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宴の時間
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ぼくとフェウは、一時的にクレア・シュネーヴルさんの傘下に入ることになった。とはいえ――。
「っしゃおらぁ! レアルとフェウの歓迎会だァァ! 今日はわたしの奢りだぞてめーら! 好き放題飲んで食って喚いてけェェェ!!」
「ありがとうございまっす姉貴ィィィィィ!!」
「ウメェェ! 肉が、肉がウメェよぉぉぉぉぉ!!」
「酒だ! クレア様にじゃんじゃか酒をお注ぎするんだぁぁぁ!!」
「ささ、ささ、レアルさんも、レアルさんもどんどんお召し上がりください! 発泡酒《エール》は飲めますかい?」
「ぼ、ぼく一応未成年なんで、お酒は……」
「なんと!? そうでしたかこれは失礼なことを! おい! 特級の葡萄ジュースをお注ぎしろォ!」
「へいただいまァ!!」
続々とテーブルの上に置かれていく豪勢な料理たち。
ガルラット森林付近で取れる白角兎のお肉もあれば、川沿いのブムーヴ地方で取れる美味旗魚、果ては国外聖地林産のリンゴの葡萄漬けなどなどご当地名産品もずらりと並ぶ。
ぼくが把握出来るのがそれくらいってことだけで、ぼくが見たこともない食材素材だらけだ。
ほとんど無理矢理長テーブルの上座に追いやられたぼくとフェウ、そして骨付き肉にむしゃむしゃとかぶりつくクレアさん。
周りを取り囲む屈強な冒険者たちがクレアさんの肩を大切そうに揉んでいた。
「はむっ、はむっ、はむ……くぅ」
「おいいいかてめーら、フェウは今からわたし等の中の大切な仲間だからな。碌でもないことしてみろ、まずてめーらの首が飛ぶからな。とりあえず、フェウの食事を邪魔でもしてみろ。足が一本消えて帰ることになると思え」
『――承知しましたッ! クレアの姐さん!』
机の端っこの方で、小さな皿に乗ったモチャノコチキンをはぐはぐと噛んでいるフェウは、凄く満足そうだった。
そういえばガルラット森林からここに至るまで、フェウには何も食べさせてあげられなかったからか食いつきもかなりのものだ。よっぽどお腹が空いていたんだろう。
尻尾をふりふり振って、口の周りをモチャノコチキンのタレでべちょべちょにしながら無我夢中で食べるフェウを、クレアさんはじっと見つめていた。
その表情は、どこか我が子をも眺めるような、そんな慈悲深い表情だ。
「……ポウ吉が生きていれば、な」
寂しそうな声だった。
机の上で頬杖をつきながら言うクレアさん。
呟いたことをかき消すかのように一升瓶を一気に煽ったクレアさんの頬に一筋の涙が伝った。
「クレアさん――」
「――っとぉ! レアルさぁん! 食ってますか飲んでますか!? 姉御ー! 早く姉御も食っちまわねぇと、残り全部飯持ってかれますぜー! ほれ、アデライドももう悲鳴上げてますよ!」
「グレアざあぁぁん! もう食材ないでずよぉぉ! ふぇぇぇえええ!!」
「……何で受付嬢が職務放棄して酒かっ喰らってんだ……?」
冒険者たちの宴を見たクレアさんは、「ははは」と笑うふりをして、ゴシゴシとがさつに頬に付いた水滴を振り払った。
「こうなりゃ、とことん付き合ってもらうからなァァァァ!!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
地方とは段違いの温度と段違いの料理、お酒の数々で埋め尽くされて一瞬にして宴会場となった冒険者ギルド『アスカロン』。
皆の宴は、最後の一人が酔い潰れる深夜まで続いたのだった。
「っしゃおらぁ! レアルとフェウの歓迎会だァァ! 今日はわたしの奢りだぞてめーら! 好き放題飲んで食って喚いてけェェェ!!」
「ありがとうございまっす姉貴ィィィィィ!!」
「ウメェェ! 肉が、肉がウメェよぉぉぉぉぉ!!」
「酒だ! クレア様にじゃんじゃか酒をお注ぎするんだぁぁぁ!!」
「ささ、ささ、レアルさんも、レアルさんもどんどんお召し上がりください! 発泡酒《エール》は飲めますかい?」
「ぼ、ぼく一応未成年なんで、お酒は……」
「なんと!? そうでしたかこれは失礼なことを! おい! 特級の葡萄ジュースをお注ぎしろォ!」
「へいただいまァ!!」
続々とテーブルの上に置かれていく豪勢な料理たち。
ガルラット森林付近で取れる白角兎のお肉もあれば、川沿いのブムーヴ地方で取れる美味旗魚、果ては国外聖地林産のリンゴの葡萄漬けなどなどご当地名産品もずらりと並ぶ。
ぼくが把握出来るのがそれくらいってことだけで、ぼくが見たこともない食材素材だらけだ。
ほとんど無理矢理長テーブルの上座に追いやられたぼくとフェウ、そして骨付き肉にむしゃむしゃとかぶりつくクレアさん。
周りを取り囲む屈強な冒険者たちがクレアさんの肩を大切そうに揉んでいた。
「はむっ、はむっ、はむ……くぅ」
「おいいいかてめーら、フェウは今からわたし等の中の大切な仲間だからな。碌でもないことしてみろ、まずてめーらの首が飛ぶからな。とりあえず、フェウの食事を邪魔でもしてみろ。足が一本消えて帰ることになると思え」
『――承知しましたッ! クレアの姐さん!』
机の端っこの方で、小さな皿に乗ったモチャノコチキンをはぐはぐと噛んでいるフェウは、凄く満足そうだった。
そういえばガルラット森林からここに至るまで、フェウには何も食べさせてあげられなかったからか食いつきもかなりのものだ。よっぽどお腹が空いていたんだろう。
尻尾をふりふり振って、口の周りをモチャノコチキンのタレでべちょべちょにしながら無我夢中で食べるフェウを、クレアさんはじっと見つめていた。
その表情は、どこか我が子をも眺めるような、そんな慈悲深い表情だ。
「……ポウ吉が生きていれば、な」
寂しそうな声だった。
机の上で頬杖をつきながら言うクレアさん。
呟いたことをかき消すかのように一升瓶を一気に煽ったクレアさんの頬に一筋の涙が伝った。
「クレアさん――」
「――っとぉ! レアルさぁん! 食ってますか飲んでますか!? 姉御ー! 早く姉御も食っちまわねぇと、残り全部飯持ってかれますぜー! ほれ、アデライドももう悲鳴上げてますよ!」
「グレアざあぁぁん! もう食材ないでずよぉぉ! ふぇぇぇえええ!!」
「……何で受付嬢が職務放棄して酒かっ喰らってんだ……?」
冒険者たちの宴を見たクレアさんは、「ははは」と笑うふりをして、ゴシゴシとがさつに頬に付いた水滴を振り払った。
「こうなりゃ、とことん付き合ってもらうからなァァァァ!!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
地方とは段違いの温度と段違いの料理、お酒の数々で埋め尽くされて一瞬にして宴会場となった冒険者ギルド『アスカロン』。
皆の宴は、最後の一人が酔い潰れる深夜まで続いたのだった。
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