マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

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デート?

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後半だれつつもなんとか長かった連勤を終えてやっと月見さんと植物園に行く日になった。

少しだけ早く起きて、姿見の前であーじゃないこうじゃないって首をひねらせながら服を選ぶ。

センスがない俺はいつも兄貴たちが持ってくる服をそのまま着ているからこうやって服で頭を悩ませるのは初めてのことでかってが分からない。

コーディネートすればする程変に思えて来て結局最初に選んだシンプルなジャケットとTシャツに落ち着いてしまった。

「あーっと、水、水」

忘れ物はないか確認している途中で花に水をやるのを忘れていたことに気づいて慌てて水道のところまで向かう。ちっちゃいジョーロとかないから計量カップに水を入れて窓辺の暖かい所に置いている花にそっと水をあげる。

折れたところは根元から数ミリあけたところでカットしてやって一回り大きい鉢に植え替えてやった。まだ数日しか経ってないけど買った時から少しだけ出ていた蕾が開き始めている。
それが嬉しくて俺は花に向かって頑張れよって声をかけてやる。

そうこうしているうちに出ないといけない時間になったから俺はスマホと財布をポケットに突っ込んで家を出た。

待ち合わせ場所近くのパーキングに車を停めてそこからは徒歩で待ち合わせ場所まで向かう。
思ったよりも人が多い街中を歩きながら、最近はあんまり人並みに揉まれてなかったせいで少しだけ人酔いしそうになる。

なんとか待ち合わせ場所の大形モールに着くと既に月見さんが到着していて入口のところで彼を発見した。

「お久しぶりです」

「ああ、久しぶり。少しやつれたんじゃない?」

タブレットで何かを打ち込んでいた月見さんが俺の声に気づいて顔を上げて、タブレットの電源を切って鞄にしまった。

その時に一瞬俺の親が経営する会社名が見えた気がしたけどあえて触れずに月見さんの言葉に苦笑いを返した。

「連勤だったので」

「それはご苦労さま」

あっさりと返されて、それにまた苦笑いを浮かべた俺は相変わらず綺麗な月見さんの顔を隣で眺めながらこの人は変わらないなーって思った。

肌も髪も相変わらずツヤツヤだしいつ見ても欠点が浮かばないくらい綺麗だ。

俺は自分の染めすぎて傷んだ髪をちょっと触ってため息を吐き出した。

「どうしたの?」

「月見さんっていつ見ても髪さらさらつやつやっすよね」

「そうかな?」

俺の言葉で自分の髪を手に取って確認する月見さんの手から微かに髪がこぼれ落ちてそれが何故かすごく色っぽく見えて俺は目を逸らす。

髪が彼の動きに連動して揺れる度に甘いのにスッキリしたいい匂いがしてそれに何故だかどきどきと鼓動が早くなっていく気がした。

「あっ、見えてきましたよ!」

何故か会う前よりも更に緊張し初めてしまった俺は、それを振り払うみたいに見えてきた植物園の看板を指さして声を上げた。

「本当だね。すごく綺麗なところだ」

入口になっている薔薇のアーチを眺めながら月見さんが顔を綻ばせて、俺はそんな月見さんの表情を見て笑顔になった。

黙ってるとクールに見えるのに話すとコロコロ変わる表情は見ていて楽しい。

入口の側に立っていた係員さんにチケットを渡して俺たちはすんなりと中へ入る。

春先の今は丁度花の開花時期で今が1番見所なんだと係員さんが言っていた通り、1面色んな花が咲き誇るそこは温室になっているのか外よりも少しだけ暖かくて心地良い。

「この花初めて見たなあ。あっ、これ面白い形だね」

目に付いた花1つ1つに感想を言いながら順路を進んでいく月見さんが可愛くて花よりもつい彼に目をやってしまう。

「これってなんて言うのかな?」

種が飛んだのか1つだけ別の花と混じってしまっていた花を指さして月見さんが俺に尋ねてきた。

「あー、ネモフィラっすね。ほらあっちにネモフィラ畑見えますよ」

温室の外の遠くの方に広がるネモフィラ畑を指さすとほんとだねって月見さんが嬉しそうに微笑んだ。

その顔にドキって鼓動が大きく鳴って少しだけ体がほてった気がする。

「外と中なのにどうやって迷い込んだのかな」

つんつんって指で優しくネモフィラをつつきながら首を傾げる月見さんを眺めながらついスマホのカメラ機能でネモフィラと月見さんのセットを写真に収める。

カシャっていうカメラ音が思ったよりも大きく響いて、その音に月見さんが顔を上げて俺の顔と自分に向けられているスマホを交互に確認してからゆっくりと立ち上がった。
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