7 / 53
友達
7
しおりを挟む
俺何かおかしいこと言ったかな?
「それ大丈夫な理由になってないの分かってる?」
「え……あー……んーー?」
なんて言えばいいかわかんなくて首を傾げたら更に笑われて少しだけ恥ずかしくなった。
結構笑い上戸なのかなって笑ってる彼を見ながら思う。
ひとしきり笑ってから、お邪魔しようかなって彼が言って俺はそれに了解ですって答えた。
並んでエレベーターに乗り込んで部屋へと向かう。どんどん上がっていくエレベーターの浮遊感が俺は苦手で、親に何度も1番下の階にしてくれと頼み込んだのに聞き入れて貰えなかったのは今でも苦々しい思い出だ。
「流石に高いね」
ガラス窓になっている後ろを見て彼が呟いた。
「高いの苦手ですか?」
「…そんなことないよ」
これ、絶対苦手なヤツだわ。
顔は平然としてるけど少しだけ後ろを気にしている様子に可愛いところもあるんだなって笑いそうになった。
180ある俺と並んでもそんなに変わらない身長と均等の取れたスラリとした身体つきにこの顔がくっついていると隙が無さすぎて少し関わりにくい印象があるのに意外なギャップを見つけると途端に親近感が湧いてくる。
それからぽつぽつと世間話をしていたらあっという間に最上階について、エレベーターを降りて廊下に1つしかない扉の前へと進んだ。カードキーを取り出してかざしてから指紋認証をして部屋へと入る。無駄にセキュリティが高いのも親のこだわりだったりする。
「適当にくつろいでてください」
「ありがとう」
彼はそう言って近くにあったソファーにゆったりと腰掛けた。それを見てこの人やっぱりこういうところ慣れてるのかなって思う。
俺の家に初めて来る人は大体無駄にテンションが上がるかビビって縮こまるかのどっちかで、その後は俺を金づる認定するのか無駄にしつこく付きまとって来るやつとかもいるんだけどこの人はそのどっちでもない。
「お酒飲みます?」
「…まだ飲むの?」
「ショット2杯しか飲んでないんですってば」
「ふーん、弱いんだね」
ストレートに言われてなんだかものすごくグサッときたけど、苦笑いで返して冷蔵庫に入っていた酒類を適当にチョイスしてテーブルに並べた。ついでに簡易のワインセラーからワインも1本取り出す。
「どれ飲みます?」
「それ、頂こうかな」
俺が手に持っていたワインを指さした彼にワイングラスを渡して注いであげる。
種類なんてさっぱり分からないのに親が俺の家を酒置き場みたいにしてるから無駄に大量の酒が眠っていて、たまに邪魔に思うことがあるけど、こういう時に役立つから何も言わない。
俺も近くにあった缶ビールを手にとって一気に煽った。酒は一気飲みが1番美味い。
それを周りに話すと呆れられるけど、好きに飲むのが1番だと俺は思う。
「そういえば名前聞いてませんでした」
「知りたいの?」
「そりゃあ、呼ぶ時不便ですし」
今後関わることがあってもなくても名前くらいは知っておきたいと思う。もう一生こんな綺麗な人とは話せないかもしれないんだし…。
「月見 薫。君は?」
名前まで綺麗なんだな。
「星野 悟です」
「星野?……星野グループの社長の息子さん?」
「え……あー……そうですけど……」
「へー、お兄さんと似てないね」
この人兄貴のこと知ってるの?
