24 / 62
好きな人(セレーネ視点)
③
しおりを挟む
驚いて固まっている僕から顔を離したエイデンは何故か泣きそうな顔をしていて、どうしてそんな顔をするのか僕には分からない。
「なんで……」
ずっと僕の告白を断っていたのはエイデンだったはずなのに、どうして今になってキスなんてしてくるんだろう。
分からないから益々混乱して、僕の目からは涙が流れていた。
「……ごめん」
「違うよっ……謝って欲しいんじゃないっ。ただ、どうしてキスをしたのか聞いてるんだよっ」
ずっとずっと追いかけていた。
エイデンは僕の王子様だった。
すぐ近くにいるのに、決して手には入らない宝石のような人。
けれど、彼は僕の王子様ではなかった。
僕の追い求めていた幼い頃に出会った王子様はエイデンではなくてアルだ。
それでも僕にとってエイデンは今も変わらず王子様のように光り輝いて眩しくてかっこいい存在。
「セレーネが探してる王子様は俺じゃない」
「……っ、知ってたの?」
「ずっと言えなかったんだ。初めから分かってた。だって俺はその結婚式に参加していないから。俺の両親はエレノア様とあまり仲が良くなくて、結婚式には祖父だけが参加したんだ」
「……ならっ、それならどうして違うって教えてくれなかったの!?僕はっ、僕はエイデンのことっ、本当に王子様だって思ってた。今も思ってる」
次から次に溢れてくる涙はなんの涙だろう。
悲しいのか怒っているのか、分からないけれどとにかく苦しくて仕方ない。
「セレーネのことが好きだから言えなかったんだ。君に好きだと言って貰えることが嬉しかったから……。けど、セレーネがくれる好きは王子様だけの特別だ。だから、言えなかったし、嘘をついている俺が君の思いに応えることも出来なかったんだ」
「……っ……僕っ……エイデンの気持ち全然気づいてなかった……。いつも自分のことばかりで、エイデンのこともアルのことも全部なにも分かってなかったっ、ごめんなさいっ……」
いつもなら、大丈夫?って声をかけて寄り添ってくれるエイデンは、今は僕の涙を掬ってはくれない。
それが彼が出した答えなんだって嫌でも分かったから、僕はぐっと唇を噛み締めて、小さく……本当にか細い声で、お別れだねって呟いた。
きっと、エイデンは答えの出せない僕の代わりに選んでくれたんだと思う。
それは僕の思い込みかもしれないけれど、いつだって僕のことを気遣ってくれた彼ならそうするんだろうなって勝手に思う。
手を伸ばせば届く距離に彼はいる。
前まではこんな距離いとも簡単に飛び越えて、彼の隣にベッタリとくっついて離れることはしなかった。
けれど、今はもうそれは出来ないから……。
最後に……本当に最後だから、言わせて欲しい。
「エイデン……大好きでした」
本当に本当に大好きなんだ。
けれど、きっと僕たちの関係は最初から上手くいかないって決まっていた様にも感じる。
僕は過去を忘れられないし、手放せない。
そして、その過去にエイデンは存在しない。
だから、僕達は離れるべきなんだって思う。
僕は彼に背を向けて図書館を出ると自分の寮の部屋へと真っ直ぐに歩いて向かう。
立ち止まったら駄目だって何度も言い聞かせて、ずっと感じる彼の視線に気づいてないふりをした。
「なんで……」
ずっと僕の告白を断っていたのはエイデンだったはずなのに、どうして今になってキスなんてしてくるんだろう。
分からないから益々混乱して、僕の目からは涙が流れていた。
「……ごめん」
「違うよっ……謝って欲しいんじゃないっ。ただ、どうしてキスをしたのか聞いてるんだよっ」
ずっとずっと追いかけていた。
エイデンは僕の王子様だった。
すぐ近くにいるのに、決して手には入らない宝石のような人。
けれど、彼は僕の王子様ではなかった。
僕の追い求めていた幼い頃に出会った王子様はエイデンではなくてアルだ。
それでも僕にとってエイデンは今も変わらず王子様のように光り輝いて眩しくてかっこいい存在。
「セレーネが探してる王子様は俺じゃない」
「……っ、知ってたの?」
「ずっと言えなかったんだ。初めから分かってた。だって俺はその結婚式に参加していないから。俺の両親はエレノア様とあまり仲が良くなくて、結婚式には祖父だけが参加したんだ」
「……ならっ、それならどうして違うって教えてくれなかったの!?僕はっ、僕はエイデンのことっ、本当に王子様だって思ってた。今も思ってる」
次から次に溢れてくる涙はなんの涙だろう。
悲しいのか怒っているのか、分からないけれどとにかく苦しくて仕方ない。
「セレーネのことが好きだから言えなかったんだ。君に好きだと言って貰えることが嬉しかったから……。けど、セレーネがくれる好きは王子様だけの特別だ。だから、言えなかったし、嘘をついている俺が君の思いに応えることも出来なかったんだ」
「……っ……僕っ……エイデンの気持ち全然気づいてなかった……。いつも自分のことばかりで、エイデンのこともアルのことも全部なにも分かってなかったっ、ごめんなさいっ……」
いつもなら、大丈夫?って声をかけて寄り添ってくれるエイデンは、今は僕の涙を掬ってはくれない。
それが彼が出した答えなんだって嫌でも分かったから、僕はぐっと唇を噛み締めて、小さく……本当にか細い声で、お別れだねって呟いた。
きっと、エイデンは答えの出せない僕の代わりに選んでくれたんだと思う。
それは僕の思い込みかもしれないけれど、いつだって僕のことを気遣ってくれた彼ならそうするんだろうなって勝手に思う。
手を伸ばせば届く距離に彼はいる。
前まではこんな距離いとも簡単に飛び越えて、彼の隣にベッタリとくっついて離れることはしなかった。
けれど、今はもうそれは出来ないから……。
最後に……本当に最後だから、言わせて欲しい。
「エイデン……大好きでした」
本当に本当に大好きなんだ。
けれど、きっと僕たちの関係は最初から上手くいかないって決まっていた様にも感じる。
僕は過去を忘れられないし、手放せない。
そして、その過去にエイデンは存在しない。
だから、僕達は離れるべきなんだって思う。
僕は彼に背を向けて図書館を出ると自分の寮の部屋へと真っ直ぐに歩いて向かう。
立ち止まったら駄目だって何度も言い聞かせて、ずっと感じる彼の視線に気づいてないふりをした。
21
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない
潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。
いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。
そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。
一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。
たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。
アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー
イバラの鎖
コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
たまにはシリアスでドロついた物語を❣️
辺境伯の後継であるシモンと、再婚で義兄弟になった可愛い弟のアンドレの絡みついた運命の鎖の物語。
逞しさを尊重される辺境の地で、成長するに従って貴公子と特別視される美少年に成長したアンドレは、敬愛する兄が王都に行ってしまってから寂しさと疎外感を感じていた。たまに帰って来る兄上は、以前のように時間をとって話もしてくれない。
変わってしまった兄上の真意を盗み聞きしてしまったアンドレは絶望と悲嘆を味わってしまう。
一方美しいアンドレは、その成長で周囲の人間を惹きつけて離さない。
その欲望の渦巻く思惑に引き込まれてしまう美しいアンドレは、辺境を離れて兄シモンと王都で再会する。意図して離れていた兄シモンがアンドレの痴態を知った時、二人の関係は複雑に絡まったまま走り出してしまう。
二人が紡ぐのは禁断の愛なのか、欲望の果てなのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる