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第4話 転生エルフ(93)、気付けば63年間ひたすら籠もって修行していた。
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エルフ族の生息区域であるユグドラシルの古代樹は、区域中央にある神木を中心として居住区全体が不可視の結界に包まれている。
食べ物と日当たりは非常に良好。そして災害も、危険極まりない魔獣もほとんどない。
エルフ族が1000年もの間外に出ずにここで生まれ、育ち、寿命を全うして死んでいくには環境としては充分すぎるものがある。
加えて外部からは一切感知が不可能なその結界により、エルフ族は独自の生活圏を保ち続けられるのだ。
そんなユグドラシルの古代樹の最も外れに存在する大型書庫こそ、通称『森の図書館』と呼ばれるエルフ族の叡智が詰まった場所だ。
ちなみに最近は俺の住処にもなっている。
『今やエルフの中に魔法を使う者はそうおりませぬ。そして森の図書館を使う者は今やリースのみになりましてな。魔道の研究・解読に励むのならば、もうここの鍵はワシが持っておる必要もありませぬ。好きに使って良いですぞ』
そう言って全属性魔法を習得した30歳の頃に族長は、森の図書館の管理を一任してくれた。
当初は数万冊しかなかったが、数少ない外の世界との繋がりから魔道書を手に入れ続けてはや数十年。
回復魔法についての魔道書が5438冊。
火・土・水・風の四大元素魔法についての魔道書が6029冊。
その他特殊魔法・古代魔術などについての魔道書が18048冊。
と、数十年でこんなにも魔道書と使える魔法が増えていった。
そこから今日はさらに魔道書が外からやってくる大切な一日だ。
空を見上げぼーっとしていると、森に入る手前でドデカい馬車がこちらにやってくる者がいる。
ひょろっとした体つきに、清廉な服装をしているその姿は一端の貴族の雰囲気が漂っている。
この前来た時は領主仕事が相当忙しかったのだろう。ヒゲは生えっぱなしだったが今日は綺麗に整えられている。
「あ、来た来た、グリレットさんだ」
そのヒトの名前はグリレット・ガルランダ。エルフ族が代々懇意にしている唯一のヒト族、ガルランダ家の現当主だ。
このガルランダ家はここら一帯の土地を治めている辺境の領主様らしく、ここの祖先と族長の間で固い絆が結ばれているのだとか。
グリレットさんは結界のせいで位置が把握できていないようで、こちらの方角を見ては首を傾げている。
森の図書館から唯一結界外に出られる通路を使い、グリレットさんの前に顔を出す。
「やっほ、グリレットさん。久しぶりだね。いつも通り、交換用に古代樹産の木材は充分量用意させてもらったよ。今回はどんな魔道書を持ってきてくれたんだい?」
声を掛けると、ビクッと肩を震わせるグリレットさん。
「ほ、本当に、エルフ族が存在したなんて……! 父様の言ってた通りだ!?」
「? 父様?」
「は、初めまして!」
そう言うと、グリレットさん(?)は妙に仰々しい様子で俺の前に片膝をついた。
おかしい。グリレットさんはもっとガサツな人だったはずなのに。
「初めてお目にかかります、リース様。グリレット・ガルランダが嫡男、ガリウス・ガルランダと言います。幼少の頃から父、グリレットからエルフ族の方々のお話はよく聞かせていただいていました!」
「嫡男?」
グリレットさんが、父?
いや、それはおかしい。だって――
『いやぁ、俺ぁ今度幼馴染みにプロポーズするんスよ!』
『いいね、じゃ次来るときは夫婦揃って魔道書持って来てくれるのかな?』
『旦那、気が早いっスよ。でもそうだなぁ。旦那にも神がかって可愛いウチの幼馴染みに会わせてやりてェっスね』
『グリレットさんがそこまでベタ惚れな人なら、是非会ってみたいね』
なんて話をしたばっかりだったはずだ。
あれは確か数年前……だったかな?
「本来ならば父が駆けつけるべき所、寄る年波には敵わずに足腰を弱めてしまったために長男である私が代わりにやってきたこと、お許し下さい」
「ちなみにグリレ……ガリウスくん。お父上が最後にここにやってきたの、いつだっけ?」
「はい。私が産まれる前――そして父と母が結婚をする2年ほど前ですので、22年前になります」
「22年前」
たった数年のつもりが、いつの間にかあれから22年も時が経ってたらしい。
これは俺も他のエルフ族がどうのこうの言ってられる場合じゃないかもしれない。
「ですのでその分、魔道書は豊富に取りそろえて来ました! リース様のためにと、世界中から取り寄せた最新のものから、誰にも読めずガラクタ同然で売られている魔道書まで何でもありますので、お気に召していただけるかと!」
屈託の無い笑顔を向けてくれるガリウスくん。
「そ、そっか、ありがとう……!」
あっと言う間の63年じゃなかったんだ。
――気がついたら、63年経っていたのか……!
