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本音

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眉を寄せるエイデンに俺はなんと声をかけていいのか結局分からないまま数秒経った時に、エイデンが立ち上がると、本物が現れればいいのに、と呟いたのが聞こえてきた。

「……エイデン?」

太陽のように輝く彼の瞳が真っ直ぐに俺の事を見つめてくる。

「本物の王子様が現れれば解決するのにな」

「……本当にエイデンじゃないのか?それに、セレーネの初恋っていつの話なんだ?何処で出会った?」

「俺じゃない。詳しくは分かんないけど、結婚式でとか、泣いてたのを慰めてもらったとか、そんなことを言ってたよ。あと、黒髪に金色の目だったってのも言ってたな」

そう言いながらもずっと俺から目を離さないエイデンが、何故か俺に1歩近づいてきた。

「案外王子様は近くにいるかもしれないけど」

「……え?」

そう言って、ふって笑ったエイデンは、手合わせありがとうって言ってから俺に背を向けて木剣を元に戻してから訓練所を出て行ってしまった。

その背中を眺めながら、彼の話を頭の中で復唱してみる。

「……結婚式……?泣いていた?」

もしかして?と思わずにはいられない言葉達につい気持ちが焦ってしまうけれど、俺は自分に落ち着けと言い聞かせて息を吐き出した。

「アステル、ご苦労さま」

「オリビアありがとう」

俺とエイデンの手合わせをずっと見ていたオリビアが俺に駆け寄ってきて声をかけてくれるのに返事を返すと、なにかあったのか?って聞かれて俺は答えに迷った。

「……疑問が増えた」

「アステルは深く考えすぎなんじゃないのか。私のように好きなように生きていた方が楽な時はある」

「確かになあ……。オリビアが羨ましいよ」

「アステルの頭が硬いだけだろう。たまには自分に素直にならないと辛いだけだ」

「……そうだな」

自分に素直に、か。

幼い頃は出来ていたそれを、俺はいつ頃から我慢するようになったんだろう。

セレーネのことが好きで好きでたまらないのに、エイデンと結ばれれば、なんて本当は思ってもないことを願って、それに1番傷ついているのは自分自身だ。

セレーネの口からエイデンの話しが出る度に心が引き裂かれそうな程苦しくなる。

「……セレーネに会ってみるよ」

彼が開花期に入ってから1度も会っていなかったから、会いに行ってみようかと思った。

エイデンから聞いた話も気になったから。

「……上手くいくといいな」

少しだけ寂しそうにオリビアがそう言うから、ありがとうって返して、また訓練見てやるからってことも伝えた。

「アステル」

「なんだ?」

「……もし、上手くいったら……」

「……ん?」

「……っ、もし上手くいったらハーブ亭で肉を奢れ!」

「……そこ、高級店だぞ……はあ、わかったよ」

思わずクスって笑みを零すと、オリビアも笑い返してくれて、俺たちは笑い合いながら訓練の片付けをし始めた。
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