マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

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デート?

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仕事を終えて家に帰りつくと疲れてそのままリビングのソファーで仮眠を取った。

片手に持っていたスマホがスルリとラグの上に落ちて鈍い音をたてる。

それと同時に聴きなれた着信音が鳴り響いてその音に驚いて俺は閉じていた目を開いた。

「……もしもし……」

だるくて名前も見ずにボタンをスワイプして電話に出ると一瞬の間の後に聞き覚えのある声が電話口から聴こえてきた。

『寝てた?』

「……月見さん……?」

ガバッと起き上がると故か姿勢を正して電話から聴こえてくる声に集中する。寝かけてたからちょっと視界にモヤがかかっててぽわぽわした。

『起こしてごめんね。今大丈夫?』

「大丈夫ですけどどうしたんですか」

『大したことじゃないんだけど、ちょっと相談事があって』

言いづらそうに月見さんがそう言って俺は何を言われるか気になって黙る。

『……恥ずかしいんだけど……花が……枯れそうなんだ……』

ボソボソと本当に恥ずかしそうに言った月見さんは最後に助けて欲しいって言葉を続けた。

「あー、なるほど。様子見ないとなんとも言えないですけど相談になら乗れると思いますよ」

『ほんとっ!?』

俺の言葉に月見さんが食いついてきて驚く。
愛情を持って育ててあげてるのが伝わってきてなんだか微笑ましくなる。

初めてだって言ってたし最初は失敗するものだって分かってるから様子を聞きながらアドバイスをしてあげた。

「それ水やりすぎっすね」

『でも、知り合いが朝昼晩かけるものだって……』

「春先なんで朝にたっぷりあげたら充分ですよ」

そう教えてあげると、騙されたって月見さんがショックを受けてその知り合いの人に怒っていた。

それを電話を通して聴きながら、なんでこの人こんなに可愛いんだろって思う。

物腰柔らかで大人な雰囲気があるのにこういうギャップが見え隠れするからつい可愛いなあって思ってしまう。

『ありがとう助かったよ』

「3日くらい水かけずに様子みてダメだったらまた相談してください」

『そうするね。そうだ、それともう1つ』

もう電話切られるかなって少し寂しさを感じてたら会話が続けられて少しだけ驚いた。

「なんですか?」

『何したいか決めた?』

「あー、まだっすね」

『なら植物園のチケットあるから一緒に行かない?』

月見さんは植物ブームが来てるらしくて、例の知り合いからチケットを2枚貰ったから誰かと一緒に行きたいと思っていたと言って、どうかなって俺に確認を取ってきた。

「いいですね。是非御一緒させてください」

『ありがとう』

予定をざっと決めてから2、3会話をして通話を切った。

はーって息を吐き出してまたソファーに寝転がる。

「訳分からないくらい可愛い」

電話越しの月見さんを思い出してギャップ萌を感じて悶えた。

昨日はあんなに余裕たっぷりだったくせに花1つであんなに焦って電話してくるなんて反則だろ…。

何でも出来そうな感じなのに知り合いの言葉を鵜呑みにするのとかほんとになんなんだろ。

顔に両手を当ててソファーの上でじたばたと悶える。

植物園楽しみだなって思いながら俺はいい心地で今度こそ眠りについた。
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