上 下
62 / 93
第十三章「天使と悪魔っているんだ」

60.戦争勃発

しおりを挟む
 リリスは自分よりも巨大な槍を薙ぎ、ガブリエルはこれまた本人よりも大きい剣を構えた。
 空はいつの間にか嵐になっており、その戦いが激しくなることを予言してるようだった。
 案の定、二人の対決はヒートアップし、いつの間にかリリスについてきた悪魔の軍団がやってきて応援を始めた。


 「フレーフレー! リリス様!」
 「負けないでくださーい!」
 「今日こそ我ら悪魔軍の勝利を!」
 「ママ! 頑張って!」
 「ガブリエル様! どうか負けずに!」
 「天使達の威光を示すときです!」
 「是非とも勝って欲しい!」
 「お母様! 勝って!」
 いつの間にか天使達も応援に混ざり、周りの熱は一気に盛り上がる。が、応援していたはずの天使と悪魔達がいがみ合い始めた。


 「リリス様ー!」
 「ハン、あの厚化粧のおばはんのどこがいいんだが……」 
 「あんだとてめぇ! 今リリス様を馬鹿にしたか!? それを言うならオマエのとこの女王の体は貧相だな!」
 「はぁぁぁぁぁぁ!? 今陛下を侮辱しましたねぇ!? 喧嘩売ってますかぁ!?」
 「ああ、そうだよ! やってやろうかぁ!?」
 「望むところですよ!」
 その天使と悪魔が喧嘩を始めたことを皮切りに、まわりの天使と悪魔も戦闘を開始した。
 そしてその中には当然。


 「さーて、ミカエルこの前の決着といこうか!?」
 「まー、はしたない。大声を上げるなんて……まぁ、その喧嘩を買わないという手は無いですけど」
 と、ルシファーもミカエルも喧嘩を始めた。
 

 最早、ハル達そっちのけで始まった戦争を見た2人は「なにこれカオス」と思いながら、この情景を見ていた。
 そんな時セレネが玄関の前に来て、ハル達に告げる。
 「あのー……お茶を運ぼうと思ったのですが……何があったんです?」
 セレネも今何が起こっているのか分からないと言う表情で見た。


 そうこうしている間に、2つの軍勢の戦いはますますヒートアップしており、収拾がつかなくなっていた。
 ハルはころんと足下に何か当たったと思い見るとそこにはカボチャの一部が転がっていた。何事と思い、後ろを見ると何と畑の一部が壊滅状態になっていたのだ!
 ハルは未だ呆然とするショコラを叩いて正気に戻し、畑の惨状を見させた。流石にショコラもこのままではいけないと思ったのかあり得ないことを口にした。


 「よし! アイツらを止めよう!」
 「何言ってるんですか!? 相手は天使と悪魔ですよ!?」
 「安心しろって! 下級ぐらいならなんとかなるなる!」
 「はい!?」
 そう言うとショコラは自分の槍を構えながら、嵐の中に突っ込んでいった。ハルはセレネに「すみません、屋敷の中だけでも守護結界を張るようにルチアさんやリリィに言ってください」と、伝えショコラについて行った。


 「お、嬢ちゃん、俺達に加勢してくれ! グワッ! 何を……!」
 「よし、このお嬢はオレたちの味方っぽいな! よーし、手をくん……ガハッ!」
 「うるせぇー! さっさと喧嘩を止めろ!」
 ショコラは怒りにまかせて魔法を付与した槍を振るう。それだけで悪魔と天使の大半は気絶状態になった。


 「まったくショコラさん、なにやってるんですか!」
 「だって、このままじゃ家に被害が出るだろ!?」 
 「そうですね! じゃあ仕方が無い!」
 ハルも(半分やけくそだが)レイラのポーションで回復しつつ、強力な魔法を放った。穢れを苦手とする天使族には血の魔法を、一方浄化が苦手な悪魔族には光魔法と言った具合に。
 

 このように天使と悪魔達を次々倒した結果、残るはリリスとルシファー、そしてガブリエルとミカエルの4人になった。
 未だ激しく戦いを続ける双方を見て、2人は相談した。


 「私は前のようにあの2人を止めますからショコラさんはあの女王様達を」
 「分かった、行くぞ!」
 2人はそれぞれの持ち場に向かった。


 「いーかげん諦めてよね! ミカエル!」
 「それはこっちのセリフよ、ルシファー」
 セリフは強めだが、2人は最早体力が残り少なく少しフラフラになっていた。その間にハルが割り込んだ。


 「はい、2人ともそこまでね」
 「な、人間!?」
 「ハルさん!?」
 2人は突如現れたハルに驚いたがハルはまったく気にせず2人に呪文をかけた。


 「スリープ。とっとと寝てなさい」
 その呪文を唱え終わると同時に2人は地べたに寝転んだ。


 「あっちゃ~入れないなこれ……」
 ショコラはリリスとガブリエルの戦いを少し離れたところで見ていた。2人が出す圧はかなりのものでショコラレベルの大魔女ですら、容易に近づけないものだった。
 そこにルシファーとミカエルを寝かしたハルがやって来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

地球にダンジョンができたと思ったら俺だけ異世界へ行けるようになった

平尾正和/ほーち
ファンタジー
地球にダンジョンができて10年。 そのせいで世界から孤立した日本だったが、ダンジョンから採れる資源や魔素の登場、魔法と科学を組み合わせた錬金術の発達により、かつての文明を取り戻した。 ダンジョンにはモンスターが存在し、通常兵器では倒せず、ダンジョン産の武器が必要となった。 そこでそういった武器や、新たに発見されたスキルオーブによって得られる〈スキル〉を駆使してモンスターと戦う冒険者が生まれた。 ダンジョン発生の混乱で家族のほとんどを失った主人公のアラタは、当時全財産をはたいて〈鑑定〉〈収納〉〈翻訳〉〈帰還〉〈健康〉というスキルを得て冒険者となった。 だが冒険者支援用の魔道具『ギア』の登場により、スキルは大きく価値を落としてしまう。 底辺冒険者として活動を続けるアラタは、雇い主であるAランク冒険者のジンに裏切られ、トワイライトホールと呼ばれる時空の切れ目に飛び込む羽目になった。 1度入れば2度と戻れないその穴の先には、異世界があった。 アラタは異世界の人たちから協力を得て、地球との行き来ができるようになる。 そしてアラタは、地球と異世界におけるさまざまなものの価値の違いを利用し、力と金を手に入れ、新たな人生を歩み始めるのだった。

乙女ゲームに悪役転生な無自覚チートの異世界譚

水魔沙希
ファンタジー
モブに徹していた少年がなくなり、転生したら乙女ゲームの悪役になっていた。しかも、王族に生まれながらも、1歳の頃に誘拐され、王族に恨みを持つ少年に転生してしまったのだ! そんな運命なんてクソくらえだ!前世ではモブに徹していたんだから、この悪役かなりの高いスペックを持っているから、それを活用して、なんとか生き残って、前世ではできなかった事をやってやるんだ!! 最近よくある乙女ゲームの悪役転生ものの話です。 だんだんチート(無自覚)になっていく主人公の冒険譚です(予定)です。 チートの成長率ってよく分からないです。 初めての投稿で、駄文ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 会話文が多いので、本当に状況がうまく伝えられずにすみません!! あ、ちなみにこんな乙女ゲームないよ!!という感想はご遠慮ください。 あと、戦いの部分は得意ではございません。ご了承ください。

異世界は黒猫と共に

小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。 「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。 ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。 自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。 猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

性格が悪くても辺境開拓できますうぅ!

エノキスルメ
ファンタジー
ノエイン・アールクヴィストは性格がひねくれている。 大貴族の妾の子として生まれ、成人するとともに辺境の領地と底辺爵位を押しつけられて実家との縁を切られた彼は考えた。 あのクソ親のように卑劣で空虚な人間にはなりたくないと。 たくさんの愛に包まれた幸福な人生を送りたいと。 そのためにノエインは決意した。誰もが褒め称える理想的な領主貴族になろうと。 領民から愛されるために、領民を愛し慈しもう。 隣人領主たちと友好を結び、共存共栄を目指し、自身の幸福のために利用しよう。 これはちょっぴり歪んだ気質を持つ青年が、自分なりに幸福になろうと人生を進む物語。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載させていただいています

処理中です...