66 / 90
66、王女の母は食い下がる
しおりを挟む
「…………!!??」
衝撃のあまり、頭の中が真っ白になった。
まだ夫婦の営みができていないことを母に知られ、しかも、多くの人の面前でそれを晒された!?
とっさに何も言葉が出てこない。
自分のすべてが凍りついてしまい、母の高笑いだけが目に耳に入ってくる。
どうしたらいいのか……呼吸が……できない。
イーリアス様に背をさすられ、どうにか息をする。
(なんで……どうして、こんなっ、ことをっ)
「王妃陛下、結婚をお披露目する宴の最中の冗談としては性質が悪すぎるとお思いになりませんか」
私をかばいながらの、イーリアス様の低い声。
彼は声を抑えているけれど、どうしよう、会場じゅうの注目を集めている。
意識すると、また息ができなくなる。
「娘の夫でもないあなたに何か言う資格があって?」
「我が国の国王と、大陸聖教会がその成立を認めた結婚です」
「国と教会をたばかって結婚したふりなど、我が娘ながらずいぶんな真似をするものだと、ますます呆れるわ」
「────そもそも、母が娘に言う言葉ではないでしょう」
「一国の王妃と王女が、普通の母と娘と同じだと考えるあなたがおかしいわ。
それはともかく、私の娘はいまだトリニアス王家の王位継承権を持っているということに……」
急に、母が喉を押さえる。
(────?)
何か焦った様子で口をパクパクと動かし、驚いた目を私に向ける。
私は何もしていない。
隣のイーリアス様から強い怒りと魔力の流れを感じる。
(これは…………〈拘束魔法〉??)
そういえば、身体の動きや言葉を止めてしまう魔法があると聞いたことがある。
イーリアス様が母に〈拘束魔法〉をかけている?
母を、魔力で凌駕して?
「そうかぁ。アルヴィナ、君はまだ純潔を守っていたのかぁ」
ねっとりと気味の悪い男性の声が響く。私の元婚約者が、妙に熱っぽい目で私を見つめていた。
ぞわり、と怖気が走る。
「すべては私の誤解だったんだね。
それでも、やはり私のことが忘れられなくて、夫との夜を拒んでいたのか。
もっと早く私が迎えに来てあげれば……」
元婚約者の言葉がそこで途切れたのはイーリアス様の拘束魔法、ではなく、その身体がその場で宙を舞ったからだ。
ドレスをまとった女性の足に強烈な足払いを食らいながら、投げ飛ばされた元婚約者は、重厚なアンティークのテーブルに頭をぶつけて目を回した。
投げ飛ばしたのはドレス姿のカサンドラ様だった。
今日も王太子殿下についていたはずだったのに…………殿下は?
「────衛兵!!!」
と、会場に響き渡る声を上げたのはクロノス王太子殿下だった。
「トリニアス王国の頃より王女殿下にしつこく付きまとっていた妄想男が、トリニアス王妃陛下を魔法で人質にとり、会場に乱入しました。
カサンドラ・フォルクスが確保したこの男を速やかに連行し、王妃陛下の保護を!」
────大嘘だった。
その場で起きていたことから、あっけにとられるほど強引に作り上げたストーリー。
なのにクロノス王太子殿下の一声で、ざわついていた会場が一気に静まり、貴族たちは何も指示をしていないのにさあっと道を開け、衛兵たちがざざっと走り込んできた。
一瞬(え……!?)と思ったけど、貴族たちはそれで納得しているように見える。
……確かに、他ならぬ王太子殿下の言葉だ。
しかもイーリアス様ではなくわざわざカサンドラ様が、傍目には何もしていない段階で元婚約者を派手に取り押さえた(いえ、投げてるけど)というのが、説得力を増している。
母は、焦った様子でカサンドラ様と王太子殿下をにらむけど、まだ〈拘束魔法〉が効いているのか、言葉が出てこないようだ。
瞬く間に衛兵たちに囲まれる。
…………私は深く息を吸った。
母の表情が、深い屈辱に歪んでいる。
魔法自慢、かつ、その魔力で恐れられていた母にとって、魔法勝負で負けるというのは悔しすぎるはずだ。
それも魔法で見下していた国の、王族でもない爵位も持たない男性に負けたのだから。
しかもこの場で、乱入者(本当は私の元婚約者)に魔法で人質に取られていたとされた。
本当に私の身体がどうであろうと、この場でするには無礼すぎるさっきまでの母の言動は
『乱入者に操られてしたことだ』
と、この場にいる大半の人は思うだろう。
国家間の約束をもって結婚を認めたものなのに、それをわざわざ人前で『結婚が成立していない』と、しかも仮にも一国の王妃が主張するなど、おかしすぎることだから。
ここからもし何かまだ母が言ったとしても、それもまた操られてのことだと、招待客らには思われるだろう……。
(…………助かった……助けられた)
イーリアス様が、カサンドラ様が、クロノス王太子殿下が……守ってくださった。
衛兵を掻き分けるようにして、宰相閣下が入っていらっしゃる。
表情は相変わらずにこやかで、それだけに、恐い。
母はイーリアス様に目を向け、喉を指差した。
何か言わせろ、ということのようだ。
ほどなくして、母は、喉をさすった。軽く発声をしてみて、その上で宰相閣下に冷たい目を向ける。
「…………この国はずいぶんな屈辱をわたくしに与えてくれたこと。
この借り、覚えておくわ」
母の声は先ほどより小さく、衛兵の壁で声は外に通らない。
「まだ、そこに落ちている狼藉者の魔法の影響が残っていらっしゃるようですな。
おいたわしいことです。どうぞ控え室にて休まれませ」
「結婚は成立していない。わたくしの娘は貴国をも騙したといえるのではなくて」
「それこそ、王妃陛下が正気でいらっしゃれば、おっしゃるはずのないお言葉ですな。
国の面子に泥を塗ろうというのですから。
仮にも一国の王妃でいらっしゃるならその重みを重々承知の上のはず」
「…………国として、王女の返還を求めたいと言ったら?」
(…………!!)
