51 / 62
再開(リュカ視点)
⑤
しおりを挟む
僕に縋るようにお願いってもう一度言ったアデレードの背後にユリウス様も来て、彼の両肩に手を添えると、私からもお願いしたいのって微笑みかけられた。
僕はそんな2人を見つめながら、お気持ちは分かりましたって返事をした。今の僕にはそう答える他選択肢が無いから。
「アデルバード様は納得されないと思うんです……」
僕の言葉を聞いて、アデレードが少しだけ目を伏せた後に、その伏せられた瞳がぎゅっと固く閉じられた。
その仕草がまるで祈っているようだと思った。
それからゆっくりと開かれた瞳には何かを決心した様な色が浮かんでいる気がした。
「リュカ……僕はずっとリュカに会いたいと思ってた。あの時のことを謝りたい気持ちも勿論あったけれど、リュカが僕に一番星を見つけろと教えてくれたからユーリに会うことが出来たって伝えたかったんだ」
「……そうなんだね……」
「愛する人との間に出来た可愛い我が子には幸せになって欲しいと願ってしまうのは、高貴な方でも罪人でも同じなんだ……。子供は親を選べないから」
僕にもその気持ちが痛い程に分かる。そして同時に過去を悔いて雁字搦めになっているアデレードのことを、もう許してあげなければいけないと思った。
「アデレード兄さん」
最後に彼とお別れした時、彼のことを兄と呼ぶのはあの日が最後だと思っていた。
けれど、今この瞬間僕は彼を再び兄と呼ぼうって自然と思えたんだ。
きっとこれは子供達が繋いでくれた縁で、僕達の関係をやり直す最後のチャンスの様な気もする。
「僕は貴方を許します」
「……リュカ……」
「だから、子供達が笑っていられるように協力しよう」
僕はそう言って彼の目の前に手を差し出した。
それをアデレードがじっと見つめる。
「……本当に何も変わらないんだな。お人好しで、甘ちゃんで……、眩しいくらい真っ直ぐなやつ……」
そう呟きながらアデレードがくすりと笑って僕の手をそっと自分の手で握り返してくれた。
その手の温かさは昔、彼と手を繋いだ時よりも少しだけ冷たい気がした。
僕はそんな2人を見つめながら、お気持ちは分かりましたって返事をした。今の僕にはそう答える他選択肢が無いから。
「アデルバード様は納得されないと思うんです……」
僕の言葉を聞いて、アデレードが少しだけ目を伏せた後に、その伏せられた瞳がぎゅっと固く閉じられた。
その仕草がまるで祈っているようだと思った。
それからゆっくりと開かれた瞳には何かを決心した様な色が浮かんでいる気がした。
「リュカ……僕はずっとリュカに会いたいと思ってた。あの時のことを謝りたい気持ちも勿論あったけれど、リュカが僕に一番星を見つけろと教えてくれたからユーリに会うことが出来たって伝えたかったんだ」
「……そうなんだね……」
「愛する人との間に出来た可愛い我が子には幸せになって欲しいと願ってしまうのは、高貴な方でも罪人でも同じなんだ……。子供は親を選べないから」
僕にもその気持ちが痛い程に分かる。そして同時に過去を悔いて雁字搦めになっているアデレードのことを、もう許してあげなければいけないと思った。
「アデレード兄さん」
最後に彼とお別れした時、彼のことを兄と呼ぶのはあの日が最後だと思っていた。
けれど、今この瞬間僕は彼を再び兄と呼ぼうって自然と思えたんだ。
きっとこれは子供達が繋いでくれた縁で、僕達の関係をやり直す最後のチャンスの様な気もする。
「僕は貴方を許します」
「……リュカ……」
「だから、子供達が笑っていられるように協力しよう」
僕はそう言って彼の目の前に手を差し出した。
それをアデレードがじっと見つめる。
「……本当に何も変わらないんだな。お人好しで、甘ちゃんで……、眩しいくらい真っ直ぐなやつ……」
そう呟きながらアデレードがくすりと笑って僕の手をそっと自分の手で握り返してくれた。
その手の温かさは昔、彼と手を繋いだ時よりも少しだけ冷たい気がした。
20
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない
潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。
いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。
そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。
一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。
たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。
アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー
イバラの鎖
コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
たまにはシリアスでドロついた物語を❣️
辺境伯の後継であるシモンと、再婚で義兄弟になった可愛い弟のアンドレの絡みついた運命の鎖の物語。
逞しさを尊重される辺境の地で、成長するに従って貴公子と特別視される美少年に成長したアンドレは、敬愛する兄が王都に行ってしまってから寂しさと疎外感を感じていた。たまに帰って来る兄上は、以前のように時間をとって話もしてくれない。
変わってしまった兄上の真意を盗み聞きしてしまったアンドレは絶望と悲嘆を味わってしまう。
一方美しいアンドレは、その成長で周囲の人間を惹きつけて離さない。
その欲望の渦巻く思惑に引き込まれてしまう美しいアンドレは、辺境を離れて兄シモンと王都で再会する。意図して離れていた兄シモンがアンドレの痴態を知った時、二人の関係は複雑に絡まったまま走り出してしまう。
二人が紡ぐのは禁断の愛なのか、欲望の果てなのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる