フェリペとアラゴン王家の亡霊たち

レイナ・ペトロニーラ

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25、ペドロ2世の家族

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「私の父はアルフォンソ2世、母はカスティーリャ王女サンチャであった」

 馬車の中でウトウトしていると、次はペドロ2世の声が聞こえてきた。ペドロ2世はラミロ2世のひ孫にあたる。1174年に生まれて1213年、39歳で亡くなっている。僕の部屋で亡霊として現れた時はいつも甲冑を身に付けていた。レコンキスタの英雄は声だけ聞いていても勇ましい。もちろん今は馬車の中なので姿は見せず、声も他の人には聞こえない。

「アルフォンソ2世の父はバルセロナ伯ラモン・バランゲー4世で母はラミロ2世の娘でアラゴン女王のペトロニーラだ」
「詳しいではないか」
「アラゴンの歴史についてはかなり詳しく調べてノートに書いておいた」
「では私の兄弟については知っているか?」
「5歳年下の妹コンスタンサが神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世と結婚して、ハインリヒ7世が生まれている」
「そう、ハインリヒ7世は私の甥にあたる」

 アラゴンの王女コンスタンサについては、僕はハインリヒ7世と一緒に会いに行ったことがある。その時ハインリヒ7世はまだ反乱を起こす前の若い姿になっていて、仮面をつけてなく目も見えていた。僕たち2人はフリードリヒ2世と結婚する前、まだハンガリー王妃だった頃のハインリヒ7世の母に会っているのだが、そのことは2人だけの秘密にしている。

「他に6歳下の弟アルフォンソはプロヴァンス伯となり、16歳下のフェルナンドはモンテアラゴン大修道院長になった。それから8歳下のレオノールはトゥールーズ伯レーモン6世と結婚し、12歳下の妹サンチャはトゥールーズ伯レーモン7世と結婚している」
「すごいね」

 ペドロ2世の時代、アラゴンは大国となっていろいろな国と婚姻関係を結んでいる。

「私自身については、1196年に22歳で即位している。1210年から特にレコンキスタに力を入れ、バレンシアの国境要塞をいくつか奪い、1212年にはカスティーリャのアルフォンソ8世、ナバラのサンチョ7世と一緒にナバス・デ・トロサの戦いに参戦して、ムワッヒド朝アミール・ムハンマド・ナースィルを打ち破った」
「結婚はどうしたの?」

 僕は心配になって聞いてみた。ペドロ2世はラミロ2世の兄アルフォンソ1世とよく似ている。戦争に夢中になり過ぎて結婚がおろそかになり、後継者が残せなかったというパターンだ。もちろんペドロ2世には息子ハイメ1世がいたことを僕は知っているが、結婚年齢と目的が気になる。

「1204年、30歳の時にモンペリエ領主ギレム8世の娘で女子相続人のマリア・デ・モンペリエと結婚した。彼女はその時22歳で離婚歴があった」

 アルフォンソ1世と同じである。領土目的で女王や女子相続人と結婚し、しかも王は何度も戦場に行っている。これではたくさんの子に恵まれた家族になるのは難しい。ハイメ1世が生まれたことが奇跡かもしれない。






「1211年、私は3歳になる息子をシモン・ド・モンフォールに人質同然に差し出した。プロバンスを巡る権力闘争の中、義理の弟になるトゥールーズ伯レーモン6世から援軍を求められ、アルビジョア十字軍との戦いを避けようとしたためだ。だが、十字軍との戦いは避けられず、私は1213年にトゥールーズ郊外ミュレの戦いで戦死した。その時はカタリ派に荷担したとされ、教皇に破門もされている」

 カタリ派についての詳しい話やアルビジョア十字軍について、僕にはよくわからない。でもレーモン6世もカタリ派に傾倒したわけではなかった。シモン・ド・モンフォールは悪名高い第4回十字軍にも参加している。第4回十字軍の戦士はキリスト教徒の国を攻撃したということで教皇から破門されているが、結局は許されている。そして教皇は本来の目的地であるエルサレムに向かうように促したが、ほとんどの戦士は征服した領土にそのまま居座ってしまった。そしてエルサレムに向かうのではなく南フランスのカタリ派弾圧のために作られたアルビジョア十字軍、今度は異端者を改宗させるという確かな目的がある。そしてシモン・ド・モンフォールはその中心にいた。

「私は別にカタリ派に傾倒したわけではなかった。ただ、義理の弟レーモン6世を助けようとしただけだ。息子のハイメを差し出してまでして戦争を避けようとした。だが、シモン・ド・モンフォールは十字軍という名を与えられ勢いがあった。私はナバス・デ・トロサの戦いでは英雄だったが、南フランスでは異端に味方した異端者にされてしまい、そこで戦死した」
「ミュレの戦いでのペドロ2世は無謀だったという評価もあります」
「それは後の時代での評価だ。ナバス・デ・トロサの戦いでもっと無謀なことをしていても、敵がイスラム教徒で勝っているのだから英雄とみなされる。逆にミュレの戦いでは、たとえその場で戦死しなくてもどこか別の場所で死んでいたに違いない。教皇に逆らっているのだから・・・」

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