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涙の即席サンドウィッチ②
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つい、ルーナがあまりにも美味そうに食べるものだから、俺も手を出してしまった。
キャベツの瑞々しさ、チーズの香ばしさ、食パンの甘さの全てを堪能するかのように、少し目尻に涙を貯めながら「はみゅ、はみゅ……」と口の中に溶け込んでいくそのサンドウィッチ。
それと同じ皿の上のもう一つは、本来ならばルーナに渡していたのだが、よく考えてみると俺だってラーメン結局食えてないしな。
皿の上から離れたサンドウィッチは、少し重い。
にしても、こんな感じで使ってたらそうそうに材料が切れてしまうだろうな。そろそろ……この世界で何か卵やチーズ、パンなどの代替品が見つかればいいんだが……出来ればチルド食品を所望する。
食パンの断面は、上の方からパンの小麦色、白いマヨネーズとキャベツが織りなす翡翠色、ハムとチーズが融合した黄金色。
なるほど……かぶりつきたくなる。
はむっ。
食パンの耳からがぶりと思いっきり食らいつくつもりが、勢いを吸収され何とも気の抜けた音が響いた。
瞬間、口の中に流れ込んでくる旨味はとても気持ちのいいものだ。
チーズとハム、そしてマヨネーズでしっかりと味付けされたキャベツの瑞々しさが口の中でそれぞれ自己主張するのかと思えば、全ての食材が手を取り合ってお出迎えをしてくれていた。
「……うん、美味い」
流石日本の食品だ。
だが、それだからこそ――日本でも、諸外国のどこでもない。獣人族の存在するまるでファンタジーなこの世界の食事情も気になって、気になって仕方がないのだ。
もしかしたら、自分達よりも進んだ調理器具や調理法が発達しているかもしれない。もしかしたら、その逆もあるかもしれない。
更には素材として極上のものがあるかもしれない。はたまた、食べたら即死してしまうような危険食材が眠っているかもしれない。
俺は、サンドウィッチを食べ終わったらしいルーナを見た。
何故か呆然として、「と、取り乱して……その、すいません」と小さくぺこりとお辞儀する彼女の頭を俺はわしゃわしゃと撫でてやる。
「あれだ……とりあえず俺はこの世界についてあんまり知らないんだ。お前、行く宛がないなら俺と一緒に行くか?」
「……た、タツヤ様と……? よ、よろしいのですか? こんな私が、ご同行させていただいて……」
「あぁ、構わないよ」
何せ、あんな顔をされたらこいつを残してどっかに行くことなんて出来やしないしな。
それに、俺はこの世界のことをほぼ全く知らないんだ。
さっきルーナが言ってたレスタル国なんて国も、俺のいた世界では確かどこにもなかったはずだ。
幸い、コンセントも電気も水も、どこから供給されているかは分からないが、使えることは使えるんだ。
だが、いつ使えなくなるとも分からない。それくらいに分からないことだらけだ。
それに差し当たって、ルーナには言っておかなければならないことがある。
「ただ、ルーナ。俺に着いてきても構わないが……その代り、条件が一つある」
「……はい?」
「二度とさっきのアレは使うな」
「……肉体増幅魔法……ですか?」
「あれを俺の前で二度と使わないと約束してほしい」
「……そ、その……食費が嵩んでしまうから……ということですか?」
「ああ、それも少しはある」
「で、でしたら、旅のご同行中にタツヤ様の身に何らかの危険が生じた場合だけでも……その、かかった食費と食材に関しては私が出来るだけ弁償を――」
「それでもダメだ」
「で、でなければ私は、本当に、本当にただの役に立たない者に――!」
「ああ、その方が俺にとっては助かるぜ。というかルーナのこの世界の知識があるだけでも充分に役に立ってるし、それだけでいい」
俺のその言葉に、ルーナは不服そうにしながらもしぶしぶ頷いてくれた。
先ほどのルーナの態度は、明らかにおかしかった。何か、心奥底のトラウマを蘇らせてしまったかのような、そんなものだ。
あの時に瞬時に見られてよかったのかもしれない。会ってしばらくも経ってはいないが、小さい女の子があんな表情を見せるようになったらおしまいだ。
あの魔法によって空腹が誘発し、更に過去の何らかの出来事に結び付けられてしまうのならば使わないよりもよっぽど楽だ。
「で、とりあえずは……そうだなー……このキッチンをどうするか何だよなぁ……」
俺の後方に置かれたのはキッチンとその他諸々だ。
ふと冷蔵庫を持ちあげようとしても上がらない。まぁ、上がるわけもないんだが。
みれば、キッチンも草原の上に置かれているだけだ。クレーン車か何かで持ち上げようとすれば持ち上がりはするんだろう。
いかんせん、俺にそんなクレーン車張りの力はないんだがな。
「どうしました? タツヤ様」
「ん? いや、俺ももっと力があればなーって……な」
「……この大きな箱のようなものを持ち上げればよろしいのですか?」
「やめとけやめとけ。腰壊す――」
「……えいっ」
ルーナが両手を大きく広げてそのままひょいと冷蔵庫を持ち上げた。
「……はい?」
「えっと、これは傾けない方がいい感じでしょうかね?」
「……い、いや……まぁ、出来れば……な」
驚きを隠せない俺だったが、ルーナは「分かりました」とそのまま冷蔵庫を立たせたまま片手で持ち上げて見せた!