食べ物と日当たりは非常に良好。そして災害も、危険極まりない魔獣もほとんどない。
エルフ族が1000年もの間外に出ずにここで生まれ、育ち、寿命を全うして死んでいくには環境としては充分すぎるものがある。
加えて外部からは一切感知が不可能なその結界により、エルフ族は独自の生活圏を保ち続けられるのだ。
そんなユグドラシルの古代樹の最も外れに存在する大型書庫こそ、通称『森の図書館』と呼ばれるエルフ族の叡智が詰まった場所だ。
ちなみに最近は俺の住処にもなっている。
『今やエルフの中に魔法を使う者はそうおりませぬ。そして森の図書館を使う者は今やリースのみになりましてな。魔道の研究・解読に励むのならば、もうここの鍵はワシが持っておる必要もありませぬ。好きに使って良いですぞ』
そう言って全属性魔法を習得した30歳の頃に族長は、森の図書館の管理を一任してくれた。
当初は数万冊しかなかったが、数少ない外の世界との繋がりから魔道書を手に入れ続けてはや数十年。
回復魔法についての魔道書が5438冊。
火・土・水・風の四大元素魔法についての魔道書が6029冊。
その他特殊魔法・古代魔術などについての魔道書が18048冊。
と、数十年でこんなにも魔道書と使える魔法が増えていった。
そこから今日はさらに魔道書が外からやってくる大切な一日だ。
空を見上げぼーっとしていると、森に入る手前でドデカい馬車がこちらにやってくる者がいる。
ひょろっとした体つきに、清廉な服装をしているその姿は一端の貴族の雰囲気が漂っている。
この前来た時は領主仕事が相当忙しかったのだろう。ヒゲは生えっぱなしだったが今日は綺麗に整えられている。
「あ、来た来た、グリレットさんだ」
そのヒトの名前はグリレット・ガルランダ。エルフ族が代々懇意にしている唯一のヒト族、ガルランダ家の現当主だ。
このガルランダ家はここら一帯の土地を治めている辺境の領主様らしく、ここの祖先と族長の間で固い絆が結ばれているのだとか。
グリレットさんは結界のせいで位置が把握できていないようで、こちらの方角を見ては首を傾げている。
森の図書館から唯一結界外に出られる通路を使い、グリレットさんの前に顔を出す。
「やっほ、グリレットさん。久しぶりだね。いつも通り、交換用に古代樹産の木材は充分量用意させてもらったよ。今回はどんな魔道書を持ってきてくれたんだい?」
声を掛けると、ビクッと肩を震わせるグリレットさん。
「ほ、本当に、エルフ族が存在したなんて……! 父様の言ってた通りだ!?」
「? 父様?」
「は、初めまして!」
そう言うと、グリレットさん(?)は妙に仰々しい様子で俺の前に片膝をついた。
おかしい。グリレットさんはもっとガサツな人だったはずなのに。
「初めてお目にかかります、リース様。グリレット・ガルランダが嫡男、ガリウス・ガルランダと言います。幼少の頃から父、グリレットからエルフ族の方々のお話はよく聞かせていただいていました!」
「嫡男?」
グリレットさんが、父?
いや、それはおかしい。だって――
『いやぁ、俺ぁ今度幼馴染みにプロポーズするんスよ!』
『いいね、じゃ次来るときは夫婦揃って魔道書持って来てくれるのかな?』
『旦那、気が早いっスよ。でもそうだなぁ。旦那にも神がかって可愛いウチの幼馴染みに会わせてやりてェっスね』
『グリレットさんがそこまでベタ惚れな人なら、是非会ってみたいね』
なんて話をしたばっかりだったはずだ。
あれは確か数年前……だったかな?
「本来ならば父が駆けつけるべき所、寄る年波には敵わずに足腰を弱めてしまったために長男である私が代わりにやってきたこと、お許し下さい」
「ちなみにグリレ……ガリウスくん。お父上が最後にここにやってきたの、いつだっけ?」
「はい。私が産まれる前――そして父と母が結婚をする2年ほど前ですので、22年前になります」
「22年前」
たった数年のつもりが、いつの間にかあれから22年も時が経ってたらしい。
これは俺も他のエルフ族がどうのこうの言ってられる場合じゃないかもしれない。
「ですのでその分、魔道書は豊富に取りそろえて来ました! リース様のためにと、世界中から取り寄せた最新のものから、誰にも読めずガラクタ同然で売られている魔道書まで何でもありますので、お気に召していただけるかと!」
屈託の無い笑顔を向けてくれるガリウスくん。
「そ、そっか、ありがとう……!」
あっと言う間の63年じゃなかったんだ。
――気がついたら、63年経っていたのか……!
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