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異世界食材で親子丼!⑥
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ルーナ曰く、龍人族とは顔や手が龍のような形をした種族だという。
この世界には多数の種族が存在する。それは、ルーナのように獣人族であったり、先ほどのような龍人族であったり。その他にも大まかには六種類ほどの種族がいるらしい。
人間との意思疎通が取れる種族が龍人族、取れない種族が龍族。龍の形をし、龍のように大きな体躯がありながら人間とのテレパシー的意思疎通を取ることが出来る個体が上級龍族――などなどなど。
先ほどのアリゾテール龍は下級龍としては一般的に出回っている個体種らしい。
ルーナはピンと耳と尻尾を尖らせて、先ほどの店から少し離れた路地裏でぷるぷる震えていた。
「……おいおい、ルーナ。お前どうしたんだよいきなり」
「だから、言ったじゃないですか……悪魔の肉を食べさせられたって……ッ!」
「いや……なんでそうなる」
「いいですか? 古龍神グラントヘルムを信仰するまでにはいかずとも、龍人族のいる前でグラントヘルムを食すなどという言葉は決して言ってはいけないんですッ!」
「……また、何でだよ」
「龍人族の始祖とも呼ばれているからです。古龍神グラントヘルムは人間との意思疎通が可能な、龍人族に近いような龍族なので……その、何か面倒な取り決めや思惑が龍人族の間にはあるみたいなんです」
ルーナは必死に喉の奥に手を入れて、先ほど食べた鶏肉を吐き出そうとしているがその形相は必死そのものだ。
はぐらかされた気もするけど……まぁ、いいだろう。
「タツヤ様も……早く、吐き出してくださいッ! あの肉は、悪魔の肉なんです……! ゲホッ……」
満身創痍で耳と尻尾を振り振りさせるルーナ。
「龍人族が所有するとされる紅鳥……。紅の鶏冠を持つその鳥は、龍人族にとって『拒絶』を示す食料なんです!」
「……へぇ」
「紅鳥は時に、糞便のみならず頻繁に白い排泄物――通称悪の実を産み出すのです」
……ただの卵じゃん。
「その堅い殻を割れば中から出てくるのは黄色い物体。そして粘ついた透明色の液体……」
……卵黄と、卵白だなぁ。
「龍人族は、咎人に対してそれを食わせるのです……。すると、悪魔が口の中に入り咎人は腹痛と下痢、更には嘔吐で生死を彷徨うと言われる……恐ろしい兵器を産み出すんですよ、紅鳥は!」
「ってそれただの食中毒じゃねぇか!?」
「……はい?」
きょとんと、目を丸くしたルーナは俺の方を見た。が、俺の口は自然と留まるところを知らなかった。
「それ、ただサルモネラ菌かなんかに当たっただけだ! 何故焼かない! 何故目玉焼きにしようとしない! 何故茹でない! ゆで卵に塩をまぶすだけでも美味いんだぞ!? 紅鳥は悪魔の実? 冗談じゃない……ただ卵を産む鶏がいるだけじゃねぇかッ!」
はぁっ……はぁっ……。
う、嘘だろう……!?
ここの鶏はそんな理由で鶏や、卵を罪の道具としているのか……!? だとしたら極めて遺憾だ! あんな美味い物を咎としか使えないなんて!
生卵を食って当たったからと言って、肉もまとめて悪魔の肉とされるなんて……!
「あ、あの……タツヤ……様?」
ルーナが同じくらいプルプルと震えて俺の方を見ている。
そんな悪魔の肉を食わされて顔面蒼白になったルーナに、俺は一言告げる。
「今すぐ持ってきたキッチン一式をあの店の前に持ってきてくれ。俺はあの龍人族と話を付けて悪魔の肉と悪の実を使って飯を作ってやる」
「……い、いきなり何を!? あの実を食べればタツヤ様……死んでしまうかもしれないんですよ!?」
「いいから、持ってこい。アイツ等が……世間が認めないその二つを使って、俺は――親子丼を作ってやるッ!」
「……おやこ……どん?」
ふと、疑問詞を頭に浮かべるルーナ。
だが、俺が飯を作ると分かった瞬間にルーナの耳と尻尾はフルフルと嬉しそうに左右に振れていた。
この世界では悪魔の肉、悪魔の実……か。
いいさ、じゃあ作れば――美味いって分かれば、理解するだろう。鶏肉と卵の美味さを。卵の汎用性を――。
これはそのための第一歩だ。
俺は、夕日の落ちそうな空に向かって手を突き上げた。
作ってやる――。
「異世界食材で親子丼……面白いッ!」
この世界には多数の種族が存在する。それは、ルーナのように獣人族であったり、先ほどのような龍人族であったり。その他にも大まかには六種類ほどの種族がいるらしい。
人間との意思疎通が取れる種族が龍人族、取れない種族が龍族。龍の形をし、龍のように大きな体躯がありながら人間とのテレパシー的意思疎通を取ることが出来る個体が上級龍族――などなどなど。
先ほどのアリゾテール龍は下級龍としては一般的に出回っている個体種らしい。
ルーナはピンと耳と尻尾を尖らせて、先ほどの店から少し離れた路地裏でぷるぷる震えていた。
「……おいおい、ルーナ。お前どうしたんだよいきなり」
「だから、言ったじゃないですか……悪魔の肉を食べさせられたって……ッ!」
「いや……なんでそうなる」
「いいですか? 古龍神グラントヘルムを信仰するまでにはいかずとも、龍人族のいる前でグラントヘルムを食すなどという言葉は決して言ってはいけないんですッ!」
「……また、何でだよ」
「龍人族の始祖とも呼ばれているからです。古龍神グラントヘルムは人間との意思疎通が可能な、龍人族に近いような龍族なので……その、何か面倒な取り決めや思惑が龍人族の間にはあるみたいなんです」
ルーナは必死に喉の奥に手を入れて、先ほど食べた鶏肉を吐き出そうとしているがその形相は必死そのものだ。
はぐらかされた気もするけど……まぁ、いいだろう。
「タツヤ様も……早く、吐き出してくださいッ! あの肉は、悪魔の肉なんです……! ゲホッ……」
満身創痍で耳と尻尾を振り振りさせるルーナ。
「龍人族が所有するとされる紅鳥……。紅の鶏冠を持つその鳥は、龍人族にとって『拒絶』を示す食料なんです!」
「……へぇ」
「紅鳥は時に、糞便のみならず頻繁に白い排泄物――通称悪の実を産み出すのです」
……ただの卵じゃん。
「その堅い殻を割れば中から出てくるのは黄色い物体。そして粘ついた透明色の液体……」
……卵黄と、卵白だなぁ。
「龍人族は、咎人に対してそれを食わせるのです……。すると、悪魔が口の中に入り咎人は腹痛と下痢、更には嘔吐で生死を彷徨うと言われる……恐ろしい兵器を産み出すんですよ、紅鳥は!」
「ってそれただの食中毒じゃねぇか!?」
「……はい?」
きょとんと、目を丸くしたルーナは俺の方を見た。が、俺の口は自然と留まるところを知らなかった。
「それ、ただサルモネラ菌かなんかに当たっただけだ! 何故焼かない! 何故目玉焼きにしようとしない! 何故茹でない! ゆで卵に塩をまぶすだけでも美味いんだぞ!? 紅鳥は悪魔の実? 冗談じゃない……ただ卵を産む鶏がいるだけじゃねぇかッ!」
はぁっ……はぁっ……。
う、嘘だろう……!?
ここの鶏はそんな理由で鶏や、卵を罪の道具としているのか……!? だとしたら極めて遺憾だ! あんな美味い物を咎としか使えないなんて!
生卵を食って当たったからと言って、肉もまとめて悪魔の肉とされるなんて……!
「あ、あの……タツヤ……様?」
ルーナが同じくらいプルプルと震えて俺の方を見ている。
そんな悪魔の肉を食わされて顔面蒼白になったルーナに、俺は一言告げる。
「今すぐ持ってきたキッチン一式をあの店の前に持ってきてくれ。俺はあの龍人族と話を付けて悪魔の肉と悪の実を使って飯を作ってやる」
「……い、いきなり何を!? あの実を食べればタツヤ様……死んでしまうかもしれないんですよ!?」
「いいから、持ってこい。アイツ等が……世間が認めないその二つを使って、俺は――親子丼を作ってやるッ!」
「……おやこ……どん?」
ふと、疑問詞を頭に浮かべるルーナ。
だが、俺が飯を作ると分かった瞬間にルーナの耳と尻尾はフルフルと嬉しそうに左右に振れていた。
この世界では悪魔の肉、悪魔の実……か。
いいさ、じゃあ作れば――美味いって分かれば、理解するだろう。鶏肉と卵の美味さを。卵の汎用性を――。
これはそのための第一歩だ。
俺は、夕日の落ちそうな空に向かって手を突き上げた。
作ってやる――。
「異世界食材で親子丼……面白いッ!」
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