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14.古風な一軒家の時空召喚①
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「まだ、全然足りないか……!」
廃屋の周りを囲んだ円状術式には、円に沿って幾重もの文字が刻まれている。
レアルが途切れず魔法力を注ぎ込めば、円状の文字が少しずつ黒から金色へと変化していく。
「この術式が一周廻って全部が金色になれば、それが最適の召喚タイミングってことだよね!」
小川の時は範囲も狭かった。
時空を超えての小川からの召喚は綺麗な水や、綺麗な植物と言った比較的質量の軽いモノが主だったからそんなに召喚時間もかからずスムーズに行けていた。
だが今回は、家をまるごと時空間召喚する。
難易度は、先に比べると桁違いだった。
「ガルルルルルルルルルルァッッ!!」
レアルのすぐ後ろで、獣の声がした。
「そっちに、行かせるわけないじゃないッ!!」
ザンッ!!
「ガォァァァァァァ……ァッ……ォッ……!」
ぼとりと胴体を真っ二つにされた獣の死体がレアルの横に転がった。
レアルの背後を護るようにして剣を持ち直したリリシアが肩で息をしながら言う。
「Bランク魔物筋肉狼。確認出来るのは18頭。だけど、群れの頭が見えないわ。厄介ね。そっちはどう?」
「おかげさまで、順調かも。だけどやっぱりもう少し時間がかかる。頼めるかな、リリシア」
「……任せなさい!」
リリシアの剣には、少しずつ綻びも出始めている。
王宮を飛び出してきて一週間。ろくな手入れも出来ない環境下で鈍り始めた剣の刃は、筋肉狼ほどの堅い筋肉を断ち斬りにくくなっていた。
「だとしても――ッ!」
「ガァァァァァァァッッ!!」
「ここから先は、一歩も通さないんだからッッ!!!」
筋肉狼の突貫を正面から刃で受け止めたリリシア。
メリメリと刃が筋肉にめり込んでいくのを見計らったリリシアは、力尽くで剣を回転させる。
「こんのぉぉぉぉぉぉおおお!!」
筋肉狼の身体が宙を舞い、リリシアは獣の動きに合わせるようにして剣を天に掲げた。
ぐしゃっ。
鈍い音と共にリリシアの剣先に、筋肉狼が突き刺さる。
「まだまだ……やれるんだからね……っ!」
ピク、ピクと小さく痙攣を起こし絶命する同族を見て、群れも思わず尻込みをしていた。
「後、ちょっと……さすがに使う魔法力量も、段違いだね……!?」
『召喚可能係数まで 魔法力量――残:320ファルツ
種:建造物
個体名称:ガルルガ邸宅―現時点より892年前に無人―
召喚源:《***領θ*×α地点》
召喚地点:召喚術師の円状術式上に再構築』
円状術式の周りに現れるデータベースの文字。
解読不能な文字も数カ所あれど、今のレアルにそれを気にする余裕はない。
ツタと埃に塗れた一軒家の周りを、金色の光が包み込む。
円状術式上の文字が光の粒子となっていく。
「よし、全部が繋がった……ッ!」
円状術式上の文字が全て金色に染まる。
『召喚可能係数 規定値を突破
ガルルガ邸宅 時空召喚』
シュンッとデータベースが消えて建物全体が粒子と化した。
その、数秒後だった。
『ガルルガ邸宅 時空召喚成功
召喚術師レベルが1上がりました』
レアルの前に現れたのは、先ほどとは打って変わって綺麗になった一軒家だった。
廃屋の周りを囲んだ円状術式には、円に沿って幾重もの文字が刻まれている。
レアルが途切れず魔法力を注ぎ込めば、円状の文字が少しずつ黒から金色へと変化していく。
「この術式が一周廻って全部が金色になれば、それが最適の召喚タイミングってことだよね!」
小川の時は範囲も狭かった。
時空を超えての小川からの召喚は綺麗な水や、綺麗な植物と言った比較的質量の軽いモノが主だったからそんなに召喚時間もかからずスムーズに行けていた。
だが今回は、家をまるごと時空間召喚する。
難易度は、先に比べると桁違いだった。
「ガルルルルルルルルルルァッッ!!」
レアルのすぐ後ろで、獣の声がした。
「そっちに、行かせるわけないじゃないッ!!」
ザンッ!!
「ガォァァァァァァ……ァッ……ォッ……!」
ぼとりと胴体を真っ二つにされた獣の死体がレアルの横に転がった。
レアルの背後を護るようにして剣を持ち直したリリシアが肩で息をしながら言う。
「Bランク魔物筋肉狼。確認出来るのは18頭。だけど、群れの頭が見えないわ。厄介ね。そっちはどう?」
「おかげさまで、順調かも。だけどやっぱりもう少し時間がかかる。頼めるかな、リリシア」
「……任せなさい!」
リリシアの剣には、少しずつ綻びも出始めている。
王宮を飛び出してきて一週間。ろくな手入れも出来ない環境下で鈍り始めた剣の刃は、筋肉狼ほどの堅い筋肉を断ち斬りにくくなっていた。
「だとしても――ッ!」
「ガァァァァァァァッッ!!」
「ここから先は、一歩も通さないんだからッッ!!!」
筋肉狼の突貫を正面から刃で受け止めたリリシア。
メリメリと刃が筋肉にめり込んでいくのを見計らったリリシアは、力尽くで剣を回転させる。
「こんのぉぉぉぉぉぉおおお!!」
筋肉狼の身体が宙を舞い、リリシアは獣の動きに合わせるようにして剣を天に掲げた。
ぐしゃっ。
鈍い音と共にリリシアの剣先に、筋肉狼が突き刺さる。
「まだまだ……やれるんだからね……っ!」
ピク、ピクと小さく痙攣を起こし絶命する同族を見て、群れも思わず尻込みをしていた。
「後、ちょっと……さすがに使う魔法力量も、段違いだね……!?」
『召喚可能係数まで 魔法力量――残:320ファルツ
種:建造物
個体名称:ガルルガ邸宅―現時点より892年前に無人―
召喚源:《***領θ*×α地点》
召喚地点:召喚術師の円状術式上に再構築』
円状術式の周りに現れるデータベースの文字。
解読不能な文字も数カ所あれど、今のレアルにそれを気にする余裕はない。
ツタと埃に塗れた一軒家の周りを、金色の光が包み込む。
円状術式上の文字が光の粒子となっていく。
「よし、全部が繋がった……ッ!」
円状術式上の文字が全て金色に染まる。
『召喚可能係数 規定値を突破
ガルルガ邸宅 時空召喚』
シュンッとデータベースが消えて建物全体が粒子と化した。
その、数秒後だった。
『ガルルガ邸宅 時空召喚成功
召喚術師レベルが1上がりました』
レアルの前に現れたのは、先ほどとは打って変わって綺麗になった一軒家だった。
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