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違和感

違和感②

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 頬を撫でられて、咄嗟に目を閉じるとレオニードの唇が俺の唇と重なって驚いた。
 目を開けて直ぐに離れた彼の唇を目で追うと、その形のいい唇が綺麗な笑みを形作る。

「満人と再会出来るなんて未だに夢のようだよ」

 そう言って俺の事をまた強く抱きしめてきたレオニードに微かに違和感を覚えた。
 彼は俺の事を見ている様で見ていないことに気がついたんだ。

「もう絶対離さない」
「その事なんだけど、たまには男爵家に顔も出したいし、ここに住むのももう少し考えさせて欲しいっていうか……」

 しどろもどろになりながら伝えると、レオニードの青い瞳が細められて、それを見て口を閉ざした。 
 彼が怒っているように感じたんだ。

「駄目だ」
「えっ、でも、そのくらい許してくれても……」
「それを許可して万が一居なくなってしまったら?」
「そんなこと無いって。俺の事信用してないのかよ?逃げたりしないし、離れたりしない」
「駄目だと言っている。マテオがどれだけ言葉を重ねようと私の目の前から一瞬でも消えることは許さない」
「そんなの無理だろ」

 そう思うのにレオニードは俺の話を受け入れてはくれなかった。それどころか益々抱きしめられる力が強くなって、彼のへの執着が少し異常だと感じる。
 確かに俺だって正孝のことを愛してるし、再び出逢えたことは嬉しい。だけど、レオニードと正孝は同じ人の様で違う人間だってちゃんと理解してる。だから、レオニードを好きになれるように努力しようとも思ってる。
 けど、レオニードにとっては違うのかもしれないと思った。マテオ=ルーカスという存在を満人の入れ物かなにかのように思っている気がする。

「レオニード、俺はマテオだよ。満人じゃない」
「……何を言ってるんだ。満人としての前世の記憶があるのだろう?」
「そうだけど、でも俺は満人とは別の人間だよ。だから前世あの時とは違うんだ。オレは逃げたりしないし、離れたりしない」

 前世で俺が正孝から離れたのは遠距離に耐えられなかったからだ。今は馬車を飛ばせば数時間後には簡単にレオニードと会うことが出来る。
 満人はきっと寂しかったんだと思う。寂しいけど、お互いに忙しいって分かってるから言い出せなくて、結局最悪の形で正孝を裏切った。
 だから、俺が正孝のことをまだ好きなのは、そういう罪悪感の影響も少しはあるんじゃないかって思ってる。

「マテオ、私は満人のことが好きなんだ」
「……それは分かってるよ」
「何も分かっていない。満人の前世の記憶を持つ君のことを私がどれだけ大切なのか君は一欠片も理解出来ていないんだろうな。君が1秒でも私から離れた瞬間に、満人と触れ合える時間が1秒減るんだ。私はそれが耐えられない」
「何言ってんだよ……」

 レオニードが俺の髪に優しく触れた。そしてふやけるような目で俺の事を見つめてくるんだ。その目を見返しながら何かが狂ってるって気がついた。
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