恐れていた言葉を、母が口にした。
衝撃のあまり、頭の中が真っ白になった。
まだ夫婦の営みができていないことを母に知られ、しかも、多くの人の面前でそれを晒された!?
とっさに何も言葉が出てこない。
自分のすべてが凍りついてしまい、母の高笑いだけが目に耳に入ってくる。
どうしたらいいのか……呼吸が……できない。
イーリアス様に背をさすられ、どうにか息をする。
(なんで……どうして、こんなっ、ことをっ)
「王妃陛下、結婚をお披露目する宴の最中の冗談としては性質が悪すぎるとお思いになりませんか」
私をかばいながらの、イーリアス様の低い声。
彼は声を抑えているけれど、どうしよう、会場じゅうの注目を集めている。
意識すると、また息ができなくなる。
「娘の夫でもないあなたに何か言う資格があって?」
「我が国の国王と、大陸聖教会がその成立を認めた結婚です」
「国と教会をたばかって結婚したふりなど、我が娘ながらずいぶんな真似をするものだと、ますます呆れるわ」
「────そもそも、母が娘に言う言葉ではないでしょう」
「一国の王妃と王女が、普通の母と娘と同じだと考えるあなたがおかしいわ。
それはともかく、私の娘はいまだトリニアス王家の王位継承権を持っているということに……」
急に、母が喉を押さえる。
(────?)
何か焦った様子で口をパクパクと動かし、驚いた目を私に向ける。
私は何もしていない。
隣のイーリアス様から強い怒りと魔力の流れを感じる。
(これは…………〈拘束魔法〉??)
そういえば、身体の動きや言葉を止めてしまう魔法があると聞いたことがある。
イーリアス様が母に〈拘束魔法〉をかけている?
母を、魔力で凌駕して?
「そうかぁ。アルヴィナ、君はまだ純潔を守っていたのかぁ」
ねっとりと気味の悪い男性の声が響く。私の元婚約者が、妙に熱っぽい目で私を見つめていた。
ぞわり、と怖気が走る。
「すべては私の誤解だったんだね。
それでも、やはり私のことが忘れられなくて、夫との夜を拒んでいたのか。
もっと早く私が迎えに来てあげれば……」
元婚約者の言葉がそこで途切れたのはイーリアス様の拘束魔法、ではなく、その身体がその場で宙を舞ったからだ。
ドレスをまとった女性の足に強烈な足払いを食らいながら、投げ飛ばされた元婚約者は、重厚なアンティークのテーブルに頭をぶつけて目を回した。
投げ飛ばしたのはドレス姿のカサンドラ様だった。
今日も王太子殿下についていたはずだったのに…………殿下は?