話せば話すほど不思議な人だ。
会社関係の人なんだろうか。
星野と聞いて食いついてくる人は山ほど見てきたけどこんなにあっさりしてるのは始めてて困惑する。
「飲まないの?」
「……ちょっと酔ってきたみたいで」
飲むペースが目に見えて落ちてきている俺を月見さんが指摘してくる。当の本人はさっきから結構な量飲んでるはずなのにケロッとしているから驚く。
「夜にあんなとこで1人酒なんて……友達と飲んだりしないの?」
突然の話題に缶を上げようとしていた手が止まる。
「……ぼっちなんで」
「友達多そうなのに」
意外そうに言われて複雑な気分になった。
高校の時は俺も自分は友達が多い方だって思ってたけど、それは違うって思い知らされてからは人と深く関わるのを無意識に避けている節がある。
「……月見さんが俺の友達になってくれます?」
なんてって言って手に持っていた缶を煽った。
身体にアルコールがしみてなんとも言えないふわふわ感に包まれる。
冗談で言ってみたけど案外本気だったりする。
こんな風にリラックスして、俺の何にも驚かずに世間話をできるような、まさに月見さんみたいな人と友達になれたら絶対楽しいのにって思う。
「飲み過ぎだよ」
手に持っていた缶をそっと奪われてそれに少しだけムッとした。
確かに俺は酔ってるのかもしれない。
だからこんなこと思うのかも。
初対面の相手に友達になれなんて馬鹿みたいだけど、俺は自分が思うよりもかなり寂しかったのかもしれない。
「お願いします……いくらでも払うんで俺と友達になってください」
だからこんなことを口走ってしまう。
月見さんは驚いた顔をした後に、少しだけ困った顔をして立ち上がると俺の横に腰かけた。
「……いいよ」
意外にもあっさりとOKされて逆に俺が戸惑う。
彼は俺から奪った缶を豪快に煽るとテーブルに缶を置いた。
それを目で追いながら関節キスだなって安直なことを思う。
「ところで、友達ってどういう友達?」
「え……」
含み笑いをした月見さんに顔を覗かれて答えに迷った。
確かに友達ってなにかって考えた時にどうしたら友達になるのかなんてよく分からないなって気づく。
「……うーん……」
「考えてなかったの?」
「……はい」
「ふーん。俺はてっきりこういうことかと思ったんだけど」
「……!?」
月見さんの白くて長い指が俺の顎をそっと掴んで、状況の飲み込めない俺を置いてけぼりにして月見さんの綺麗な顔が俺の視界にドアップで映し出される。しっとりした柔らかい感触と、ビールとワインの混ざった独特の味が口内に広がる。
一瞬で離れた月見さんの顔を俺は間抜けな顔で見つめた。
「……へ?」
俺の口からとび出たのも間抜けな声だった
「それ大丈夫な理由になってないの分かってる?」
「え……あー……んーー?」
なんて言えばいいかわかんなくて首を傾げたら更に笑われて少しだけ恥ずかしくなった。
結構笑い上戸なのかなって笑ってる彼を見ながら思う。
ひとしきり笑ってから、お邪魔しようかなって彼が言って俺はそれに了解ですって答えた。
並んでエレベーターに乗り込んで部屋へと向かう。どんどん上がっていくエレベーターの浮遊感が俺は苦手で、親に何度も1番下の階にしてくれと頼み込んだのに聞き入れて貰えなかったのは今でも苦々しい思い出だ。
「流石に高いね」
ガラス窓になっている後ろを見て彼が呟いた。
「高いの苦手ですか?」
「…そんなことないよ」
これ、絶対苦手なヤツだわ。
顔は平然としてるけど少しだけ後ろを気にしている様子に可愛いところもあるんだなって笑いそうになった。
180ある俺と並んでもそんなに変わらない身長と均等の取れたスラリとした身体つきにこの顔がくっついていると隙が無さすぎて少し関わりにくい印象があるのに意外なギャップを見つけると途端に親近感が湧いてくる。
それからぽつぽつと世間話をしていたらあっという間に最上階について、エレベーターを降りて廊下に1つしかない扉の前へと進んだ。カードキーを取り出してかざしてから指紋認証をして部屋へと入る。無駄にセキュリティが高いのも親のこだわりだったりする。
「適当にくつろいでてください」
「ありがとう」
彼はそう言って近くにあったソファーにゆったりと腰掛けた。それを見てこの人やっぱりこういうところ慣れてるのかなって思う。
俺の家に初めて来る人は大体無駄にテンションが上がるかビビって縮こまるかのどっちかで、その後は俺を金づる認定するのか無駄にしつこく付きまとって来るやつとかもいるんだけどこの人はそのどっちでもない。
「お酒飲みます?」
「…まだ飲むの?」
「ショット2杯しか飲んでないんですってば」
「ふーん、弱いんだね」
ストレートに言われてなんだかものすごくグサッときたけど、苦笑いで返して冷蔵庫に入っていた酒類を適当にチョイスしてテーブルに並べた。ついでに簡易のワインセラーからワインも1本取り出す。
「どれ飲みます?」
「それ、頂こうかな」
俺が手に持っていたワインを指さした彼にワイングラスを渡して注いであげる。
種類なんてさっぱり分からないのに親が俺の家を酒置き場みたいにしてるから無駄に大量の酒が眠っていて、たまに邪魔に思うことがあるけど、こういう時に役立つから何も言わない。
俺も近くにあった缶ビールを手にとって一気に煽った。酒は一気飲みが1番美味い。
それを周りに話すと呆れられるけど、好きに飲むのが1番だと俺は思う。
「そういえば名前聞いてませんでした」
「知りたいの?」
「そりゃあ、呼ぶ時不便ですし」
今後関わることがあってもなくても名前くらいは知っておきたいと思う。もう一生こんな綺麗な人とは話せないかもしれないんだし…。
「月見 薫。君は?」
名前まで綺麗なんだな。
「星野 悟です」
「星野?……星野グループの社長の息子さん?」
「え……あー……そうですけど……」
「へー、お兄さんと似てないね」
この人兄貴のこと知ってるの?
