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体育祭 その3

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次の日私は身体の節々が張るような痛みで起きた。

どうやらなれない運動をしたせいで全身筋肉痛になったらしい。


「湿布塗っていこ……」


さすがに賀川さんも待っているだろうから行かないという考えはどこにもなかった。


筋肉痛で思うように足が動かないものの、私は気力と根性で何とか待ち合わせの場所に向かうことが出来た。


「さやか殿!待っておったぞ!さて、今日も走るぞ!とはいえ、恐らくもう身体にきてると思うから今日はゆっくり走るぞ」


賀川さんの一言に私は驚いた。

彼女には既に筋肉痛になっていることがバレていたのか。それとも筋肉痛になることを予想出来ていたのか。

恐らくどちらかとは思うけど……


「お気遣いありがとう。でも私は大丈夫よ賀川さんの走りやすい速さで走ってちょうだい」


なんて私は馬鹿なのだろうか。

本当はもう限界に達しているというのに自分のプライドが邪魔をしてまだ行けると言ってしまった。


「なぁ、さやか殿。そなた今嘘ついていないか?」

「我は早く走ってもいいがさやか殿は無理をしているように思う。確かに筋肉は鍛えるときに少し痛いくらいがいいとはよく言うが、運動を楽しめないと運動がキツく感じるぞ?」

「それに、我はさやか殿と一緒に走りたいからここにいるしな」


「じゃ……じゃあゆっくり走ろうかしら、今日はそんな気分だわ」


賀川さんの優しさを感じたが素直になれずに今の自分にはこう言うことしか出来なかった。


その後は本当にゆっくり走ってくれて筋肉痛で痛かった足でも走ることが出来た。


それから3日間、毎朝同じ時間に走った。

3日も走ると自然と走れる距離も走るスピードも早く長くなっていた。


体力が少しずつついてきたのだろう。

いつの間にか走ることに達成感を感じるようになっていた。


「走るのって気持ちいいのね」


「おお!さやか殿もこの感覚がわかるようになったか!」


体育祭まであと2日。


こんなにも遅くて、体力もなかった私に嫌な顔せずむしろ楽しそうに走ってくれた彼女に感謝だ。


「明日だがどうする?」

「体を休める時間に使ってもいいし、いつもの様に走ってもいいが」


「走りましょう。ここまで頑張ったんだし」


「そうか。じゃあまた明日!」


最近ふと思うことがある。

賀川さんといると不思議と安心感を持つようになった気がする。

今もそうだ。

多分1人だったら途中で諦めてただろうし、そもそも走ることが楽しいとは思えなかっただろう。

彼女には不思議なパワーがある。

厨二病であるということを除けば優しいしいい子なのにな……。

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