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僕なんか……②

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「僕なんかにそこまでしていただかなくても大丈夫です。このままで本当に充分ですから」

生きていけないわけではない。

それに、そこまでしてもらう価値はきっと僕にはないと思う。社交界での僕の呼び名は『地味な方』だった。

それが僕だ。

花人らしい可愛らしい容姿も持ち合わせていない。なにもできない役立たず。お父様は僕を叱責するとき、必ずそう言っていた。

「馬鹿か。お前のためじゃない」

「……どういう意味ですか……」

「俺がしたいからするんだよ。自分の嫁に与えるものに無駄なものなんてなに一つない。だからお前は黙って受け入れとけ」

横暴な言い方なのに、デューク様がすごく優しい表情を浮かべているから怖くはない。

「……デューク様は僕のこと地味で不細工だって思いませんか?僕の弟は比べ物にならないほど綺麗で……髪も僕のくすんだ色とは違って光り輝く銀色なんです……」

デューク様の前だとつい本音を口に出してしまう。

ずっと劣等感に苛まれながら生きてきた。誰にもこんなに醜い感情を打ち明けられず、押し込んで飲み込んで、耐えてきたんだ。

どうして僕だけが我慢を強いられるのだろうか?

僕もお父様とお母様の息子なのに……ねぇ、どうしてなの?

考えても答えは出てこなかった。悩んで、悩み抜いて、結局愛も平等も諦めてしまった。

「弟がどうとかどうでもいいな。少なくとも俺はお前のことを地味だとか不細工だとは思わない。その髪の色も、銀狼みたいで綺麗だ。肌だって雪みたいに白くて、さっきはめちゃくちゃ触りたくなった」

「へっ……」

頬に手が伸びてきて、優しく撫でられる。心臓がカエルみたいに飛び跳ねていて、全身が熱い。デューク様の赤い瞳に愛おしさが混じっている気がするのは気のせいだろうか。

頬に触れてくる手が、おもむろに唇に移動する。

「一つだけ欠点があるとするなら、細すぎるところだな。壊しちまいそうで触れるのも怖い」

ゆっくりと手が離れていく。その手を無意識に目で追いかけてしまう。心臓が高鳴りすぎて痛かった。

デューク様と一緒にいると、いつもドキドキしてばかりだ。

「顔が赤いな。やっぱ男共にはお前の身の回りのことはさせられない。すぐに人を集めて使用人選びを行う。アルビーも参加して好きな人間を選べばいい」

「でも……」

「おい、さっき言っただろ」

「~~……わかりました」

圧に負けて返事をする。

「いい子だな」

蕩けるような笑みを向けられて、また顔に熱が集まって来る感覚がした。

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