話せば話すほど不思議な人だ。
会社関係の人なんだろうか。
星野と聞いて食いついてくる人は山ほど見てきたけどこんなにあっさりしてるのは始めてて困惑する。
「飲まないの?」
「……ちょっと酔ってきたみたいで」
飲むペースが目に見えて落ちてきている俺を月見さんが指摘してくる。当の本人はさっきから結構な量飲んでるはずなのにケロッとしているから驚く。
「夜にあんなとこで1人酒なんて……友達と飲んだりしないの?」
突然の話題に缶を上げようとしていた手が止まる。
「……ぼっちなんで」
「友達多そうなのに」
意外そうに言われて複雑な気分になった。
高校の時は俺も自分は友達が多い方だって思ってたけど、それは違うって思い知らされてからは人と深く関わるのを無意識に避けている節がある。
「……月見さんが俺の友達になってくれます?」
なんてって言って手に持っていた缶を煽った。
身体にアルコールがしみてなんとも言えないふわふわ感に包まれる。
冗談で言ってみたけど案外本気だったりする。
こんな風にリラックスして、俺の何にも驚かずに世間話をできるような、まさに月見さんみたいな人と友達になれたら絶対楽しいのにって思う。
「飲み過ぎだよ」
手に持っていた缶をそっと奪われてそれに少しだけムッとした。
確かに俺は酔ってるのかもしれない。
だからこんなこと思うのかも。
初対面の相手に友達になれなんて馬鹿みたいだけど、俺は自分が思うよりもかなり寂しかったのかもしれない。
「お願いします……いくらでも払うんで俺と友達になってください」
だからこんなことを口走ってしまう。
月見さんは驚いた顔をした後に、少しだけ困った顔をして立ち上がると俺の横に腰かけた。
「……いいよ」
意外にもあっさりとOKされて逆に俺が戸惑う。
彼は俺から奪った缶を豪快に煽るとテーブルに缶を置いた。
それを目で追いながら関節キスだなって安直なことを思う。
「ところで、友達ってどういう友達?」
「え……」
含み笑いをした月見さんに顔を覗かれて答えに迷った。
確かに友達ってなにかって考えた時にどうしたら友達になるのかなんてよく分からないなって気づく。
「……うーん……」
「考えてなかったの?」
「……はい」
「ふーん。俺はてっきりこういうことかと思ったんだけど」
「……!?」
月見さんの白くて長い指が俺の顎をそっと掴んで、状況の飲み込めない俺を置いてけぼりにして月見さんの綺麗な顔が俺の視界にドアップで映し出される。しっとりした柔らかい感触と、ビールとワインの混ざった独特の味が口内に広がる。
一瞬で離れた月見さんの顔を俺は間抜けな顔で見つめた。
「……へ?」
俺の口からとび出たのも間抜けな声だった
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ダブルスの相棒がまるで漫画の褐色キャラ
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
ソフトテニス部でダブルスを組む薬師寺くんは、漫画やアニメに出てきそうな褐色イケメン。
顧問は「パートナーは夫婦。まず仲良くなれ」と言うけど、夫婦みたいな事をすればいいの?
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
待てって言われたから…
ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる