上 下
482 / 484

誰に似ている?

しおりを挟む
コンコン!
「王様、カップをお持ちいたしました」
「ああ、入ってくれ」
「失礼します」
二人のメイドがポットとカップ、そしてお菓子みたいなのを編み籠の中に入れて持って来るのを俺達は見ていた。
テーブルの上に置いた一人のメイドが王様に声をかけていた。
「あの…ポットの中に入れます紅茶の葉は御座いませんが…」
「ああっ、必要ない。缶の中に葉が入っている」
チラッとテーブルの上に置いている缶を見たメイドは、納得したような顔で王様に頭を下げていた。
「すみません、この缶の中からスプーン二杯ぶんポットの中に入れてください」
「はい、分かりました…」
俺はメイドに茶の葉が入った缶を開けて渡してやると、メイドが驚いた顔で缶の中をガン見して、不安そうな顔で俺の方ではなく王様の方へ顔を向けていた。
「どうした?」
「…あ、あの…王様、こちらの葉で宜しいのでしょうか…」
「ああっ、その葉はウィル王子が持って来てくれた物だが?」
「……」
俺の方を見たメイドの顔から推測して『これの何処が紅茶なのよ?!どう見ても薬草じゃないの!』と言いたそうな顔で俺を見ているような…天使のウィルに向かってそんなイヤそうな顔をしなくてもな……
「何か言いたそうだな」
「えっ!?あ、い、いえ…わたくしは何も…」
ジル王子の声を聞いて、メイドはビクッと身体が動き慌てたように頭を下げ顔色が真っ青になっているのが見えた。
「えっと…説明していませんでした。これは『お茶』と言って見た目は薬草に見えるけど、けっして怪しい飲み物ではありませんから大丈夫です」
ニコッとウィルスマイルを見せた俺は完璧な説明をしたとウンウンと頷いた。
「…そのように、怪しい葉に見えるのか?」
「大丈夫です。父様、健康茶と思ってください」
「…健康茶…そんなに私は老けて見えるのか?」
「へ」
どんよりと落ち込む王様に俺は焦った。
「と、父様は老けていません!逆に若く見えて僕が目を覚まして父様を見た時は『本当に僕の父様?!』って、若いから驚きました~っ」
「そうか、そうか、私は若く見えるのか?!」
「は、はい!シェル兄様にそっくりです!!」
「…シェル王子に似ているのか?」
「えっ…親子だから…」
「そうだな、親子だな。では、ジル王子と私は似ているのか?」
「へ?!」
(め、めんどくさいんだけど、なんで親子で何処が似てる?みたいな会話になるんだよ!?)
「え…え~…っと……」
俺は王様とジル王子を見比べてみた。
(ジル王子はどっちかと言うとお母さん似かな?性格が何を考えているのか分からない所がシェル王子似か?う~~ん…)
「どうだ?ウィル」
(そんな何かを期待するような目で見られても困るんだけど…)
「……まだ、ジル兄様とはお話し始めたばかりだから…」
「フッ、今から私の事を知ると良いだろう」
「えっ…」
ジル王子からの予想外の事を聞いた俺は、驚きと笑みを見せるようになったジル王子に戸惑っていた…
「……あの…王様…」
「ん、おおっ!?すまないそなた達を忘れていた」
「……」
「……」
手に持つお茶の葉をポットに入れて良いのか分からずに待つていたメイド二人は、今か今かと王様から声をかけてもらうのを待つていただろう…王様から『忘れていた』と言われ、メイド達二人の胸の内の心情を聞くのが怖いと思うのは俺だけだろうな…



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

BLドラマの主演同士で写真を上げたら匂わせ判定されたけど、断じて俺たちは付き合ってない!

京香
BL
ダンサー×子役上がり俳優 初めてBLドラマに出演することになり張り切っている上渡梨央。ダブル主演の初演技挑戦な三吉修斗とも仲良くなりたいけど、何やら冷たい対応。 そんな中、主演同士で撮った写真や三吉の自宅でのオフショットが匂わせだとファンの間で持ち切りに。 さらに梨央が幼い頃に会った少女だという相馬も現れて──。 しゅうりおがトレンドに上がる平和な世界のハッピー現代BLです。

天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)

黒崎由希
BL
   目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。  しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ? ✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻  …ええっと…  もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m .

結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい

オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。 今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時――― 「ちょっと待ったー!」 乱入者の声が響き渡った。 これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、 白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい そんなお話 ※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り) ※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります ※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください ※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています ※小説家になろうさんでも同時公開中

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

処理中です...