壁穴屋

うしお

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ディレーテの街

ディレーテの街 3

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ちなみに、この店においても、基本的に売り手を傷をつけてはならないという壁穴屋のルールに変わりはない。
むしろ、どこよりも厳しく売り手の身を守ろうとしている節さえある。
何より、他の店と違うのは、ルールを破った際の取り締まり方法と罪の償い方だろう。
偶然や事故ではなく、故意に傷つけようとした瞬間、買い手はその権利を剥奪され、罪人として即座に拘束される。
トレントによる拘束は一瞬で、罪人と認定されたものは決して逃げることはできない。
ルールを破ったものは、すぐにトレントに飲み込まれ、そのまま地下へと沈められる。
トレントに拘束された罪人は声を出すことも許されず、真っ暗なトレントの体中を通って断罪部屋に連れていかれるのだ。
罪人は目隠しをされたまま、その部屋で服を奪われ、無防備なちんぽやケツ穴を刃物で撫でられながら、売り手の味わっただろう恐怖を嫌というほど体験させられる。
そして、首から下の毛を、特にちん毛やケツ毛は一本残らず剃り落とされてしまう。
剃りきれなかった分は、一本ずつ丁寧に引き抜かれるという話で、ケツ穴まわりの特に剃りにくい部分の毛を抜かれる痛みのことを考えると、俺なら想像するだけでぞくぞくするだけだが、普通のやつならかなりきつい罰になるだろう。
とにかく、全身をつるつるにされ、ケツ毛を引き抜かれる痛みを堪えきれば、ようやく罰は終わりとなり、解放してもらえる。
まるで子どものようなつるつるの股間では、しばらく夜遊びもしにくくなるというものだ。

だが、それは警告にすぎない。
そんな子ども騙しの甘い罰で済むのは、初犯で未遂だったら、の話だ。
実際に傷をつけたものや、再犯の場合には、もっと重い罰が与えられる。
同じようにトレントに拘束され、つるつるにされたあと、そのまま壁穴屋で強制的に客を取らされることになる。
利用料は他に比べてかなり安く設定され、道具類の使用も無制限とあって、買い手はひっきりなしにやってくる。
罪の重さに応じて拘束される日数は変わるが、稼ぎはすべて被害者へと支払われることになっているため、どれだけ犯されたとしても、本人に売上金は一切入ってこない。
売り手の素質があれば、犯されることをそれなりに楽しめるだろうが、買い手としてしか利用してこなかったものが、すぐに楽しめるようになるわけもない。
大抵は、自分が犯されることを受け入れられず、泣き叫びながらケツ穴を犯され続けることになる。
まあ、傷がつかないように、しっかりと拡張作業をしてもらった上で、たっぷりの潤滑油も塗ってもらえるので、素質に目覚められれば、この罰も楽しめるようになるかもしれないが、それも媚薬なしのただの潤滑油ではなかなか難しいことだろう。

そして、常習犯になれば、もう平穏な人生には戻れない。
常習犯用の断罪部屋は、この広い壁穴屋の中でも一番端の方にあり、入口は貧民街にある小さな教会の中にひっそりと作られている。
そこに来るのは、教会の信者と貧民街の住人がほとんどで、普通の人は存在すら知らないだろう。
信者たちは、朝から夕方にかけて、ばらばらにやってくる。
彼らの目的は、この世にいる数多の罪人のために、ひたすら神へ祈りを捧げること。
ただ祈りを捧げるために、やってくるのだ。
直接、信者たちの目に、汚れた罪人が触れることはない。
彼らが見るのは美しい神の壁画であり、その壁画の下には祈りを捧げる際に唱える聖句が書かれた円盤とそれについた取っ手、罪の証を溜めるための袋がひとつぶらさがっているのが見えるだけだ。
だが、信者たちはこの美しい壁画の向こうに、救いようのない罪人がいることを知っている。
罪人は聖なる祈りによって、清めなければならない存在だということも。
訪れた信者たちは、聖句を唱えながら、壁に埋め込まれた円盤の取っ手をまわす。
繊細な音色を奏でるそれは、神に捧げられる音楽であり、聖句を彩る旋律である。
時に早く、時にゆるやかに、神に捧げるに相応しい音色を奏でるためにまわされる。
奏でられる音色と聖句により、罪人の内側からあふれ出した罪は、円盤の下にある贖罪の器を満たしていく。
満たされた罪の証は、神父によって神の御許に届けられ、浄化されることになっている。
罪を流すことで、罪人の体は少しずつ清められていくのだ。
毎日それを繰り返すのが、信者たちにとって最も大事な儀式である。
この教会では、聖なる祈りによって、愚かな罪人から犯した罪を吐き出させることができるとされている。
そして、すべての罪を吐き出した罪人は神に許され、またそれを手伝ったものも同様に救われる、とも。
神から与えられる救いは、俺たちもよく知るものの形をしている。
だから、信者たちはその罪人を救うため、また自分を救うために、聖なる祈りを捧げにやってきて、この円盤を熱心にまわし続ける。
老いも若きも男も女も、誰もが救いを求めて生きている。
その美しい壁画の向こうで行われているのが、本当は恐ろしい拷問のようなものだと知ったとしても、それが救いになるのならば、彼らは迷うことなく円盤をまわし続けるだろう。
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