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シェル王子の部屋⑥

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コポコポコポ…とお茶の葉が入ったポットにお湯を注ぐ怪しいメイドではなく、髪を束ねていない少し乱れたガウンを着てメイドの替わりにお湯を注ぐシェル王子の姿があった。
「シェル兄様にお湯を注いで貰ってありがとうございます」
「良いですよ、お湯の量はこれで良いのですか?紅茶と変わらない入れ方にしましたが」
「大丈夫です。シェル兄様が入れたお湯ですから…はあ~良い匂いですね~」
「…そうですね…お茶の濃いさと言いましょうか、そんな匂いがしますね…紅茶と同じ様にポットに蓋をしまして一、二分待ちましょう、それでいいですか?」
「はい、シェル兄様に任せます」
「…責任を感じてしまいますね…」
苦笑いを見せるシェル王子はポットに蓋をして暫く待つ事にした
「シェル兄様も自分で紅茶を入れるのですか?手付きが慣れているように見えたから」
「城内にあります庭園で紅茶を入れていましたね」
「メイドじゃなくてシェル兄様が自分で?」
「私が紅茶を注ぐのは令嬢達にです」
「へえ~」
「あっ、紅茶を注ぎましたのは彼女達から言われましたから…あ!お茶を注ぎましょうウィル」
シェル王子は、苦笑いで慌てたようにお茶の入ったポットを持ち二つのカップに注いでくれた。
(そんなに慌てたようにしなくても良いけどな~、令嬢達の目の前で紅茶を入れるシェル王子の姿見てみたいかも…笑顔で『私が入れました紅茶が口に合いますか分かりませんが』とか言っていたかも)
「…どうしたのですか?一人で笑みを見せていますが…」
「えっ、なんでもありません兄様」
シェル王子は首をかしげテーブルにお茶を入れたカップを置き
「私が入れましたお茶ですが口に合いますか分かりませんが…」
「ぶふっ!」
「えっ?」
「ご、ごめんなさいシェル兄様なんでもありません…はははは」
「?」
まさかシェル王子が、俺が思っていた事そのまま言うとは思っていなかった。
俺はテーブルの上に置いたカップを見て笑みが止まらなかった
「はあ~っ、良い匂いと良い色が出て美味しそうです」
「…良く見ましたら…濃いお茶のようですね…葉を入れすぎたのでしょうか…」
「これで良いです。お茶の色が出ていますから」
「……」
「シェル兄様、先に飲んで下さい」
「わ、私が先ですか?!ウ、ウィル一緒に飲みませんか?」
「え~っ仕方ないな~シェル兄様の頼みですから一緒に飲んであげましょう」
「……ウィル、私で遊んでいませんか…?」
「えっ、気のせいですシェル兄様!いただきま~す!!」
「…頂きましょう…」
俺はシェル王子に先に飲んで良いと言っていながら俺が先に飲んでいた。
「ゴクン、ゴクン…はあ~~っおいしい~~っ!シェル兄様は?どうですか?」
「…微妙と言いましょうか…薬草を飲んでいますような…嫌いな味ではありませんが好んで飲みますには…」
複雑な顔をしてお茶を飲むシェル王子が、まるで子供のように見えて完璧な王子様にも苦手な飲み物があったんだと嬉しく思えた
(まあ、初めて飲む人はお茶の色とか味が苦手だと言うもんな。シェル王子は微妙とか言ってちょびちょび飲んでいるから、まあまあってとこかな?)
「…ウィル顔が笑っていますよ」
「え?気のせいです兄様」
俺は、お茶を少し飲んではじっとお茶の色を見ているシェル王子が可笑しくて、声が出ない笑いを押さえるのに必死だった。




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