
……懐かしくないワケがない。
十六年前、まだ十代だった俺たちが共に学び、共に汗を流し、共に国を守るために立ち上がった、かけがえのない学び舎。
――『アルヴィオーネ魔導学園』。
『エクレウス皇国』の公立学校であり、何世紀にも渡って優秀な人材を輩出してきた由緒ある魔導学園。
名前に魔導とあるように基本は魔術を教えているが、同時に皇国を守る士官を育成する場所であるため、魔術以外にも剣や弓など様々な武術も教えている。
この学園に通うことは皇国の民にとって最大の名誉であり、主人公であるエステルや攻略対象である俺たちも通っていた。
――メタなことを言ってしまえば、ここが”戦ラプ”の物語の舞台なのだ。
広々とした学園で、魔術とファンタジーがあって、若者たちの青春の場で――。
如何にも乙女ゲームの設定に使いやすい場所、それが『アルヴィオーネ魔導学園』。
……俺が初めてエステルと出会ったのも、学園の中だったよ。
今でも……よく覚えてる。
「来春には入学試験が控えていてね。これまでは僕とエステルが魔術を教えていたんだが、この度専属の教師を雇うことに決めたんだ」
ああ……なるほど?
アルヴィオーネは世界でも最高峰の魔術学校。
そのレベルは非常に高く、入学の難しさが群を抜いていることでも知られている。
一次試験である筆記テストの時点で、その倍率なんと200倍。
加えて国内が平和になった現在、優れた学問を学びに世界中から入学希望者が殺到しているようで、さらに年々倍率が上がっているなんて話もある。
もはやエリートの中のエリートしか入学を許されない超難関。
そこを目指すとなれば、グレイが娘に教師を付けようと考えるのも頷けるが――
グレイもエステルも、立派なアルヴィオーネの卒業生。
つまりエリート。
俺なんかに頼らずとも、充分に教師役が務まるはずなんだけど……。
「”娘”の教師をやってほしい、と言った」
「いや、そうではなく……」
「ああすまない、言葉が足りなかったな。正確には娘の魔術の先生をしてやってほしいんだ」
いや、そういうことではなく……。
それがお忍びで来てまで打ち明ける内容なのか……?
グレイの娘――っていうと、つまり皇女殿下だよな?
……一応、グレイとエステルが一児を儲けたことは知っている。
終戦の一年後に生まれて、当時は国中で話題になったからな。
だが俺は、その子と直に会ったことはない。
俺は二人が結婚式を挙げたのを見届けた後、すぐにハーフェンへ向かったからな。
それに皇都へ戻ったり、グレイやエステルと連絡を取るのをできるだけ避けていたのもある。
だから詳しくは知らない――というか、皇女殿下のことを詳しく知る者なんて極少数ではなかろうか。
何故なら皇女殿下は、これまでほとんど公の場に姿を現したことがないからだ。
俺は参加しなかったので詳細は不明だが、戦後十周年の記念パレードでも姿を見せなかったらしい。
なんでも身体が病弱で、王宮の中から出られない――なんて話を風の噂で聞いた。
真偽のほどは知らないが…………正直、知りたいとも思わない。
「娘は今年で十五歳になる。彼女は『アルヴィオーネ魔導学園』への入学を目指していてね」
「――! アルヴィオーネに……?」
「ああ、懐かしいとは思わないか? 僕たちが青春を過ごした、あの学園だよ」
……懐かしくないワケがない。
十六年前、まだ十代だった俺たちが共に学び、共に汗を流し、共に国を守るために立ち上がった、かけがえのない学び舎。
――『アルヴィオーネ魔導学園』。
『エクレウス皇国』の公立学校であり、何世紀にも渡って優秀な人材を輩出してきた由緒ある魔導学園。
名前に魔導とあるように基本は魔術を教えているが、同時に皇国を守る士官を育成する場所であるため、魔術以外にも剣や弓など様々な武術も教えている。
この学園に通うことは皇国の民にとって最大の名誉であり、主人公であるエステルや攻略対象である俺たちも通っていた。
――メタなことを言ってしまえば、ここが”戦ラプ”の物語の舞台なのだ。
広々とした学園で、魔術とファンタジーがあって、若者たちの青春の場で――。
如何にも乙女ゲームの設定に使いやすい場所、それが『アルヴィオーネ魔導学園』。
……俺が初めてエステルと出会ったのも、学園の中だったよ。
今でも……よく覚えてる。
「来春には入学試験が控えていてね。これまでは僕とエステルが魔術を教えていたんだが、この度専属の教師を雇うことに決めたんだ」
ああ……なるほど?
アルヴィオーネは世界でも最高峰の魔術学校。
そのレベルは非常に高く、入学の難しさが群を抜いていることでも知られている。
一次試験である筆記テストの時点で、その倍率なんと200倍。
加えて国内が平和になった現在、優れた学問を学びに世界中から入学希望者が殺到しているようで、さらに年々倍率が上がっているなんて話もある。
もはやエリートの中のエリートしか入学を許されない超難関。
そこを目指すとなれば、グレイが娘に教師を付けようと考えるのも頷けるが――
グレイもエステルも、立派なアルヴィオーネの卒業生。
つまりエリート。
俺なんかに頼らずとも、充分に教師役が務まるはずなんだけど……。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる