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好きな人(セレーネ視点)
①
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エイデンが好き。
それは僕にとって揺るぎない唯一無二のものだと思っていた。
最初は幼い頃に出会った彼に再会できた喜びで付き纏っていたけれど、今はエイデンの優しくて明るい人柄や目標に向かって一生懸命努力する姿や、些細な気遣いだとか、そいう所も大好きで、本当に仕方ないやつだなって僕のことを甘やかしてくれる所も自分にだけの特別のように感じて愛おしい。
エイデンからは昔出会ったあの子から感じたいい匂いはしなかったし、強い繋がりも感じることは無かったけれど、そんなこと関係なくて、ただ彼のことがひたすらに好きだと思っていた。
それなのに……
授業中、先生のお話を聞きながら僕は小さく溜息をこぼした。
広い教室内の一番後ろの席の窓際で、暖かな陽気に包まれながら勉強をするのが好きな僕は、いつもこの席に座っていて、周りの皆も優しいからまるで僕の特等席みたいにこの席はいつも空けられている。
けれど、今はその暖かい陽気が少しだけ嫌だなって思った。
この温かさはまるでエイデンの様だといつも思っていた。けれど今は、彼の太陽のように爛々と輝く瞳を思い出してしまうから、憂鬱で仕方ない。
それと同時に、この温かさはアルの手の温もりも思い出させてくるから、更にしんどいと思ってしまう。
アルから昔話を聞いた時、信じたくないと思いながらも、横に腰かける彼から漂ってくる香りに、やっと再会できたと喜ぶ最低な自分がいることにも気がついていた。
僕は彼を探していたんだと、心の奥で何かが頭をもたげるのに、エイデンのことが好きなんだって別の自分が叫んでいる。
その板挟みにどうしたらいいのか分からなくて、ただひたすら頭の中はぐちゃぐちゃだった。
エイデンのことが好き。
はっきりとそう口に出せるのに、じゃあ、アルのことは?と聞かれるとどうしても曖昧な返答しか出来ない気がする。
なら、いっその事僕のことを好きだと言ってくれるアルと恋人になればいいと思ったりもするけれど、それは駄目だって自分に何度も言い聞かせた。
好きな人がいるのに自分が楽になれるからと他の人と付き合っても結局は上手くいかないって思うから。
「……エイデン……」
彼は僕のことをどう思ってるんだろう。
もしも、エイデンも僕のことを好きなら、僕は迷わずエイデンを選ぶのだろうか?
答えは出てこない。
いつまでも待つというアルの言葉は、逆に僕を焦らせる。
いつかは答えを出さないといけない。
でも、そのいつかが何時になるのか自分でもよく分からないんだ。
「……僕は最低だ」
本当にそう思う。
先生の無機質な声と太陽光を浴びながら、僕はなんだか消えてしまいたい気分になった。
それは僕にとって揺るぎない唯一無二のものだと思っていた。
最初は幼い頃に出会った彼に再会できた喜びで付き纏っていたけれど、今はエイデンの優しくて明るい人柄や目標に向かって一生懸命努力する姿や、些細な気遣いだとか、そいう所も大好きで、本当に仕方ないやつだなって僕のことを甘やかしてくれる所も自分にだけの特別のように感じて愛おしい。
エイデンからは昔出会ったあの子から感じたいい匂いはしなかったし、強い繋がりも感じることは無かったけれど、そんなこと関係なくて、ただ彼のことがひたすらに好きだと思っていた。
それなのに……
授業中、先生のお話を聞きながら僕は小さく溜息をこぼした。
広い教室内の一番後ろの席の窓際で、暖かな陽気に包まれながら勉強をするのが好きな僕は、いつもこの席に座っていて、周りの皆も優しいからまるで僕の特等席みたいにこの席はいつも空けられている。
けれど、今はその暖かい陽気が少しだけ嫌だなって思った。
この温かさはまるでエイデンの様だといつも思っていた。けれど今は、彼の太陽のように爛々と輝く瞳を思い出してしまうから、憂鬱で仕方ない。
それと同時に、この温かさはアルの手の温もりも思い出させてくるから、更にしんどいと思ってしまう。
アルから昔話を聞いた時、信じたくないと思いながらも、横に腰かける彼から漂ってくる香りに、やっと再会できたと喜ぶ最低な自分がいることにも気がついていた。
僕は彼を探していたんだと、心の奥で何かが頭をもたげるのに、エイデンのことが好きなんだって別の自分が叫んでいる。
その板挟みにどうしたらいいのか分からなくて、ただひたすら頭の中はぐちゃぐちゃだった。
エイデンのことが好き。
はっきりとそう口に出せるのに、じゃあ、アルのことは?と聞かれるとどうしても曖昧な返答しか出来ない気がする。
なら、いっその事僕のことを好きだと言ってくれるアルと恋人になればいいと思ったりもするけれど、それは駄目だって自分に何度も言い聞かせた。
好きな人がいるのに自分が楽になれるからと他の人と付き合っても結局は上手くいかないって思うから。
「……エイデン……」
彼は僕のことをどう思ってるんだろう。
もしも、エイデンも僕のことを好きなら、僕は迷わずエイデンを選ぶのだろうか?
答えは出てこない。
いつまでも待つというアルの言葉は、逆に僕を焦らせる。
いつかは答えを出さないといけない。
でも、そのいつかが何時になるのか自分でもよく分からないんだ。
「……僕は最低だ」
本当にそう思う。
先生の無機質な声と太陽光を浴びながら、僕はなんだか消えてしまいたい気分になった。
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