掌の上に置かれたドでかい冷蔵庫!
「お、お前……マジで!?」
「いや……タツヤ様は人間ですから、無理もありませんが。獣人族であればこのくらいの筋力は普通にありますよぅ」
「肉体増幅魔法とか、使ってないよね?」
「えぇ。まぁ、肉体増幅魔法は筋力ではなくスピードと武力の方を底上げする魔法なので、これは単なる筋力問題です。まぁ、ドラゴン狩りの荷物運びとして雇われることも多いんですよ、獣人族は」
ズズンと冷蔵庫を再び草原の上に置きなおしたルーナを見て、俺は言葉が出なかった。
出るとしたら――。
「あ、の……旅の方に、ご同行させていただけませんか……? その、ご飯は俺が作りますので……あ、はい。その、あと逆らいませんので、ダイジョブですか?」
俺はこの子に何らかの形で殴られた場合、瞬殺されてしまうだろう――。
キャベツの瑞々しさ、チーズの香ばしさ、食パンの甘さの全てを堪能するかのように、少し目尻に涙を貯めながら「はみゅ、はみゅ……」と口の中に溶け込んでいくそのサンドウィッチ。
それと同じ皿の上のもう一つは、本来ならばルーナに渡していたのだが、よく考えてみると俺だってラーメン結局食えてないしな。
皿の上から離れたサンドウィッチは、少し重い。
にしても、こんな感じで使ってたらそうそうに材料が切れてしまうだろうな。そろそろ……この世界で何か卵やチーズ、パンなどの代替品が見つかればいいんだが……出来ればチルド食品を所望する。
食パンの断面は、上の方からパンの小麦色、白いマヨネーズとキャベツが織りなす翡翠色、ハムとチーズが融合した黄金色。
なるほど……かぶりつきたくなる。
はむっ。
食パンの耳からがぶりと思いっきり食らいつくつもりが、勢いを吸収され何とも気の抜けた音が響いた。
瞬間、口の中に流れ込んでくる旨味はとても気持ちのいいものだ。
チーズとハム、そしてマヨネーズでしっかりと味付けされたキャベツの瑞々しさが口の中でそれぞれ自己主張するのかと思えば、全ての食材が手を取り合ってお出迎えをしてくれていた。
「……うん、美味い」
流石日本の食品だ。
だが、それだからこそ――日本でも、諸外国のどこでもない。獣人族の存在するまるでファンタジーなこの世界の食事情も気になって、気になって仕方がないのだ。
もしかしたら、自分達よりも進んだ調理器具や調理法が発達しているかもしれない。もしかしたら、その逆もあるかもしれない。
更には素材として極上のものがあるかもしれない。はたまた、食べたら即死してしまうような危険食材が眠っているかもしれない。
俺は、サンドウィッチを食べ終わったらしいルーナを見た。
何故か呆然として、「と、取り乱して……その、すいません」と小さくぺこりとお辞儀する彼女の頭を俺はわしゃわしゃと撫でてやる。
「あれだ……とりあえず俺はこの世界についてあんまり知らないんだ。お前、行く宛がないなら俺と一緒に行くか?」
「……た、タツヤ様と……? よ、よろしいのですか? こんな私が、ご同行させていただいて……」
「あぁ、構わないよ」
何せ、あんな顔をされたらこいつを残してどっかに行くことなんて出来やしないしな。
それに、俺はこの世界のことをほぼ全く知らないんだ。
さっきルーナが言ってたレスタル国なんて国も、俺のいた世界では確かどこにもなかったはずだ。
幸い、コンセントも電気も水も、どこから供給されているかは分からないが、使えることは使えるんだ。
だが、いつ使えなくなるとも分からない。それくらいに分からないことだらけだ。
それに差し当たって、ルーナには言っておかなければならないことがある。
「ただ、ルーナ。俺に着いてきても構わないが……その代り、条件が一つある」
「……はい?」
「二度とさっきのアレは使うな」
「……肉体増幅魔法……ですか?」
「あれを俺の前で二度と使わないと約束してほしい」
「……そ、その……食費が嵩んでしまうから……ということですか?」
「ああ、それも少しはある」
「で、でしたら、旅のご同行中にタツヤ様の身に何らかの危険が生じた場合だけでも……その、かかった食費と食材に関しては私が出来るだけ弁償を――」
「それでもダメだ」
「で、でなければ私は、本当に、本当にただの役に立たない者に――!」
「ああ、その方が俺にとっては助かるぜ。というかルーナのこの世界の知識があるだけでも充分に役に立ってるし、それだけでいい」
俺のその言葉に、ルーナは不服そうにしながらもしぶしぶ頷いてくれた。
先ほどのルーナの態度は、明らかにおかしかった。何か、心奥底のトラウマを蘇らせてしまったかのような、そんなものだ。
あの時に瞬時に見られてよかったのかもしれない。会ってしばらくも経ってはいないが、小さい女の子があんな表情を見せるようになったらおしまいだ。
あの魔法によって空腹が誘発し、更に過去の何らかの出来事に結び付けられてしまうのならば使わないよりもよっぽど楽だ。
「で、とりあえずは……そうだなー……このキッチンをどうするか何だよなぁ……」
俺の後方に置かれたのはキッチンとその他諸々だ。
ふと冷蔵庫を持ちあげようとしても上がらない。まぁ、上がるわけもないんだが。
みれば、キッチンも草原の上に置かれているだけだ。クレーン車か何かで持ち上げようとすれば持ち上がりはするんだろう。
いかんせん、俺にそんなクレーン車張りの力はないんだがな。
「どうしました? タツヤ様」
「ん? いや、俺ももっと力があればなーって……な」
「……この大きな箱のようなものを持ち上げればよろしいのですか?」
「やめとけやめとけ。腰壊す――」
「……えいっ」
ルーナが両手を大きく広げてそのままひょいと冷蔵庫を持ち上げた。
「……はい?」
「えっと、これは傾けない方がいい感じでしょうかね?」
「……い、いや……まぁ、出来れば……な」
驚きを隠せない俺だったが、ルーナは「分かりました」とそのまま冷蔵庫を立たせたまま片手で持ち上げて見せた!
掌の上に置かれたドでかい冷蔵庫!
「お、お前……マジで!?」
「いや……タツヤ様は人間ですから、無理もありませんが。獣人族であればこのくらいの筋力は普通にありますよぅ」
「肉体増幅魔法とか、使ってないよね?」
「えぇ。まぁ、肉体増幅魔法は筋力ではなくスピードと武力の方を底上げする魔法なので、これは単なる筋力問題です。まぁ、ドラゴン狩りの荷物運びとして雇われることも多いんですよ、獣人族は」
ズズンと冷蔵庫を再び草原の上に置きなおしたルーナを見て、俺は言葉が出なかった。
出るとしたら――。
「あ、の……旅の方に、ご同行させていただけませんか……? その、ご飯は俺が作りますので……あ、はい。その、あと逆らいませんので、ダイジョブですか?」
俺はこの子に何らかの形で殴られた場合、瞬殺されてしまうだろう――。
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