兄たちが弟を可愛がりすぎです

ニース騎士何て事を

トントントン……と机の上を叩く指の音が静かな部屋で響き一人の騎士が真っ青な顔で机を叩く騎士の様子を伺っていた。
「……あ、あの……ジル様…」
ジロッと騎士の顔を見るジル王子に、慌てて聞き直す王様付きの近衛騎士ニースが汗を拭き再度ジル王子の名前を呼んだ。
「…ジル総隊長……あの、護衛騎士の方はまだ御見えには……」
「ああ…」
「……」
（か、会話が続かない……以前から必要以上の話をする事が無いとは知っていた……王様がウィル王子の部屋に居ると言っただけですっごく睨まれた…何故だ？親子で息子の部屋に泊まるのは王様は駄目なのか？……いや待てジル様も王様の息子だそれに今御体が治りきっては居ないと聞いた…もしかしたらジル様は王様に
部屋に来てもらいたいのでは？王様に心配して貰いたいのでは…だからあんなに機嫌が悪いのかも知れない……）
ニース騎士は何を思ったのかポンと手を叩きジル王子に声を掛けた。
「ジル様、王様をウィル王子の御部屋では無くジル様の御部屋にお連れすれば宜しかったのですね？申し訳御座いませんジル様も御寂しかったのですね」
ビリ～ッ！っと手に持っていた書類をジル王子は半分に裂いてしまいニース騎士はまた「えっ？違うの？」と普通に声を出してしまい、ジル王子の目が険しさを増し以前と変わらない人を寄せ付けないジル王子の姿に変わってしまった。
「誰が寂しいだと？俺が？王に？ハハハ笑えないな……」
（えええーっ！？ジル様が「俺」って言った！？笑え無いってさっき笑ったぞ、怒ってる？ねえ怒ってます？）
ニース騎士は言葉に成らない声で「え、あ、その、あの」と何を言えば良いのか分からず、「早く誰か来て！」と心の声が聞こえたのか……コンコン！と、扉を叩く音が聞こえた。
「御早う御座いますジル様、昨日は御休みを頂き有り難う御座いました」
部屋の中に入って来たのはジル王子付きの護衛騎士三人組だった
「そ、総隊長わたくしはこれで失礼致します」
慌てて礼をしたニース騎士は扉の前に立っている護衛騎士三人組に声を掛け慌てた。
「済まない、後は頼む」
ニース騎士は護衛騎士三人組に声を掛け勢いで部屋を出ていった
「？何だ今の…王様の近衛騎士？！」
「みたいだな…どうしたんだろう顔が真っ青だったが……」
「ジル様、先ほどの騎士は王様の近衛騎士の方ですか？」
「だから何だ」
「「「！？」」」
ゴゴゴゴ……とジル王子の後ろから見えない何か黒い靄が現れているように見え、護衛騎士達は驚き以前のジル王子に戻っているようにも見え「何故？何があったのですか？」と騎士三人組は声を張り上げて言った。
三人一緒に言えば恐くない……多分。