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第26話 次代の勇者、パーティーを追放される。
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夜の大円森林ヴァステラでは、一つの冒険者パーティーがククレ城塞へ向けて敗走している。
B級冒険者パーティー『クロセナール』。
リーダーの《魔剣士》リュークを筆頭にここ数年で頭角を現し始め、次々に戦果を挙げ続ける新進気鋭のパーティーである。
「はぁ……っ、はぁ……っ! クソ……っ!! なんなんだよこいつらはッ! 上級水属性魔法水圧砲ッ!!」
そんなリュークが、闇夜に向けて魔法を放つ。
空気中の水を一気に押し出して魔獣へとぶつける。
「ゲキョッ。――ゴックン」
――だが放たれた魔法はダメージ一つ負わせられることもなく、いとも簡単に魔獣の中に取り込まれていく。
代わりに闇夜の中の魔獣が魔法を放てば、地面が一瞬にして腐っていく。
威力としてはA級魔獣の放つそれと同等だ。
リュークの隣を並走するのは、赤縁眼鏡の少女――《鑑定師兼回復術師》のキャルル。
「C級魔獣魔喰蛇。同じくC級魔獣魔猪、のはずなのですが……妙ですね」
「そんなことは分かってる! 魔喰蛇も魔猪も今まで何回も倒してきたはずだ! でも魔法攻撃も一切通らないし、そもそも奴等が放ってるアレはなんだ!? 本当にC級レベルが放つ魔法かよ!?」
そう言ってリュークが指さすのは、二つの魔獣の身体から立ち込める黒い霧。
キャルルはカチャリと眼鏡越しに追って来る敵を見やる。
「解析した所、魔力の集合体と言ったところでしょう。どうもC級魔獣が操れる魔力量を大幅に超越しているようですが」
「あんな黒いオーラはどう考えても魔獣の出すモンじゃない! 絶対に触れるなよ!」
リュークの背後で魔法攻撃を続ける双子の《魔術師》、ソララとルララの表情は魔力枯渇で表情はもう青くなり始めている。
「ソララの魔法もルララの魔法も全然攻撃通らないのー!」
「リューク、このままじゃ追いつかれちゃうよー! 死んじゃうよー!」
彼女たちの魔法は、合わさればククレ城塞の中でも随一の強さを発揮してきた。
そんな二人でさえも泣き言を漏らすということは、後ろの二体の魔獣の異常さを物語っていた。
「功を急ぎ過ぎて夜の森に出てきたのが運の尽きでしょうね。このまま皆で死んでいくのも何かの定めなのかもしれません。そもそもジンの忠告を――」
「――いや、まだだ」
キャルルの嘆きにリュークは首を振った。
そこに、最後尾から息を切らせた少年が提案を投げかけてくる。
「……ッ! ハァッ! ハァッ! リューク、城塞に戻るなら向こうの方が魔獣は少ないよ! このまま真っすぐ進んでもジリ貧だ、この獣道を伝えば奴等も追っては来れない!」
《魔剣士》リューク、《鑑定士兼回復術師》キャルル、《魔法術師》ソララ、ルララ、そして今まさに殿を走っている荷物持ち、ジン。
クロセナールの野営荷物を管理するだけの役立たずだ。
同じ故郷の出身であり、皆がメキメキと実力を伸ばし続ける中でジンはたった一人、何も変わらなかった。
「俺たちには長年抱えた不良債権がある。荷物は減るが、買い直せば事足りるだろう」
「ジンを!? 待ってください、彼は――!」
「なんならお前が殿になってくれてもいいんだぜ、キャルル!」
「……ッ!」
「そういうことだ。じゃ、決定だな」
このご時世に魔法一つも使えない冒険者の存在は、クロセナールが足踏みしている原因の一つだ。
ヒトは5歳の時に魔法が使えるようになり、20歳で魔法力の成長ピークを迎えるとされる。
そんな中でジンはいつまで経っても魔法は使えるようにならなかった。
正直、パーティーで面倒を見るのも限界の時期だった。
そんなジンに指図される筋合いなど断じてない。
「魔法の一つも使えないような奴が何を偉そうに! もっと簡単な方法がある。最後くらい役立ってみせろよな、ジン。こんなことに魔道具なんざ使いたくないが……! 上級水・土混合属性魔法、ぬかるむ大地!」
リュークの水属性魔法と魔石の土属性魔法を組み合わせて魔法を放つ。
それを、自身の2倍ほどの荷物を運びながら走る荷物持ち、ジンの地面に向けて。
「――りゅ、リュークッ! 何を!?」
急に現れたぬかるんだ大地に足を取られたジンは、荷物と共に成すすべもなく大地に転がった。
「ソララッ! ルララッ! 役立たずが足止めしてる間に抜けてこい! 魔法はもういい、全速力で退却だ!!」
「わ、分かったの!」
「うぇーん、もうおうち帰るよー!!」
魔獣たちの魔法攻撃が、一気にジンへと移っていく。
ゾワッとするほどに浴びていた魔力のプレッシャーも全てジンが請け負ってくれるようになった。
「……こりゃまた備品は買い直しだな」
リュークは小さく溜息をつくも、再度合流したソララ、ルララと共にククレ城塞へ向けて一直線に走り抜けていった。
B級冒険者パーティー『クロセナール』。
リーダーの《魔剣士》リュークを筆頭にここ数年で頭角を現し始め、次々に戦果を挙げ続ける新進気鋭のパーティーである。
「はぁ……っ、はぁ……っ! クソ……っ!! なんなんだよこいつらはッ! 上級水属性魔法水圧砲ッ!!」
そんなリュークが、闇夜に向けて魔法を放つ。
空気中の水を一気に押し出して魔獣へとぶつける。
「ゲキョッ。――ゴックン」
――だが放たれた魔法はダメージ一つ負わせられることもなく、いとも簡単に魔獣の中に取り込まれていく。
代わりに闇夜の中の魔獣が魔法を放てば、地面が一瞬にして腐っていく。
威力としてはA級魔獣の放つそれと同等だ。
リュークの隣を並走するのは、赤縁眼鏡の少女――《鑑定師兼回復術師》のキャルル。
「C級魔獣魔喰蛇。同じくC級魔獣魔猪、のはずなのですが……妙ですね」
「そんなことは分かってる! 魔喰蛇も魔猪も今まで何回も倒してきたはずだ! でも魔法攻撃も一切通らないし、そもそも奴等が放ってるアレはなんだ!? 本当にC級レベルが放つ魔法かよ!?」
そう言ってリュークが指さすのは、二つの魔獣の身体から立ち込める黒い霧。
キャルルはカチャリと眼鏡越しに追って来る敵を見やる。
「解析した所、魔力の集合体と言ったところでしょう。どうもC級魔獣が操れる魔力量を大幅に超越しているようですが」
「あんな黒いオーラはどう考えても魔獣の出すモンじゃない! 絶対に触れるなよ!」
リュークの背後で魔法攻撃を続ける双子の《魔術師》、ソララとルララの表情は魔力枯渇で表情はもう青くなり始めている。
「ソララの魔法もルララの魔法も全然攻撃通らないのー!」
「リューク、このままじゃ追いつかれちゃうよー! 死んじゃうよー!」
彼女たちの魔法は、合わさればククレ城塞の中でも随一の強さを発揮してきた。
そんな二人でさえも泣き言を漏らすということは、後ろの二体の魔獣の異常さを物語っていた。
「功を急ぎ過ぎて夜の森に出てきたのが運の尽きでしょうね。このまま皆で死んでいくのも何かの定めなのかもしれません。そもそもジンの忠告を――」
「――いや、まだだ」
キャルルの嘆きにリュークは首を振った。
そこに、最後尾から息を切らせた少年が提案を投げかけてくる。
「……ッ! ハァッ! ハァッ! リューク、城塞に戻るなら向こうの方が魔獣は少ないよ! このまま真っすぐ進んでもジリ貧だ、この獣道を伝えば奴等も追っては来れない!」
《魔剣士》リューク、《鑑定士兼回復術師》キャルル、《魔法術師》ソララ、ルララ、そして今まさに殿を走っている荷物持ち、ジン。
クロセナールの野営荷物を管理するだけの役立たずだ。
同じ故郷の出身であり、皆がメキメキと実力を伸ばし続ける中でジンはたった一人、何も変わらなかった。
「俺たちには長年抱えた不良債権がある。荷物は減るが、買い直せば事足りるだろう」
「ジンを!? 待ってください、彼は――!」
「なんならお前が殿になってくれてもいいんだぜ、キャルル!」
「……ッ!」
「そういうことだ。じゃ、決定だな」
このご時世に魔法一つも使えない冒険者の存在は、クロセナールが足踏みしている原因の一つだ。
ヒトは5歳の時に魔法が使えるようになり、20歳で魔法力の成長ピークを迎えるとされる。
そんな中でジンはいつまで経っても魔法は使えるようにならなかった。
正直、パーティーで面倒を見るのも限界の時期だった。
そんなジンに指図される筋合いなど断じてない。
「魔法の一つも使えないような奴が何を偉そうに! もっと簡単な方法がある。最後くらい役立ってみせろよな、ジン。こんなことに魔道具なんざ使いたくないが……! 上級水・土混合属性魔法、ぬかるむ大地!」
リュークの水属性魔法と魔石の土属性魔法を組み合わせて魔法を放つ。
それを、自身の2倍ほどの荷物を運びながら走る荷物持ち、ジンの地面に向けて。
「――りゅ、リュークッ! 何を!?」
急に現れたぬかるんだ大地に足を取られたジンは、荷物と共に成すすべもなく大地に転がった。
「ソララッ! ルララッ! 役立たずが足止めしてる間に抜けてこい! 魔法はもういい、全速力で退却だ!!」
「わ、分かったの!」
「うぇーん、もうおうち帰るよー!!」
魔獣たちの魔法攻撃が、一気にジンへと移っていく。
ゾワッとするほどに浴びていた魔力のプレッシャーも全てジンが請け負ってくれるようになった。
「……こりゃまた備品は買い直しだな」
リュークは小さく溜息をつくも、再度合流したソララ、ルララと共にククレ城塞へ向けて一直線に走り抜けていった。
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