26 / 62
好きな人(セレーネ視点)
⑤
しおりを挟む
なんだか僕まで恥ずかしくなってアルから視線を外すしたら、彼が身体を起こしてもう一度僕の名前を呼んできた。
「……なんで僕ってわかったの?」
「セレーネのことならすぐ分かるから」
「なにそれっ……」
変なの……。
エイデンは僕が何を考えてるのか分かるようで分からないってよく言ってた。でも、アルは僕のこと分かるって言ってくれる。
そこまで考えて、またエイデンのことを考えて2人を比べてしまってるって気がついた。
そんなことしちゃいけないって分かってるのに、無意識のうちに考えてしまって落ち込む。
「最近エイデンと一緒に居ないけど喧嘩でもした?」
アルは僕の心を読んだみたいにエイデンの話を僕に振ってきて、それが今はなんだか嫌だ。
正直エイデンのことを聞かれるのはうんざりしていた。
「エイデンとはお別れしたんだ」
「……どうしてか聞いてもいいかい?」
「…………僕はエイデンのことが大好きだけど僕の初恋の人は、エイデンじゃないから……だから、お別れしたの。だって、僕はあの日を忘れられないし捨てれないから。だから、エイデンが僕と離れることを決めたんだ」
「……そうか」
涙腺が緩むけれど我慢して下手くそな言葉で必死に伝える。
そうしたらアルが僕の髪を優しく撫でてくれた。
彼に撫でられるのは嫌いじゃない。
心地よくて、暖かくて、まるでいつも僕のことを見守ってくれているみたいに思える。
まるで星みたいだ。
それに、アルの傍にいると落ち着くんだ。
いい匂いに包まれて、アルの暖かい雰囲気につい背を預けたくなる。
まだ、彼のことを好きなのかは分からない。
初恋の王子様のことをはっきりと好きだと言えるけれど、アル自身のことを好きなのかは曖昧だ。
「ねえ……僕、エイデンのことが好き」
「知ってるよ」
「っ……でもっ、初恋の王子様のことはもっともっと好きなんだ」
恋焦がれているんだ。
なにかに突き動かされるように、ずっとずっと彼を探している。まるで初恋という呪いに苛まれて身動きが取れなくなったみたいに、あの日の彼をただ宛もなく追いかけていた。
「セレーネ、俺は君のことが好き。でも、急がなくていい」
「分かってるっ……だから……だから、」
「うん」
アルへの思いが何処まで行くのか知りたい。
エイデンのことが好きな癖にこんなこと駄目だって分かっていても、アルのことをもっと知りたいし、もっともっと彼と一緒に居たいと思ってしまう。
だから、抗えない欲求に従うことを今だけは許して欲しいって誰に言うでもなく思った。
「……僕と友達から始めてくれませんか?」
まだ、恋人になるとかそういうのは分かんないけど、きっと彼の傍に居ればいつか分かる日が来る。
そんな気がするんだ。
僕の言葉に、アルはキョトンとした顔をした後にふわりと笑って、もう友達だと思ってたってまた僕の髪を撫でてくれた。
「……なんで僕ってわかったの?」
「セレーネのことならすぐ分かるから」
「なにそれっ……」
変なの……。
エイデンは僕が何を考えてるのか分かるようで分からないってよく言ってた。でも、アルは僕のこと分かるって言ってくれる。
そこまで考えて、またエイデンのことを考えて2人を比べてしまってるって気がついた。
そんなことしちゃいけないって分かってるのに、無意識のうちに考えてしまって落ち込む。
「最近エイデンと一緒に居ないけど喧嘩でもした?」
アルは僕の心を読んだみたいにエイデンの話を僕に振ってきて、それが今はなんだか嫌だ。
正直エイデンのことを聞かれるのはうんざりしていた。
「エイデンとはお別れしたんだ」
「……どうしてか聞いてもいいかい?」
「…………僕はエイデンのことが大好きだけど僕の初恋の人は、エイデンじゃないから……だから、お別れしたの。だって、僕はあの日を忘れられないし捨てれないから。だから、エイデンが僕と離れることを決めたんだ」
「……そうか」
涙腺が緩むけれど我慢して下手くそな言葉で必死に伝える。
そうしたらアルが僕の髪を優しく撫でてくれた。
彼に撫でられるのは嫌いじゃない。
心地よくて、暖かくて、まるでいつも僕のことを見守ってくれているみたいに思える。
まるで星みたいだ。
それに、アルの傍にいると落ち着くんだ。
いい匂いに包まれて、アルの暖かい雰囲気につい背を預けたくなる。
まだ、彼のことを好きなのかは分からない。
初恋の王子様のことをはっきりと好きだと言えるけれど、アル自身のことを好きなのかは曖昧だ。
「ねえ……僕、エイデンのことが好き」
「知ってるよ」
「っ……でもっ、初恋の王子様のことはもっともっと好きなんだ」
恋焦がれているんだ。
なにかに突き動かされるように、ずっとずっと彼を探している。まるで初恋という呪いに苛まれて身動きが取れなくなったみたいに、あの日の彼をただ宛もなく追いかけていた。
「セレーネ、俺は君のことが好き。でも、急がなくていい」
「分かってるっ……だから……だから、」
「うん」
アルへの思いが何処まで行くのか知りたい。
エイデンのことが好きな癖にこんなこと駄目だって分かっていても、アルのことをもっと知りたいし、もっともっと彼と一緒に居たいと思ってしまう。
だから、抗えない欲求に従うことを今だけは許して欲しいって誰に言うでもなく思った。
「……僕と友達から始めてくれませんか?」
まだ、恋人になるとかそういうのは分かんないけど、きっと彼の傍に居ればいつか分かる日が来る。
そんな気がするんだ。
僕の言葉に、アルはキョトンとした顔をした後にふわりと笑って、もう友達だと思ってたってまた僕の髪を撫でてくれた。
22
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
幸せな復讐
志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。
明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。
だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。
でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。
君に捨てられた僕の恋の行方は……
それぞれの新生活を意識して書きました。
よろしくお願いします。
fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
獣人王と番の寵妃
沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる