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似てない双子

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手の感触がまだ残っている気がした。

昨日の夜、セレーネを送って行ってから、ずっと手を繋いだことを思い出してはため息を吐くを繰り返している。

あの時、どうして彼の手を取ったのか自分の行動の理由が自分でも分からなかった。

今思えば、魔が差したのかもしれない。

好きな子が急接近してきて、思いが少しだけ溢れてしまったんだと思う。

「……はあ……」

「今ので32回目だな」

「……オリビア居たのか」

部屋の入口の方から声が飛んできて振り返ると、オリビアが資料を手に持って背後に立っていた。

彼女はオリビア=エーデルシュタイン

俺の従妹で、俺の身の回りの管理をしてくれている。もう一人双子の弟も居るが、あいつは誰に似たのか自由人であまりここには顔を出さない。

彼女達には合鍵を渡しているから仕事を持ってくる時はそれを使って部屋に入ってくる。

「居たなら声をかけてくれ」

「考え事をしてたみたいだったから眺めていた」

「眺めてないで声をかけろ。……仕事か?」

「ううん、皇后陛下からお手紙」

「お母様から?」

「会いたがっておられたぞ。ああ、それから好きな子とどうなったのかも気にしておられた」

手紙を受け取ると、ペーパーナイフで封を開けて中を確認する。

相変わらず美しい字で書かれた手紙には第2子が出来たと書かれてあって思わず、は?っと声を出してしまった。

「……どういうことだこれ。あの人たちいくつだと思ってるんだ!」

「皇后陛下は35歳、陛下は48だったか」

「そんなことを聞いてるんじゃない……はあ……お身体に気をつけて下さい、と伝えてくれ」

「手紙を書けばいいじゃないか」

「……そうだな」

引き出しから便箋を取り出して適当な枚数広げる。

学園に入るまではこうしてお母様に手紙を送るなんて考えたことも無かった。毎日、過保護なくらいベタベタしてくることにうんざりしていたくらいだ。

適当に文を書いてオリビアに手渡すと、オリビアがそれを鞄に仕舞う。

それを確認してから、もう帰っていいぞと声をかけた。

「最近、セレーネ様と仲がいいと聞いたけど」

「……少し話す程度だ」

「まだ伝えられてないのか」

「……なんのことだ」

「アステルの想い人はセレーネ様だろう?」

オリビアの言葉に俺は眉間に皺を寄せると、余計なお世話だって素っ気なく返した。

「ああ、エイデン=マクホランドとの噂のことか。あの二人は付き合ってはいないぞ。それに皇太子だという噂もアステルが素顔を晒せば全て解決することだ」

「……そんなことは分かっている。いいから帰れ」

「意気地無し」

「お前な!」

べーって俺に向かって舌を出してそそくさ部屋から出ていくオリビアの背中に1つ舌打ちをする。

エレノア叔母様にあることない事チクってやるからな!

イライラしながら手元にあった本を開くと、それが騎士の心得だということが分かって、また溜め息が出た。

確かにオリビアの言う通りだ……。

俺は意気地無しで、あの日のことを覚えているのか尋ねることすら躊躇してしまっている。

想いを伝えても彼を困らせるだけだと分かっているから……。

彼が図書館でエイデンの話を楽しげに語ってくれるのを、羨ましさと嫉妬の混じった感情でいつも聞いているからこそ、彼がどれだけエイデンのことを慕っているのかが分かって、結局何も出来ずに終わってしまう。

もう、諦めた方がいいと自分でも分かっているんだ。

一時、手を繋いで彼を感じられただけで満足しろって何度も何度も言い聞かせてみてもやっぱり気持ちは大きくなるばかり。

それに……俺は皇太子だ。

セレーネは皇太子は嫌だと言っていた。

「完璧に脈ナシ、だな」

ははって乾いた笑いを漏らして、顔を机に伏せる。

は~~~って長い溜息がまた口から漏れ出た。
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