捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ

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抑えていた感情が…②

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「私は、披露宴から帰って来る旦那様を待っていたわ…ドレスを切ってしまって後から後悔して旦那様が帰ってきたら謝るつもりだったの…」
「……」
「少しは私の事を心配して早く帰って来ると思ったわ…」
(…十六年前の事でも最近のようにはっきりと覚えている…)
「でも、貴方は披露宴から帰って来ても私の部屋には来なかった…」
「……今は…す、すまないと思っているんだ…あの時の俺は…」
ポタポタと流れ落ちる涙は思い出すだけでも涙が流れ落ちていた。
「二階の貴方の部屋の前で…貴方がエミリーと一緒にいた時、私は貴方達二人の後ろにいたのを知らないでしょう?」
「あ…!」
「貴方とエミリーは私の目の前でキスをして部屋に行く約束をしていたわ…」
「!!」
「その時から、私は貴方との離婚を強く望んだの…でも、出来なかった…両親の顔を思い出したら離婚の事は言えなかった…貴方が…旦那様がいつか振り向いてくれる日が来ると信じて待っていたの…でも…我慢しないで私から貴方に離婚の話を言っていれば私は……」
グイッと私の手を引っ張る旦那様が私の体を抱きしめ涙を流していた。
「…悪かった…悪かった…君を苦しめて…悪かった……ううっ…」
「…旦那様…」
涙を流す旦那様は初めて見て…私の体を抱きしめ何度も謝っていた……ソフィア・ルモアの時は旦那様から抱きしめて貰える事はなかったのに…今の旦那様の体は服の上からでも分かるように痩せていた……
「……まだ、旦那様に言いたい事は沢山あります…有りすぎて話しきれません…」
旦那様も私もいつの間にか涙がかれ私はまだ離してくれない旦那様に戸惑っていた。
「…旦那様…あの…今夜は遅いのでお休みになって…」
「……行かないでくれ…」
「え…」
「…皇子の部屋には…行かないでくれ …」
「……兄は私が苦しんでいる時にいつも側にいた人です…旦那様が何故兄の所へ行かないで欲しいと言われるのか分かりません…」
「それは…」
グッと旦那様の体から離れた私は、旦那様の目元を持っていたタオルで拭いてあげた。
「……君は、十六年前から俺の事を憎んでいたのでは…」
「ええ…憎いです…貴方とエミリーは私を苦しめたのですから…」
「……っ」
「…でも、貴方に会えて私だと気づいてくれたのが嬉しかった…」
旦那様はタオルを持った私の手を掴んでため息をはいていた。
「……君を皇子の部屋に行って欲しくないのは…俺の妻だった人だから…」
私は驚いてしまった…今頃何を言っているのだろうと…
「私達は兄妹です。旦那様が心配する事はありませんから、私このまま兄の部屋に行きますから」
「あ…」
私は旦那様の手を離しアルフォンス皇子様の部屋へと向かった。
廊下で一人で立っている旦那様を残して…まるで、昔の私を見ている感じだった……









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