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それぞれの朝を迎え

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「俺は、君に贈り物をしたつもりでいた…君が買い物がしたいと言っていた日、俺は日を改めて行く約束をしたまま…俺の日常はいつから狂い始めたんだと……」
「…当時の旦那様はエミリーに夢中でしたから…私の話を聞こうとはしない日も何度もありましたから…私もそれに慣れてしまい旦那様に話さなくなりました…」
「……」
「はぁ、昔の事を話さないようにと思っていましたが…旦那様を見ると、つい…あ、部屋はすぐそこですから旦那様もおやすみください」
「あ…ね、眠れないと思ったら俺の部屋に来たら良い…」
「……」
ソフィアは不機嫌な顔でアレックを見ていた。
「…エミリーが通い続けていました旦那様の部屋に、私は入る事ができないと思います…おやすみなさい」
「!あ…っ…」
部屋に入ったソフィアをアレックは暫くその場から離れる事が出来ず、ソフィアは言い過ぎたと落ち込んでいた。
「どうしてあんな事を言ってしまったのかしら…今まで旦那様に言いたくても言えなかったのが今は言えるようになったから?」
ソフィアは手に持つアレックの血のついたタオルを見ていた。
「…エミリーの顔が分からないくらいに沢山の線を描くなんて…婚約者がいると聞いた旦那様はどんなに怒ったのかしら…もし、私が生きていたら旦那様はどうしたのかしら…また、私に寄りを戻してと言ったかしら?…いろいろと考えると旦那様とエミリーに私は振り回されていたのよね…はぁ~っ、昔の事を考えると気分が悪いわ…」
ソフィアはタオルを棚の上に置きベッドの上に仰向けになり見慣れた天井を見ていた。
「……旦那様から、求婚の話が出るなんて思わなかった…真面目な顔で真剣に考えてくれていたのが嬉しくて…二度目の結婚になるけれど旦那様を信じよう……」
ソフィアは眠りにつきそのまま朝まで目が覚めなかった。
その頃アレックは部屋に戻り肩を落としていた。
「…ソフィアが俺を受け入れてくれた事が嬉しく、部屋に誘ってしまった…疚しい事はなかった。ただ一緒にいる事が出来たらと…確かに、彼女から見るとエミリーが俺の部屋に通い続けているのを知れば部屋には行きたくないのは当然だ…ソフィアと一緒に暮らす事ができても俺を受け入れるのは時間がかかるだろう…俺が妻だった彼女を変えてしまったから…」
アレックはそのまま眠れず朝を迎えてしまった。




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