マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

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デート?

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運ばれてきた料理をつまみながら俺の中で店長に対する心境の変化が生まれつつあった。

「いいよなー星野は。俺はジム行っても筋肉付きにくくてめちゃくちゃ大変だよ」

「最近俺筋肉のせいで袖キツくて困ってるんすよ~」

「嫌味かよ!」

目の前の店長はとにかくよく喋るしよく笑う。
俺が1喋ったら10は喋るんじゃないかってくらいおしゃべり好きで、それにコロコロとよく表情を変える人だ。

俺が仕事の時に見ていた店長はほんの1面にしか過ぎなかったってことに気づく。
それと同時に仕事の時もこれならやりやすいのになって思ってしまう。

俺があれ食いたいなーって思ってたらその料理を気づいて取ってくれたり、なくなりかけた飲み物を注文してくれたりさり気ない気遣いもめちゃくちゃできる人で、なんだかそれがスマートでかっこよくてこういう人に憧れるなーって思う。

「店長ってプライベートだとこんな感じなんですね」

ずっと思っていたことを口にすると店長がキョトンって顔をしてこんな感じって?って聞いてきた。
それに俺はさっきも思っていたことを答える。

「よく笑うしよく喋るし、めちゃくちゃ大食いで、仕事の時とは別人みたいです」

「あー、よく言われる。仕事とプライベートはかなりハッキリ分けたいタイプっていうか」

「なんかすごいっすね」

「そうかあ?まあ、でも今日は更にテンション高いかもな」

「そうなんすか?」

店長がマリネを口に放り込んで飲み込んでから微かに歯を見せてクシャって笑う。

「そりゃあ、星野と飯食ってるからな」

「俺と飯食ってるからテンション高いってなんか面白いっすね」

何も考えずに思ったことを口に出すと店長が腹を抱えて笑う。

「面白くはねえだろっ」

「そんな笑うことです?」

笑いながらも近くにある料理をつまむ店長を見ているとなんだか俺も笑えてきて一緒にケラケラ笑いながら残った料理を平らげた。

俺の倍は食べてた店長はまだ少し足りないーって言いながらもダイエットだっておちゃめなこと言って追加注文は辞めていた。

会計の時に俺が財布を取り出すと店長に手で制止されてお金を出そうとしていた手が止まる。
その隙に店長が会計を済ませてしまったから、お礼を言って店を出た。

「二次会する?」

「今回はやめときます」

店長が冗談混じりに言った言葉に笑いながら明日も仕事なんでって断った。
今の店長となら全然店ハシゴするのもありだけど連勤続きで身体が悲鳴をあげてる。

「星野って食細いんだな」

「店長が食いすぎなんですよ」

「そんなことないと思うけどな。星野体格いいから沢山食べそうなイメージだった。」

そう言って俺の二の腕を揉んでくる店長の手がくすぐったくてくすくす笑ってしまう。

ほんとに気さくな人だ。

「んじゃ、また明日。遅刻するなよー」

車を停めていたパーキングまで着くと店長がそう言って軽く手を振ってきたから俺もまたって手を上げて車に乗り込む。

横に停まってる店長の車を横目で見ると店長はスマホをいじっているのか下を向いて何やら真剣な顔をしていた。

その横顔が仕事の時の店長とようやく重なって俺はため息をつく。

「いつもあんな感じならなー」

そう愚痴をこぼしつつ俺は車を発進させた。
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