兄たちが弟を可愛がりすぎです

ウィル王子を食卓へ⑪

トーマス騎士をウィルの部屋に残し、ジル王子の護衛騎士ブラン騎士が廊下を先頭に成り歩きその後ろをマリアさんと俺をお姫様抱っこで抱き抱えているレオン騎士と一緒に、王様やシェル王子達が待っ食事の部屋へと向かっていた。
朝だからなのか騎士やメイド達の人数が多く見え、チクチクと視線が俺の方を向いている事ぐらい分かるほど、廊下ですれ違う視線は痛かった。
まるで試合に出ていた時のような視線……『おい、アイツ誰だ？サッカー部に居なかったよな』
『あ～っ、坂田の事か？！サッカー部が今の試合勝ちたいってんで、助っ人で入った奴だ』
『ああっ、あの助っ人君か何でも気が向いた時に各部に試合に出ている奴か！』
『坂田が入って雰囲気が変わったんだ、今まで向こうの奴らのペースだったが、坂田が入って良い調子でリードしているんだ』
『へ～え…すげえなあんなにスポーツ万能ならモテるんじゃないのか！？』
『いやぁ……坂田の場合彼女が居ないんだな、これが』
『そうか？身長もスラッとして羨ましい体格だし、顔は……何処にでもいる平凡な顔だけどな……スポーツ万能なら彼女が居ても可笑しくないけどな』
『まぁ、女子から見ればやっぱ顔が良い奴でないとダメ何じゃないか？俺みたいにスポーツはそこそこだけどさ彼女が応援するのはやっぱ違うな』
『ははっ、自分で顔が良いって凄い自信だな』
『スポーツは出来ても顔がいまいちだと彼女に成りたいっていう女子は居ないと思うぜ』
『おおっ、そこまで言うか』
そんな会話を女子達が聞いて居たらしく俺に教えてくれた事があった。影で色々言われていた事は知っていたが俺自身、気にはしていなかった……何故今関係の無い事を思い出したのか今周りの騎士にメイド達の顔と、俺を見た後コソコソと話しをする光景を見たからかなと、俺は通り過ぎても視線を感じる為レオンさんに抱っこされながら通り過ぎた騎士にメイド達にヒラヒラと手を振りニコッと笑顔を見せた。
「えっ！？」と驚いた顔で騎士とメイド達は、頬を赤くなる者、手を振った後に向こうからも手を振る姿を見て、これもウィルの魅力なモノだろうなと、ウィルが生きて部屋の中から出たら声を出さずとも挨拶を交わすだけで沢山ウィルの存在を知って貰ったかも知れない……
「……ウィル王子どなたか知り合いの方でも居るのですか？」
近くで聞こえる声に俺は顔を見上げ、レオン騎士が俺が後ろを向き手を振る姿を見て声をかけたようだった。
「えっ、いえ知らない人達です」
「知らない者達に手などを振っていたのですか？」
少し口調がきつく聞こえるのは何故か分かんないけど俺はレオンさんにもニコッと笑顔を見せた。
「……っ、ウ、ウィル王子余り他の者にその笑顔を見せないで下さい」
（その笑顔は私だけに……と、言えないのが苦しい……）
「えっ、う～ん、今の僕には笑顔を見せてしまう習慣に成ってしまったのでつい笑ってしまうから……僕が笑うと変ですか？」
「……いえ……」
「？」
レオン騎士は今まで俺の顔を見ていたが顔を剃らし俺を見ないようにしている感じを受けた。
俺達の前を歩くブラン騎士は時々チラッと後ろを見る姿を見掛け声を掛けていた。
「ウィル王子もしできましたらジル様と御話しをして貰えたらと思いますが……」
「へ？」
俺は突然ブラン騎士からジル王子と会話をしてくれと聞き何で？と思ってしまった……庭園から戻って城に着いた時は会話らしい事が出来ずドキドキしか残って居なかったから、ジル王子と話しをと言っても皆ずら～っと並んでいる席で声が出るのか分からない状態だからな……それにジル王子との気まずいのもあるから…
「あの、どうしてジル兄様と御話しを？」
少し後ろに下がり俺とレオンさんの側で歩きブラン騎士はため息を何故か吐き話しを進めた。
「早朝から色々と在りましてそちらに居ますマリア様にもジル様との事で御迷惑をお掛け致しました」
「えっ、マリアさん？」
俺は後ろから着いてきているマリアさんの顔を見て何かあったのか？と首を傾げていた。
「その御話しでしたらレオン様も一緒ですわ」
「ええっ？」
俺はさっきまでマリアさんを見ていた方を今度はレオンさんの顔を見上げ俺は思わずレオンさんの騎士服を握り締めてそれに気付いてなのかレオンさんの身体がビクッと動き俺はいったい何があったのか？とマリアさんとレオンさんの顔を見た後メイド達の修羅場をまた聞くとは思わなかった。