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第1章
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その日は、新学期に入ってから2回目の生徒会の集まりだった。
「はいーついに来ました苦情ぉー」
5月の長かったゴールデンウィークがあっという間に終わり、周りもまだ浮ついた気持ちでいる中、放課後の生徒会室で楓が面倒臭そうに言った。
その右手には小さな用紙を持って、みんなに見えるようにひらひらと降っている。その紙は、生徒なら誰でも出すことが出来る意見箱用の物だ。
生徒会長の赤井 蓮(あかい れん)先輩が気怠そうに頰杖をつきつつ楓に視線を投げた。
赤井先輩は切れ長の目が特徴的な人で、いつも怖い顔をしている。一見すると裏で悪さをしているのでは?と思わせる風貌だけど、根は優しく、正義感のある人だということはこの短い付き合いでも十分伝わってきていた。
「どんな苦情だよ」
聞かれた楓が音読する。
副会長の沢田 ゆか先輩も長い髪を払いながら顔を上げた。
「あ、生徒会に対しての苦情じゃないですよ。えーと…1年の月島 志乃が風紀を乱してます。色んな人に手を出しています。見ていて苛つきます。どうにかしてください。…だそうです」
その名前に顔をしかめる。
月島…、数日前のあの子だ。やっぱりそう言う事をしていたのか。
「それは生徒会の案件なの?直接先生に言うなり風紀に相談すればいいのに」
「まあ一応ここは生徒の代表みたいな所だからなぁ」
「先輩たちはこの1年の噂、聞いたことあります?」
「ないけど」
「赤井先輩も?」
「ねぇな」
楓は少しだけ背を伸ばすと、自分だけが知っている情報を(俺はすでにこいつから聞いているわけだが)得意気に話した。
「中学の時の後輩が1年にいるんでその子が教えてくれたんですけど、この月島って子、男の子専門らしいですよ」
「そうなの?」
「なら誘われた方は大人には言いづらいのかもしんねぇな。まさか男にヤられたとか言うの嫌だろ。和倉、お前いつか狙われるんじゃねーの」
「赤井先輩、楓と同じこと言ってますよ」
「うげぇマジかよ」
「ちょっと先輩!失礼な反応してくれますね!」
ぷんぷん怒る楓を無視して、赤井先輩が『とにかく、』と話をまとめた。
「月島って奴のことは頭に入れとけ。また似たような話来たら呼び出す」
その日は、新学期に入ってから2回目の生徒会の集まりだった。
「はいーついに来ました苦情ぉー」
5月の長かったゴールデンウィークがあっという間に終わり、周りもまだ浮ついた気持ちでいる中、放課後の生徒会室で楓が面倒臭そうに言った。
その右手には小さな用紙を持って、みんなに見えるようにひらひらと降っている。その紙は、生徒なら誰でも出すことが出来る意見箱用の物だ。
生徒会長の赤井 蓮(あかい れん)先輩が気怠そうに頰杖をつきつつ楓に視線を投げた。
赤井先輩は切れ長の目が特徴的な人で、いつも怖い顔をしている。一見すると裏で悪さをしているのでは?と思わせる風貌だけど、根は優しく、正義感のある人だということはこの短い付き合いでも十分伝わってきていた。
「どんな苦情だよ」
聞かれた楓が音読する。
副会長の沢田 ゆか先輩も長い髪を払いながら顔を上げた。
「あ、生徒会に対しての苦情じゃないですよ。えーと…1年の月島 志乃が風紀を乱してます。色んな人に手を出しています。見ていて苛つきます。どうにかしてください。…だそうです」
その名前に顔をしかめる。
月島…、数日前のあの子だ。やっぱりそう言う事をしていたのか。
「それは生徒会の案件なの?直接先生に言うなり風紀に相談すればいいのに」
「まあ一応ここは生徒の代表みたいな所だからなぁ」
「先輩たちはこの1年の噂、聞いたことあります?」
「ないけど」
「赤井先輩も?」
「ねぇな」
楓は少しだけ背を伸ばすと、自分だけが知っている情報を(俺はすでにこいつから聞いているわけだが)得意気に話した。
「中学の時の後輩が1年にいるんでその子が教えてくれたんですけど、この月島って子、男の子専門らしいですよ」
「そうなの?」
「なら誘われた方は大人には言いづらいのかもしんねぇな。まさか男にヤられたとか言うの嫌だろ。和倉、お前いつか狙われるんじゃねーの」
「赤井先輩、楓と同じこと言ってますよ」
「うげぇマジかよ」
「ちょっと先輩!失礼な反応してくれますね!」
ぷんぷん怒る楓を無視して、赤井先輩が『とにかく、』と話をまとめた。
「月島って奴のことは頭に入れとけ。また似たような話来たら呼び出す」
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