「────衛兵!!!」
と、会場に響き渡る声を上げたのはクロノス王太子殿下だった。
「トリニアス王国の頃より王女殿下にしつこく付きまとっていた妄想男が、トリニアス王妃陛下を魔法で人質にとり、会場に乱入しました。
カサンドラ・フォルクスが確保したこの男を速やかに連行し、王妃陛下の保護を!」
────大嘘だった。
その場で起きていたことから、あっけにとられるほど強引に作り上げたストーリー。
なのにクロノス王太子殿下の一声で、ざわついていた会場が一気に静まり、貴族たちは何も指示をしていないのにさあっと道を開け、衛兵たちがざざっと走り込んできた。
一瞬(え……!?)と思ったけど、貴族たちはそれで納得しているように見える。
……確かに、他ならぬ王太子殿下の言葉だ。
しかもイーリアス様ではなくわざわざカサンドラ様が、傍目には何もしていない段階で元婚約者を派手に取り押さえた(いえ、投げてるけど)というのが、説得力を増している。
母は、焦った様子でカサンドラ様と王太子殿下をにらむけど、まだ〈拘束魔法〉が効いているのか、言葉が出てこないようだ。
瞬く間に衛兵たちに囲まれる。
…………私は深く息を吸った。
母の表情が、深い屈辱に歪んでいる。
魔法自慢、かつ、その魔力で恐れられていた母にとって、魔法勝負で負けるというのは悔しすぎるはずだ。
それも魔法で見下していた国の、王族でもない爵位も持たない男性に負けたのだから。
しかもこの場で、乱入者(本当は私の元婚約者)に魔法で人質に取られていたとされた。
本当に私の身体がどうであろうと、この場でするには無礼すぎるさっきまでの母の言動は
『乱入者に操られてしたことだ』
と、この場にいる大半の人は思うだろう。
国家間の約束をもって結婚を認めたものなのに、それをわざわざ人前で『結婚が成立していない』と、しかも仮にも一国の王妃が主張するなど、おかしすぎることだから。
ここからもし何かまだ母が言ったとしても、それもまた操られてのことだと、招待客らには思われるだろう……。
(…………助かった……助けられた)
イーリアス様が、カサンドラ様が、クロノス王太子殿下が……守ってくださった。
衛兵を掻き分けるようにして、宰相閣下が入っていらっしゃる。
表情は相変わらずにこやかで、それだけに、恐い。
母はイーリアス様に目を向け、喉を指差した。
何か言わせろ、ということのようだ。
ほどなくして、母は、喉をさすった。軽く発声をしてみて、その上で宰相閣下に冷たい目を向ける。
「…………この国はずいぶんな屈辱をわたくしに与えてくれたこと。
この借り、覚えておくわ」
母の声は先ほどより小さく、衛兵の壁で声は外に通らない。
「まだ、そこに落ちている狼藉者の魔法の影響が残っていらっしゃるようですな。
おいたわしいことです。どうぞ控え室にて休まれませ」
「結婚は成立していない。わたくしの娘は貴国をも騙したといえるのではなくて」
「それこそ、王妃陛下が正気でいらっしゃれば、おっしゃるはずのないお言葉ですな。
国の面子に泥を塗ろうというのですから。
仮にも一国の王妃でいらっしゃるならその重みを重々承知の上のはず」
「…………国として、王女の返還を求めたいと言ったら?」
(…………!!)
恐れていた言葉を、母が口にした。
13
お気に入りに追加
1,513
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
上官は秘密の旦那様。〜家族に虐げられた令嬢はこの契約結婚で幸せになる〜
見丘ユタ
恋愛
幼くして家を追い出された元男爵令嬢アルティーティは弓騎士を志し、騎士団の遊撃部隊に入隊する──女ということを隠して。
絶対に正体がバレてはいけないのに、配属初日、隊長のジークフリートにバレてしまう。
あわや除隊か、と思われたが、彼から思わぬ提案が出される。
「このことを黙っている代わりに、俺と結婚しろ」と。
ある時は騎士、ある時は貴族、秘密の二重生活の中ふたりは次第にお互いを意識していき──。
※体調不良のため、しばらく不定期更新
この裏切りは、君を守るため
島崎 紗都子
恋愛
幼なじみであるファンローゼとコンツェットは、隣国エスツェリアの侵略の手から逃れようと亡命を決意する。「二人で幸せになろう。僕が君を守るから」しかし逃亡中、敵軍に追いつめられ二人は無残にも引き裂かれてしまう。架空ヨーロッパを舞台にした恋と陰謀 ロマンティック冒険活劇!
【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう
蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。
王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。
味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。
しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。
「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」
あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。
ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。
だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!!
私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です!
さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ!
って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!?
※本作は小説家になろうにも掲載しています
二部更新開始しました。不定期更新です
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
【第二部連載中】あなたの愛なんて信じない
風見ゆうみ
恋愛
シトロフ伯爵家の次女として生まれた私は、三つ年上の姉とはとても仲が良かった。
「ごめんなさい。彼のこと、昔から好きだったの」
大きくなったお腹を撫でながら、私の夫との子供を身ごもったと聞かされるまでは――
魔物との戦いで負傷した夫が、お姉様と戦地を去った時、別チームの後方支援のリーダーだった私は戦地に残った。
命懸けで戦っている間、夫は姉に誘惑され不倫していた。
しかも子供までできていた。
「別れてほしいの」
「アイミー、聞いてくれ。俺はエイミーに嘘をつかれていたんだ。大好きな弟にも軽蔑されて、愛する妻にまで捨てられるなんて可哀想なのは俺だろう? 考え直してくれ」
「絶対に嫌よ。考え直すことなんてできるわけない。お願いです。別れてください。そして、お姉様と生まれてくる子供を大事にしてあげてよ!」
「嫌だ。俺は君を愛してるんだ! エイミーのお腹にいる子は俺の子じゃない! たとえ、俺の子であっても認めない!」
別れを切り出した私に、夫はふざけたことを言い放った。
どんなに愛していると言われても、私はあなたの愛なんて信じない。
※第二部を開始しています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる