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夏休み その6

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都会のオフィスビルだらけだった景色はいつの間にかキャンパスのように真っ白な家が建ち並ぶ高級住宅街の街へと景色を変えて行った。

正直このキャンパスのような真っ白な風景は確かに空が綺麗に見えるけど落ち着きはしないから苦手だった。


この周辺は5本の指の中に入るほど有名な高級住宅街。せっかく学校にも内緒にしてもらっていたが、これではバレてしまうのではないか。

そんな、不安を持つのには実は理由がある。


中学生の頃、普通に大学に付属している学校に通っていたが、中には学業を熱心に行ってやっとの思いで同じ中学校に通っていたクラスメイトもちらほらいた。

私は、本当は自分の親の地位とか関係なくただ、1人の人間として見て欲しかったがやっぱり中にはお金目的に近づいてきた者やお金があることをよく思っていない人も少なからず見てきた。

だからこそ、私は西城財閥の娘ということを隠したかった。


そんな不安を抱えたまま家は着実に近づいていく。


「お前の家ってまさかここか?」


とうとう家に帰ってきてしまった。

真っ白なキャンパスのような住宅街の中に一際目立つ大きさの家がある。

大きすぎて悪目立ちしているその家が私の家だ。


「そう。ここが私の家よ」


「でけぇぇぇぇぇ」

「お主の家はお城なのか!?」

「こんな家漫画かアニメでしか見たことないぞ!」


こんな反応になるのも当然だと思う。

何故ならこの家、5万人くらい入るドームの2つ分くらいの敷地なのだから……


身長よりも高いガッチガチの門はカメラが大量に付いていてほぼ顔パスで開けることが多い……。


家に入るとカシミヤ調のレッドカーペットが真っ直ぐ引かれていて20人程だろうか、ここの家で働いているお手伝いさん達がずらーと並んでお迎えをしてくれた。


正直、この家の落ち着かない理由ってこれもあるんだよなぁ……。


ザッッッ

「おかえりなさいませ、さやかお嬢様!」


ずらーと並んだお手伝いさんが一斉に声を合わせて言った。

さすがにこの光景で隠し事がバレてしまったし、お金持ちが普通の学校にいるのは変だとかって言うのかな……



そう思いながら私は隣にいる賀川さんの方をそっと向いた。


「えっ?」


思わず私は声に出してしまった。


「すげぇーー!初めて見たぜ!こんな光景!」


隣にいた賀川さんは目をキラキラと輝かせながらこの異様な光景を見ていた。


「驚かないの?それに私身分隠してたのに……」


「そりゃあ驚いたよ。でもそれ以上にカッコイイと我は思うぞ!」

「そういえばさっきお嬢様って……」


すると、お手伝いの1人がこう言った。


「こちらにいらっしゃいますのは西城財閥の次女に値します。さやかお嬢様でございます。そしてこの館は西城財閥の社長でございます西城祥一郎の住居であり、さやか様の育った地でもございます。つまりはさやか様は正真正銘のお嬢様ということでございます」


「マジか!すげーぞさやか殿!カッコイイじゃないか!本物のお嬢様なんて!」


今まで色んな人と出会っては来たがこんな反応をされたのは初めてで私は少し驚きを隠すのに精一杯だった。


「おかえりなさい、帰ってきたのね」


正面の大きな階段から降りてきたのは私のお母さんだ。

姿が若く見られすぎてよく、20代とか姉妹とかと間違えられるがこれでも今年40になるおばさんだ。

ツヤツヤの肌にスタイルのいい体型、細くゆるふわウェーブを描く髪は私とそっくりだ。


「こんにちは、賀川真白と申します」


「こんにちは、さやかの母です。いらっしゃい賀川さん」

「早速だけど私から渡すものがあります!実は今日もうひと旅してもらおうかなと思ってます!」


そう言って渡されたのは1つの封筒と2人分の切符だった。

切符を見ると小さい頃によく行った山の中の別荘の最寄り駅だった。


「名付けて、絆を深めろ、夏の2人旅プロジェクト!」


1人ノリノリで進行を進めるお母さんを見て私は思考が一時停止していた。


突然過ぎるから賀川さんも置いていかれていると思って横を見たら賀川さんは乗り気でキラキラした目をしていた。


どうやら乗り気では無いのは私だけなようだ……。


うっすら感じてはいたが、この2人、性格が似ている……。




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