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五章
5−2
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繁殖期に向け、僕の授業に剣術も加わった。剣とは言いつつ、持たされている得物はナイフだ。しかも、投擲用。刃の部分を挟んで持ち、頭上から一気に振り下ろして投げる。一本の木を的に、投げては拾い投げては拾いを繰り返す。
初めは指からすっぽ抜け、あらぬ方向に飛び、的に擦りもせず、投げたナイフを探す時間の方が長かったが、毎日毎日何度も何度も繰り返すことによって、やっと様になってきた。投げたナイフが太い木に突き刺さった時は飛び跳ねて喜び、着地に失敗して足を捻ったりもした。
まだまだ狙い通りとはいかないが、なんとか使えるものになった頃、とうとう僕は魔獣狩りに参加することになった。参加すると言っても、パーティは僕とメイディ氏のみ。そして後ろから、主人とオフィシエがついてきている。
主人は狩猟には参加せず、僕が離れ過ぎないように見守る係で、オフィシエは獲った魔獣を捌く係である。曰く、魔獣の肉は下処理が面倒らしいので、料理が得意なオフィシエにその場で血抜きをしてもらおうということになった。
少し森の中へ入ると、膝より少し低い位置の植物が食い荒らされているのがわかった。小型の魔獣は植物の柔らかな部分を好むようで、根元よりも頂点の葉っぱが重点的に狙われている。
「冒険者は育った葉を摘むのでそこはいいんですが、次に繋がらないんですよねぇ」
のんびりとした口調で、それでも何処か苦みを含んだ表情でメイディ氏が呟く。
大きな葉っぱは残っているが、次に育つはずの若い葉っぱが食べられてしまっては意味がない。普段は魔獣の数がそこまで多くないため影響はないのだが、繁殖期で数が増えてしまうと柔らかい部分以外も食べ始めるため、植物類の納品が滞ってしまうほどらしい。
「あいつら、別に草食ってる訳でもねぇしな」
「それが余計迷惑なんですよ」
なんと魔獣は草食という訳ではなく、嗜好品扱いで葉っぱを口にするということがわかっている。口寂しいのか、気分を変えたいのか、なぜ葉っぱを食べるのかまでは理解が及んでいない。排泄物と一緒に吐き捨てられていることが確認されているので、肥料の形になってはいるらしい。しかし、魔獣に咀嚼されたから良い肥料になるという訳でもないので、ただただ素材を無駄に生ゴミにされているだけなのである。殺傷能力が低く人に被害がなくとも、害獣のような扱いらしい。
「そんな訳で、彼らには罰として美味しい夕食になってもらいましょう!」
パンと一つ手を叩き、メイディ氏は気合を入れて獣道を進んでいく。
初めは指からすっぽ抜け、あらぬ方向に飛び、的に擦りもせず、投げたナイフを探す時間の方が長かったが、毎日毎日何度も何度も繰り返すことによって、やっと様になってきた。投げたナイフが太い木に突き刺さった時は飛び跳ねて喜び、着地に失敗して足を捻ったりもした。
まだまだ狙い通りとはいかないが、なんとか使えるものになった頃、とうとう僕は魔獣狩りに参加することになった。参加すると言っても、パーティは僕とメイディ氏のみ。そして後ろから、主人とオフィシエがついてきている。
主人は狩猟には参加せず、僕が離れ過ぎないように見守る係で、オフィシエは獲った魔獣を捌く係である。曰く、魔獣の肉は下処理が面倒らしいので、料理が得意なオフィシエにその場で血抜きをしてもらおうということになった。
少し森の中へ入ると、膝より少し低い位置の植物が食い荒らされているのがわかった。小型の魔獣は植物の柔らかな部分を好むようで、根元よりも頂点の葉っぱが重点的に狙われている。
「冒険者は育った葉を摘むのでそこはいいんですが、次に繋がらないんですよねぇ」
のんびりとした口調で、それでも何処か苦みを含んだ表情でメイディ氏が呟く。
大きな葉っぱは残っているが、次に育つはずの若い葉っぱが食べられてしまっては意味がない。普段は魔獣の数がそこまで多くないため影響はないのだが、繁殖期で数が増えてしまうと柔らかい部分以外も食べ始めるため、植物類の納品が滞ってしまうほどらしい。
「あいつら、別に草食ってる訳でもねぇしな」
「それが余計迷惑なんですよ」
なんと魔獣は草食という訳ではなく、嗜好品扱いで葉っぱを口にするということがわかっている。口寂しいのか、気分を変えたいのか、なぜ葉っぱを食べるのかまでは理解が及んでいない。排泄物と一緒に吐き捨てられていることが確認されているので、肥料の形になってはいるらしい。しかし、魔獣に咀嚼されたから良い肥料になるという訳でもないので、ただただ素材を無駄に生ゴミにされているだけなのである。殺傷能力が低く人に被害がなくとも、害獣のような扱いらしい。
「そんな訳で、彼らには罰として美味しい夕食になってもらいましょう!」
パンと一つ手を叩き、メイディ氏は気合を入れて獣道を進んでいく。
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