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好きな人(セレーネ視点)

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なんだか僕まで恥ずかしくなってアルから視線を外すしたら、彼が身体を起こしてもう一度僕の名前を呼んできた。

「……なんで僕ってわかったの?」

「セレーネのことならすぐ分かるから」

「なにそれっ……」

変なの……。

エイデンは僕が何を考えてるのか分かるようで分からないってよく言ってた。でも、アルは僕のこと分かるって言ってくれる。

そこまで考えて、またエイデンのことを考えて2人を比べてしまってるって気がついた。

そんなことしちゃいけないって分かってるのに、無意識のうちに考えてしまって落ち込む。

「最近エイデンと一緒に居ないけど喧嘩でもした?」

アルは僕の心を読んだみたいにエイデンの話を僕に振ってきて、それが今はなんだか嫌だ。

正直エイデンのことを聞かれるのはうんざりしていた。

「エイデンとはお別れしたんだ」

「……どうしてか聞いてもいいかい?」

「…………僕はエイデンのことが大好きだけど僕の初恋の人は、エイデンじゃないから……だから、お別れしたの。だって、僕はあの日を忘れられないし捨てれないから。だから、エイデンが僕と離れることを決めたんだ」

「……そうか」

涙腺が緩むけれど我慢して下手くそな言葉で必死に伝える。

そうしたらアルが僕の髪を優しく撫でてくれた。

彼に撫でられるのは嫌いじゃない。
心地よくて、暖かくて、まるでいつも僕のことを見守ってくれているみたいに思える。

まるで星みたいだ。

それに、アルの傍にいると落ち着くんだ。
いい匂いに包まれて、アルの暖かい雰囲気につい背を預けたくなる。

まだ、彼のことを好きなのかは分からない。
初恋の王子様のことをはっきりと好きだと言えるけれど、アル自身のことを好きなのかは曖昧だ。

「ねえ……僕、エイデンのことが好き」

「知ってるよ」

「っ……でもっ、初恋の王子様のことはもっともっと好きなんだ」

恋焦がれているんだ。

なにかに突き動かされるように、ずっとずっと彼を探している。まるで初恋という呪いに苛まれて身動きが取れなくなったみたいに、あの日の彼をただ宛もなく追いかけていた。

「セレーネ、俺は君のことが好き。でも、急がなくていい」

「分かってるっ……だから……だから、」

「うん」

アルへの思いが何処まで行くのか知りたい。

エイデンのことが好きな癖にこんなこと駄目だって分かっていても、アルのことをもっと知りたいし、もっともっと彼と一緒に居たいと思ってしまう。

だから、抗えない欲求に従うことを今だけは許して欲しいって誰に言うでもなく思った。

「……僕と友達から始めてくれませんか?」

まだ、恋人になるとかそういうのは分かんないけど、きっと彼の傍に居ればいつか分かる日が来る。

そんな気がするんだ。

僕の言葉に、アルはキョトンとした顔をした後にふわりと笑って、もう友達だと思ってたってまた僕の髪を撫でてくれた。
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