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番外編『囚われのメイド姫』
番外編『囚われのメイド姫』2
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スヴェンは、騎士と同じくらいたくましい体にぴったりの美しいドレスを身にまとった店主と一緒に、馬車に乗って移動した。
移動した先は、もちろん手紙で奴隷売買が行われると書かれていた貴族屋敷だ。
どうやら、あの情報は本当だったらしい。
スヴェンは、店主に連れてこられたのが、自分ひとりでよかったと思った。
騎士団が突入するようなことになれば、他のものまで守らなければならなくなる。
店主は貴族と同じく、平民を食い物にする悪党であるようだし、守ったり手加減してやる必要はないだろう。
これは、決して、用意されたいかがわしいメイド服に対する八つ当たりでない。
あくまでも、騎士団の一員として正しいことをしているだけだ。
ただ、いざ事が起きた際に、店主がスヴェンの近くにいるようならば容赦なく捕らえてやろうとは思っている。
これからの流れを考えれば難しいかもしれないが、思うだけなら自由だろう。
馬車の中でぶるりと震えた店主を横目に、スヴェンは手首に巻きつけた魔術媒体を優しく撫でた。
「新人のマリーちゃんです。どうぞ、可愛がってあげてくださいませ~」
「……マリーです」
店主に言われたまま、マリーと名乗れば鼻の下を盛大にのばした疑惑の貴族に抱き寄せられ、膝の上に乗せられた。
恐ろしいくらい手が早い。
もう、太ももにまで手がのびてきている。
スヴェンとは、何度も顔を合わせているはずなのに、気付いている様子は微塵もない。
それが、化粧の効果なのか、それとも、女装のおかげなのか、非常に気になる。
スヴェンは、そこまで別人になっているとでもいうのだろうか。
「甘いものは好きかね? それとも、こちらのお酒を飲んでみるかね?」
太ももをわさわさと撫でながら、小さく刻んだ果実を口に運んできたり、自分の飲んでいるグラスから口移しで飲ませようとしてくるのをどうにかあしらう。
普段の威厳たっぷりな姿からは想像もできない堕落ぶりだ。
三十男のスヴェンだから耐えられているが、スヴェンではなく本当に若い少年が、こんな目に合わされていたかもしれないと思うとふつふつと怒りがわいてくる。
一体、どれだけの少年たちが、この男の犠牲になってきたのだろう。
余罪についてもしっかり調べあげなくてはならない。
たっぷり罪を上乗せにしてやろう。
スヴェンは、いやらしく蠢く貴族の手に太ももを撫でられながらも、周囲に目をやり配置されている私兵の数を数えていた。
このあと突入してくる後続班のためにも、できるだけ情報は集めておきたい。
できれば、どんな武装をしているかなどもわかれば行幸である。
そのせいで、少々接客がおろそかになっていたらしい。
「……マリー」
名前を呼ばれただけでぞくりと震えた。
その声は、やけに近く、耳のすぐそばから聞こえた気がした。
スヴェンは、周囲にばかり向けていた視線を、貴族の方へと戻して驚く。
いつの間にか、スヴェンは男の腕の中にすっぽりと抱え込まれていた。
「キミは、悪い子だな。私の膝の上で、他の男に目移りするだなんて。私は、ここにいる誰よりも貴い身分なのだよ。私以外の男と寝ようなんて、絶対に許さないからね」
「ち、違います……そ、そんなこと」
スヴェンの頬に、顔を擦り付けてきた。
酒臭い息が、スヴェンの頬を撫でていく。
気持ちが悪い。
だが、逃げるわけにはいかなかった。
うっかり反撃してしまわないよう、体をぎゅっと強ばらせたスヴェンを、貴族の男は楽しそうに笑いながら見ている。
ここまでやっても、スヴェンが逃げ出さないのを見て、自分に都合がいいように考えているのだろう。
貴族の男は、逃げないスヴェンをどう勘違いしたのか、にたりと笑いながらゆっくりとスヴェンの頬を舐めはじめた。
最悪だ!
