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しおりを挟む休憩がてらに交代で審判をして、追いかけっこでまた走る。ひとっ走り終えた頃には、はしゃぎすぎてエミルはふらふらになっていた。ルトもみんなも汗だくだ。
「あーっつい! 大浴場で湯あみしないと」
「おかげで、ぐっすり寝れそうだよ」
「つーかーれーたーよぅー」
夜冷えした大地に、ばたんばたんと倒れこむ。汗だくの面々が、連なって大の字になった。みんな地面に伏せ、服の隙間からぱたぱたと夜風を通す。限界に達したようで、エミルは声も出ていない。
やりきった感が満載だ。円を描くように倒れ、全員が息を整え、星が輝く大空を仰いだ。大地に寝そべるユージンが、大声を張った。
「本当に明日、国に帰るんだな……やっと……やっと! 俺たちは、ついに自由だ!」
「自由だ!!」
「自由だ!!!」
続く絶叫が、いつまでも闇夜にこだまする。その様子を楽しげに聞き、ルトはむくりと起き上がった。
「俺ね。この国に来て、本当に辛いことばかりだったけど。でも、みんなとこうして会えたことはすごく嬉しい。国に帰っても、元気でいてね」
「もちろん! 僕もだよ。みんなに会えてよかったぁ。本当に本当だよ。みんながいなかったら、僕はトンミみたいになってたかも」
「だな」
「なぁ俺たちさぁ……。ってか、ヌプンタに戻ったらみんなどうする? ばらばらになっても、またこうして一緒に会おうよ」
ルトの言葉にむくりむくりと起き上がって、それぞれの声が重なる。最後を締めくくったラザに、元気いっぱいのパーシーがすばやく食いついた。
「わっ、いいねぇ! それ賛成。僕はね、ムスタセ村にいたんだ。兄弟がいっぱいいたんだけど、あんまり裕福じゃなくて。父さんが布生地を作って、母さんが仕立てて。手伝いながら仕上がった服を売りに出てたの。みんなに会いたくなったら、いつでも生地を持って会いに行くよー!」
ちゃっかり商売もする、爛漫なパーシーに笑いが起こる。続いて、両手を後ろに回し、背中を反り返らせたユージンが、満天の星空を見上げた。
「そうだなぁ。俺は……どうすっかな。俺んとこはさ。パーシーと違って金持ちなんだよな。街じゃあ名の知れた家で。出来すぎた兄貴と、姉貴がいたもんだから、家業は十分成り立つし。ヌプンタから突然寄越された死の通知で、街がめちゃくちゃになってさぁ。ののしり合い小競り合いだ。父が役人だったから、困り果てて、やつれた姿が見るに堪えなくなって……、俺が自分で出てきたんだ」
だからもう実家に戻らなくても、このままどこかへ放浪するのも面白そうだ。清々しい夜の空気を、ユージンは胸いっぱいに吸いこんだ。
ラザのところは、ルトと同じ小さな村という。適齢期の少年がラザしかいなくて、有無を言わさず連れ出されたと、ラザが悔しそうに吐き捨てた。
「僕はお父さんと、二人暮らしだったの。お母さんは、ちっちゃい頃に死んじゃって。お父さんが、ずっと僕を、育ててくれてたんだけど……」
エミルがうつむいて肩を落とした。きっとエミルは村で弱者だったのだ。貧乏くじを引かされたのだろう。ルトと、状況は同じではないけれど、似たり寄ったりというところか。
しんみりした空気が流れ、パーシーが目を輝かせてルトを見た。暗い空気を、いつも払拭してくれるのは、お日さまみたいなパーシーだ。
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