兄たちが弟を可愛がりすぎです

二人の約束

「私がお前に伝えた事を覚えているか…」
優しい目を向けるジル王子は、俺に馬車の中での事を言っているのだと分かるし…あの時は、すぐに城に着いてしまったから会話も途中で終わったんだと思う…
「…ぅ…あ、はい…でも…何を話せばいいのか分からなくて…」
「お前を困らせるつもりはなかったが、お前が私と会話を交わす事が嬉しく思い勢いで伝えたいと思った。お前の意思を無視して私はあのような行動を取ってしまったが…ウィル」
「え、は、はい…？」
「私の気持ちは変わらない、少しでも私を頼ってくれたら嬉しく思う」
「……」
頬を触っていた手が離れた。
（頼っても良いって言うのはワガママを聞いてくれるって事かな…？城下町に行きたいと言ったら連れて行くとか、俺と同年代の騎士と遊びたいとか、他の国へ行ってみたいとか言ったら聞いてくれるのかな？）
「あの…ジル兄様、今から頼っても良いのですか？」
驚いたジル王子の顔は、眉間にシワを寄せているのでも不機嫌な顔を見せる事も無くクスッと口元が笑う顔で見下ろしていた。
「…何かあるのか？」
「他の国にも行ってみたいです」
「他国にか？…何故他国に行きたいと思った」
「えっ、えっと…勇者がいる国に行ってみたいな～と思って…ザック兄様から昔、勇者がベルスタ王国に立ち寄った話しを聞いて勇者が召喚した国に興味があったのです」
（俺と同じ世界から来たのか知りたいのもあるけどな…）
「…勇者か…確かにお前でなくても勇者には私も興味がある」
「えっ、ジル兄様が勇者に会いたいと思うのですか？」
「どれほどの腕前なのか試したいと思っている」
不敵な笑みを見せるジル王子を見ていた俺は思った。
（魔物討伐戦に先頭を進んで行くタイプだろうな…もし、勇者と一緒に魔物退治すると、どっちが多く魔物を倒すのか競争をしそうな感じだよな…）
「……まずは、お前の足を治すのが先だ。他国に行くには手続きにも時間がかかる事もあるが、まずは体力をつけるのが先だ！」
「…そうですよね…」
苦笑いを見せた俺に歩く事が出来た先には、他所の国へ行く約束をしてくれた。
勿論、ジル王子も一緒だと条件付きだけど…まだ先の話しだけどさ、旅行に行く何ヵ月か何年か先の楽しみだと思う事にした。