実際にあった怖い話

ゆーゆ

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大学生・社会人の体験談

社会人 男性

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 水の周りには、人ならざるものが集まりやすいとよく耳にします。
 水にまつわる神話や妖怪も多いようです。
 そういうものが集まりやすいということは、それらによって引き起こされた、「不可解なこと」が起こりやすい、そう考えることができます。
 さて皆さん。もし、あなたが。もし、友達が。
 そういう事態に陥ったらどうしますか?


 これは、私が中学生のころのお話しです。

 私は水泳部に所属していました。
 私の他に女子が5、6人いたのですが、そのうち部活に来るのは私を含め3人。
 サボりが多く、緩い部活でした。
 そんな緩い部活だからか、帰る時間も特には決まっていませんでした。
 せいぜい、顧問の先生が職員室に戻る際に「早めに帰れよー」と、声かけするくらいです。
 そんなの、みんな気にも止めていませんでした。
 水泳部にはやんちゃな人が多く、そして怖いもの好きが集まっていました。
 私自身も、そこそこ怖い話は好きでしたし、部室に遅くまで残って友達とよく怪談を話したものです。
 そんな、いつも通りのある日のことです。
 いつも通り部室に残って怪談を話していると、バシャ、と何かが水に浸かる音がしたんです。
 遠くはなれた部室に響くくらいですから、たぶん、相当大きな音だったと思います。
 みんなで「なんだなんだ」と、プールに行くと、なにもなかったかのように水面がしんとしているんです。
「おかしい」と思いました。
 もちろん、音がしたのですから何かあるはずなのですが、なにもない。
 でもそれだけだったら、もしかしたら誰かがイタズラでやったかもしれないと思えるんです。
 だって、部室は少しはなれたところにあるんですから。
 移動する時間はあるはずなんです。
 でも違うんです。
 私たち水泳部女子が着目した点はそこではありませんでした。
 "水面がしんとしている"
 だっておかしいでしょう。
 なにかそこに浸かったのなら、少しでも水の波ができているはずなんです。
 でも、できていなかったんですよ。
 さすがにこれは背筋が凍りました。
 まさかあの大きな音が空耳とは思えないし、なにせ全員が聞いているんです。
 しかも、私たちは水泳部ですよ。
 常日頃水の音を聞いているのに、なにか他の音と間違えるはずがありません。
 私は「もう帰ろう」とそのとき提案したのですが、水泳部の1人が面白がって、部室に戻ったと思ったら水着に着替えていて、いきなりプールのなかに飛び込んだんです。
「あはは!あははははは!」
 と、友達は楽しそうに笑っていました。
 正直私は何が楽しいのか分かりませんでした。
 恐ろしくて早く帰りたかったんです。
「あははははは!」
 と、友達はずーっと笑っていました。私は、さすがにこれはおかしいな、と思ったんです。
 だってずっと笑ってるんですよ。
 特に面白いこともないのに。
「ねぇ、早く帰ろう」
 そう言うと、友達の笑い声がやんで、真顔で私のことを見つめて
「なんで?」
 と首をかしげました。
「なんでって、もう遅いし、それに……」
 と、それを眺めていたもう1人の友達が言うと、
「え?だって君達、いっつも遅くまで残ってたじゃん。今日は早く帰っちゃうの?なんで?」
 と、ほんとに不思議そうに首をかしげるんです。
 それに、なんだか話し方がいつもの友達ではないような気がしました。
「君達」じゃなくて、いつもは「あなた達」と言うはずなんです。
 私たちは怖くなって、その場から逃げ出しました。
 追ってくる気配はありませんでした。


 その後、少し経って冷静になってからもう一度行くと、友達は水着のままでぼーっと空を見上げていました。
「ねぇ、もう帰ろうよ」
 と言うと、
「帰りたいねぇ」
 って言うんです。
 それを聞くと、なぜだか胸が苦しくなりました。
 なんだか、目の前の友達が迷子になった子供みたいに見えたからです。
「帰りたいの?」
「帰れないんだぁ」
「どうして?」
「どうしてって……」
 友達はふっ、と笑うと、
「ごめんね、もう帰ろうか」
 って、部室に向かって行きました。
 少しすると、
「ごっめぇ~ん遅くなったぁ」
 って笑う、いつも通りの友達がそこにいました。
「待った?ごっめんねぇ、なんかうとうとしちゃってたんだよ~」
 と友達が言ったので、深追いはせずに、その日はうちに帰りました。

 その後、友達にはあのときどうしたのか、なぜだか聞くことはできませんでした。
 なんだか、あの時の友達は、友達ではなかったような気がしたのです。
 それに、なんだかその事を聞くと、私の胸がどうしようもなく締め付けられました。

 あれは一体なんだったのでしょうか。
 友達は何になっていたのでしょうか?

 今でも謎だらけの、ある夏の出来事です。
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