兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ

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それぞれの朝の出来事⑥

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シェル王子の部屋の前で護衛を務めるエリック騎士とロベール騎士は「はぁ…」と息を吐くロベール騎士が暗い顔をしていた。
「ロベールさん、何回目のため息ですか?」
「そんな事数える訳が無いだろう、シェル様が睨むような目を向けたのだぞいつもならため息を吐くか、聞き流されるのが多かったはずだが、今日はまさかあのような目を向けられるとは…何があったのかサッパリ分からない」
「余りにもロベールさんがしつこいのでシェル様がお怒りに成ったのでは無いですか?」
「うっ!それは……身に覚えが在りすぎて何も言えないが…以前のシェル様は嫌なお顔をする事なくご令嬢の方々と楽しんでおりましたのに、たまにジル様にカイザック様を誘われ、お茶会等を楽しまれたのにどうして今はご令嬢の方々と御会いに成らないのかが不思議だ今もご令嬢の方数名城へお越しだと言うのに……はぁ…」
「……」
エリック騎士は何故シェル王子が令嬢達の元へ行かない事は分かっていた。
遠い目で見ているロベール騎士は思い出したように声を出していた。
「あの頃のシェル様とご令嬢の方は小さな庭で散歩をされ良く笑い声が聞こえたものだった……帰り際ではご令嬢の方が別れを惜しみシェル様が抱き締めて口付けを交わされた御二人のお姿は綺麗なものだった……」
「……何故その事をロベールさんが知って居るのですか?」
「えっ」
エリック騎士の目がじっとロベール騎士を見て問いかける姿をロベール騎士は汗は流れて居ないのにまるで汗を流したようにじわじわと身体が熱く成るのが分かった。
「令嬢方と二人の時は私達は側に居ては成らない事に成っていたはずです、何故ロベールさんがシェル様達の行動を知って居るのですか?」
「えっ、いや、その…エリック、あの時はシェル様とご令嬢の事が気に成っていたもので……その…」
「覗き見をしていたのですか?ロベールさん」
「うっ!」
ロベール騎士は顔が真っ青に成りエリック騎士の顔がまともに見れなかった。
独り言のように話してしまうのがロベール騎士の悪い癖で、一番聞かれては不味い騎士に聞かれてしまった。
シェル王子の護衛騎士の中でシェル王子が目に掛けて居るのがエリック騎士である。
「……エ、エリックさっきの話しはシェル様には……」
「お知らせしません、今のシェル様は心に余裕が在りませんので」
「心に余裕?」
カッカッカッと離れから廊下を歩く騎士が「よう!」とエリック騎士とロベール騎士に手を上げて挨拶をするカイザック王子が廊下を歩いていた。
二人の騎士は軽く頭を下げカイザック王子に挨拶をしていた。
「護衛お疲れ様、どうしたロベール騎士顔が真っ青だが、具合でも悪いのか?」
「い、いえカイ様気のせいで御座います」
「そうか?」
キョトンとした顔を見せるカイザック王子はシェル王子の部屋へと目を向けた。
「シェル兄は……」
「騎士室で御座いますカイ様」
「そうか……今からウィルの部屋へ向かう所だったが…」
「……カイ様また護衛騎士をお連れでは無いのですか?」
ロベール騎士が後ろにカイザック王子付きの護衛騎士が居ない事に声を掛けていた。
「ん、ああっ、ウィルの部屋までだからな俺の部屋で待機している」
「カイ様御出掛けの時は護衛の騎士も一緒に行かれた方が宜しいかと思いますが……」
「お前達もシェル兄と一緒だぞ」
「そ、それはわたくし達はシェル様の指示で動いておりますので……」
「それなら俺の護衛騎士も一緒のようなものだ」
「はぁ…」
ニカッ!と笑うカイザック王子に上手く丸め込まれた感じを受けるロベール騎士。
タッタッタッと早歩きで「はあはあ」と息を切らして廊下を歩く騎士がカイザック王子の顔を見て声を掛けていた。
「お、御早う御座いますカイザック副団長…あのシェル騎士団長の御部屋はこの辺りでしょうか?」
「ああっ、此処に居る護衛騎士二人が立つ部屋がシェル兄の部屋だが、どうしたそんなに慌てたように来ているが」
「申し訳在りません、あのシェル騎士団長の護衛の方でエリック騎士はどなたでしょうか?」
カイザック王子とロベール騎士そして知らない騎士から自分の名前を呼ばれたエリック騎士は無表情の顔で名乗り出ていた。
「……私ですが…」
「お、お疲れ様です、あのわたくしは騎士室の護衛をしている者で、シェル騎士団長がエリック騎士に御用が在りますとの事で直ぐに騎士室へ向かわれて下さい」
「シェル様が私にですか?……分かりました今すぐ伺います。ロベールさん暫く抜けますので」
「ああっ、分かった護衛なら大丈夫だ」
エリック騎士はロベール騎士に軽く頭を下げると呼びに来た騎士と一緒に騎士室へ向かい、カイザック王子も二人の後を追うように騎士室へと向かって行った。














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