「私はこれから仕事に行かなくてはならないからね。その間、マリーには私の部屋で待っていてもらうよ。報酬はたっぷり払ってある。まあ、それでキミの初物が味わえるのなら安い買い物だったけれどね」
太ももどころか、その奥にまで入り込んできた手に、ぞくぞく震えながらもスヴェンは耐えた。
足の付け根から、さらに奥を狙う手に鳥肌が止まらない。
だが、ここで怪しまれてしまっては、この男に逃げられてしまう。
「本当に、違うんです……み、みんなが、マリーを見てるのが、恥ずかしくて……ごめんなさい、旦那様」
スヴェンは男の胸にすがりつきながら、手を入れられて持ち上がるスカートを必死に押さえた。
これ以上、この男の手を奥まで侵入させたくはない。
いくら男だからといって、触り放題にさせたくはなかった。
なにしろ、とんでもなく気持ち悪いのだ。
激しく鳥肌が立ってしまって、このまま耐えられる気がしない。
スヴェンは、恥ずかしがっているかのような声を出し、一芝居うつことにした。
もちろん、スヴェンは心の中で「さっさと離せ、ばか野郎」としか思っていない。
「……ぉ、おお、そうか、そうだったのか……! マリーは恥ずかしがりやなのだな。確かに、可愛らしいマリーを皆に見せるのはもったいないな。この続きは、ふたりきりで楽しもう。それならどうだ? 恥ずかしくないだろう?」
「旦那様、だけなら……本当に、ふたりきりになれますか?」
「おお、おお、もちろんだとも! マリーとの約束だからな、絶対にふたりきりで楽しむと約束するぞ」
そして、でれでれになった男に連れられてやってきた部屋で、スヴェンはこの首輪をつけられ、ひとりで放置されたのだった。
移動した先は、もちろん手紙で奴隷売買が行われると書かれていた貴族屋敷だ。
どうやら、あの情報は本当だったらしい。
スヴェンは、店主に連れてこられたのが、自分ひとりでよかったと思った。
騎士団が突入するようなことになれば、他のものまで守らなければならなくなる。
店主は貴族と同じく、平民を食い物にする悪党であるようだし、守ったり手加減してやる必要はないだろう。
これは、決して、用意されたいかがわしいメイド服に対する八つ当たりでない。
あくまでも、騎士団の一員として正しいことをしているだけだ。
ただ、いざ事が起きた際に、店主がスヴェンの近くにいるようならば容赦なく捕らえてやろうとは思っている。
これからの流れを考えれば難しいかもしれないが、思うだけなら自由だろう。
馬車の中でぶるりと震えた店主を横目に、スヴェンは手首に巻きつけた魔術媒体を優しく撫でた。
「新人のマリーちゃんです。どうぞ、可愛がってあげてくださいませ~」
「……マリーです」
店主に言われたまま、マリーと名乗れば鼻の下を盛大にのばした疑惑の貴族に抱き寄せられ、膝の上に乗せられた。
恐ろしいくらい手が早い。
もう、太ももにまで手がのびてきている。
スヴェンとは、何度も顔を合わせているはずなのに、気付いている様子は微塵もない。
それが、化粧の効果なのか、それとも、女装のおかげなのか、非常に気になる。
スヴェンは、そこまで別人になっているとでもいうのだろうか。
「甘いものは好きかね? それとも、こちらのお酒を飲んでみるかね?」
太ももをわさわさと撫でながら、小さく刻んだ果実を口に運んできたり、自分の飲んでいるグラスから口移しで飲ませようとしてくるのをどうにかあしらう。
普段の威厳たっぷりな姿からは想像もできない堕落ぶりだ。
三十男のスヴェンだから耐えられているが、スヴェンではなく本当に若い少年が、こんな目に合わされていたかもしれないと思うとふつふつと怒りがわいてくる。
一体、どれだけの少年たちが、この男の犠牲になってきたのだろう。
余罪についてもしっかり調べあげなくてはならない。
たっぷり罪を上乗せにしてやろう。
スヴェンは、いやらしく蠢く貴族の手に太ももを撫でられながらも、周囲に目をやり配置されている私兵の数を数えていた。
このあと突入してくる後続班のためにも、できるだけ情報は集めておきたい。
できれば、どんな武装をしているかなどもわかれば行幸である。
そのせいで、少々接客がおろそかになっていたらしい。
「……マリー」
名前を呼ばれただけでぞくりと震えた。
その声は、やけに近く、耳のすぐそばから聞こえた気がした。
スヴェンは、周囲にばかり向けていた視線を、貴族の方へと戻して驚く。
いつの間にか、スヴェンは男の腕の中にすっぽりと抱え込まれていた。
「キミは、悪い子だな。私の膝の上で、他の男に目移りするだなんて。私は、ここにいる誰よりも貴い身分なのだよ。私以外の男と寝ようなんて、絶対に許さないからね」
「ち、違います……そ、そんなこと」
スヴェンの頬に、顔を擦り付けてきた。
酒臭い息が、スヴェンの頬を撫でていく。
気持ちが悪い。
だが、逃げるわけにはいかなかった。
うっかり反撃してしまわないよう、体をぎゅっと強ばらせたスヴェンを、貴族の男は楽しそうに笑いながら見ている。
ここまでやっても、スヴェンが逃げ出さないのを見て、自分に都合がいいように考えているのだろう。
貴族の男は、逃げないスヴェンをどう勘違いしたのか、にたりと笑いながらゆっくりとスヴェンの頬を舐めはじめた。
最悪だ!
「私はこれから仕事に行かなくてはならないからね。その間、マリーには私の部屋で待っていてもらうよ。報酬はたっぷり払ってある。まあ、それでキミの初物が味わえるのなら安い買い物だったけれどね」
太ももどころか、その奥にまで入り込んできた手に、ぞくぞく震えながらもスヴェンは耐えた。
足の付け根から、さらに奥を狙う手に鳥肌が止まらない。
だが、ここで怪しまれてしまっては、この男に逃げられてしまう。
「本当に、違うんです……み、みんなが、マリーを見てるのが、恥ずかしくて……ごめんなさい、旦那様」
スヴェンは男の胸にすがりつきながら、手を入れられて持ち上がるスカートを必死に押さえた。
これ以上、この男の手を奥まで侵入させたくはない。
いくら男だからといって、触り放題にさせたくはなかった。
なにしろ、とんでもなく気持ち悪いのだ。
激しく鳥肌が立ってしまって、このまま耐えられる気がしない。
スヴェンは、恥ずかしがっているかのような声を出し、一芝居うつことにした。
もちろん、スヴェンは心の中で「さっさと離せ、ばか野郎」としか思っていない。
「……ぉ、おお、そうか、そうだったのか……! マリーは恥ずかしがりやなのだな。確かに、可愛らしいマリーを皆に見せるのはもったいないな。この続きは、ふたりきりで楽しもう。それならどうだ? 恥ずかしくないだろう?」
「旦那様、だけなら……本当に、ふたりきりになれますか?」
「おお、おお、もちろんだとも! マリーとの約束だからな、絶対にふたりきりで楽しむと約束するぞ」
そして、でれでれになった男に連れられてやってきた部屋で、スヴェンはこの首輪をつけられ、ひとりで放置されたのだった。
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