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王様と妃達⑧

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エリーゼ妃のただならぬ声が聞こえ、慌てて部屋の中に入ったエリーゼ付きの護衛騎士二人は、何故王様とメイドの一人が床に座り、エリーゼ妃から説教を受けて居るのか分からず近くにいる王様の近衛騎士に経緯を尋ねていた。
「……一体何が合ったのですか?」
「……王様の悪い癖が出たのだ、わたくしとエリーゼ様が席を外している時に一人だけ起きていたメイドに口付けをされていたのだ!」
「なっ!?」
「はあ?!」
騎士二人は思わず声を出し慌てて手を口に当てた。
「その場面を運悪くエリーゼ様に見られこの状態だ……」
「馬鹿……ゴホン、すみません…王様は何をお考えなんだ?エリーゼ様の御部屋でそれもエリーゼ様のメイド付きと……」
「全くだ、せっかくエリーゼ様が王様に心を御許しして居ました時に…何て事を……この事は王妃様ジャンヌ様のお耳に入るのは時間の問題です。」
「……」
この事は近衛騎士皆にも伝えなくてはいけないのかと近衛騎士の一人は肩を落としそして息子であるジル王子にも伝えるのかと思うと見たくもない表情のジル王子の顔を思い出していた。
「メイドの貴女に尋ねるけど、わたくしのメイド付きに希望しましたのは王様に近付く為ですの?それともいずれ王様がわたくしの部屋に来られました事を狙い一年もの間わたくしの元へ来られない王様が今夜のように突然の訪問でわたくしでは無く王様が貴女の元へ来るように色仕掛けでもしたのかしら?」
「ち、違いますエリーゼ様わたくしは王様に色仕掛け等致しておりません、わたくしは王様に近付く為にエリーゼ様のメイドに成ったのではありませんエリーゼ様をお慕いメイド付きを希望致しました。決してエリーゼ様を裏切る事等……」
「では王様から何故逃げようとはしなかったのですか?幾らでも拒めたはずでは?わたくしの元へ駆け寄る事も出来たでしょう…そこに眠っていますメイド達を起こす事も出来たのでは?」
「……それは…」
「エリーゼ彼女は悪くは無い……私がした事なのだ…」
「あら、王様お優しいのですね、口付けをしましてわたくしのメイドに惚れましたのかしら?」
「いや……その……」
「庭園の褒美として口付けをしたと言っておりましたがその理由をお聞かせ下さい王様、何故褒美で口付けなのですか?」
「……」
王様は身体が熱くなり顔から汗が流れ落ち今まで見たことも無いエリーゼ妃の怒りが身体に伝わり、口付けの場面を見られただけでこんなに怒るとは思わず、一年もの間部屋に通わない事でエリーゼ妃のパンドラの箱を開けてしまったのだと王様は今頃悔やみ後悔していた。
「答えられないのですか?王様」
「……始めは口付けをするつもりではなかったのだ、彼女を見ているとロラ嬢を思い出しつい彼女に口付けを……」
「……つ!?」
メイドは王様の思いがけない言葉で声を失いその場で泣き崩れてしまった。
メイドの泣き声で今まで眠っていたメイド達が起き出しキョロキョロと周りを見渡していた。
「な、何?何があったの?」
「えっ?何であの子王様と一緒に床に座り泣いているの?」
「……エ…エリーゼ様のお顔が……」
「私達が眠っている間何があったの?」
近衛騎士と護衛騎士二人は王様が側室のロラ嬢を思い出しメイドに口付けをしたと聞き王様に呆れ顔を見せ泣いているメイドが気の毒に思え王様は口に出してはいけない事を口に出していた。
「……」
エリーゼ妃は正座のまま泣き崩れるメイドと下を向き申し訳無いと言った表情を見せていた王様を見て眠りから目が覚めたメイド達に声を掛けていた。
「誰かこの子を椅子に座らせて飲み物を渡してあげて、それと器に水を入れて持って来てくれる?」
「「「「は、はい」」」」
メイド達は王様の隣で座り泣き崩れるメイドを支え自分達が座っていた長椅子に座らせて飲み物を渡していた。
一人のメイドは顔を洗うくらいの容器に水を入れテーブルの上に置いた。
王様は時々顔を上げエリーゼ妃の様子を伺っていた。
「……エリーゼ……私はいつまでここに座って居れば良いのだ?そろそろ足が痺れて……」
「もう少しの辛抱ですわ王様、わたくしに御話しをして下さいました褒美を差し上げますわ」
「褒美?」
エリーゼ妃はメイドが用意をした器を取り出し王様の前に立ち王様の頭の上から水が入った器をひっくり返し器の水が王様の頭に
「ザバ~~ッ!」と頭から水を被った王様はずぶ濡れになった。
「ぶふっぷ…うわ~っぷ……!?」
「「「「きやーっ!?」」」」
「うあっ!?」
「ええーっ!?」
「ええっ!?」
色んな叫び声が聞こえ王様は、正座をしたまま頭から足先までずぶ濡れになりエリーゼ妃は王様のずぶ濡れた姿を見て「フフフフ」と笑い、王様は放心状態のまま身体が固まり何が起こったのか分からず、水で視界が分からない時に顔を上げ不敵な笑みで笑うエリーゼ妃が妃達の中で一番恐い女性だと思い知らされた。










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