マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

文字の大きさ
上 下
40 / 53
なにこれ

13

しおりを挟む
「俺の片想いですよ」

ビクつく俺に気づいているのかいないのか相澤さんがそう答えて爽やかに笑った。

「へえ…、実るといいですね。片想い」

片思いの所を強調するように言った月見さんに相澤さんの片眉がぴくりと反応する。

何故か不穏な雰囲気になりそうな感じがして焦った俺はとりあえず俺の腰に回された相澤さんの腕から逃れて少しだけ2人から距離を取った。

「お邪魔してごめんね。俺はもう行くから」

相変わらずの笑みを浮かべたまま月見さんが俺にそう言ってきてずきりと胸が痛む。

ずっと会いたいと思っていたのに、こんな風に再会したくなんてなかった。

「つ、つきっ…」

呼び止めようとした俺に背を向けて月見さんは何も言わずにまた歩き始めた。

あんまりにも冷たい態度に唖然として彼の背中を見つめていた俺の背中を相澤さんがポンっと優しく押してきて驚いて相澤さんを見るとすごく優しい顔で俺の事を見ている相澤さんと目が合った。

「追いかけなくていいのか?」

「で、でも…」

追いかけたら相澤さんの告白を断ることになるってことだ…。

それなのに行ってこいって相澤さんがまた俺の背中を押してきて俺はグッと歯を食いしばった。

本当にいい人だ。

相澤さんは人として尊敬できるかっこいい大人で、俺はそんな大人な彼に今は甘えることしか出来ない。

「すみません…」

「いいから行ってこい。その代わり今度お前の奢りで飯な」

「…はいっ…」

俺はまだ遠くに行っていないはずの月見さんの背中を追いかけて駆け出す。

久しぶりに見た月見さんはやっぱり綺麗で、目が離せないくらい魅力的だった。

ドクドクと強く主張してくる鼓動が月見さんの姿が大きく見えてくるのに連動して更に大きくなり始める。

ああ…なにこれ…。

もう俺ダメだ。
認めたくないって自分に駄々を捏ねてみてもやっぱり無理だ。

知り合ったのなんて最近で、まだ数回しか会ってないのに俺の中の月見さんはどんどん大きくなっていく。

「っ月見さん…!」

彼の名前を呼ぶと、それに反応して月見さんが俺の方にゆっくりと振り替えた。

その顔は驚きに染っているのにやっぱり綺麗で、俺この人の事好きだなって認めるしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

アルファとアルファの結婚準備

金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。  😏ユルユル設定のオメガバースです。 

処理中です...