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37、王女はやっぱり友達をつくりたい
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◇ ◇ ◇
「王女殿下も馬に乗られるんですか?」
「長いこと乗っていなかったので……イーリ……いえ、夫に教えてもらいながら乗ろうかと思いまして」
「そうなんですね。ここ、すごく走りやすくていいですよ。朝が特にオススメです」
────友達づくり作戦、第1弾。
(乗馬の講義後にカサンドラ様に話しかけて仲良くなろう。できればお茶とかに誘えたら……)
……と思っていたら、ささっと着替えて出てきたカサンドラ様のほうから、私のところにやってきた。
そして、
『王太子の身支度が終わるまで待つので、その間お話ししましょう』
と、さらっと言われた。さすがのコミュニケーション強者だわ。
私たちは見学席のような場所で椅子に座って話をしている。
イーリアス様を『夫』と呼ぶのが、なんだか自分で言っててもくすぐったい。
「カサンドラ様、学生でいらしたんですね」
「はい。王宮事務官候補生です。学業と実習の合間に王政関連の仕事を手伝ったり、王太子が国外に出るときには臨時で補佐官を務めています」
「それで和平交渉の際もいらしてたのですね」
夜会でのカサンドラ様を思い出す。
南の大陸にあるリュキア王国らしい、身体の線が出る薄手の生地のドレスを(一部の女性に陰口を叩かれる中)堂々と着こなしていた。
カサンドラ様も、私のように大きすぎるというのではないけれど、胸が大きい方だ。
けれどその胸は、しなやかな筋肉のついた長身痩躯にメリハリをつけていて、むしろカッコいい印象さえある。
「クロノスも……うちの王太子も、公務をこなしつつ王太子教育を受けているので、一緒に受ける講義もあるんですよ。今回みたいに」
「そうなのですね。
乗馬の講義はそんなに多いのですか?
143勝めとか……」
「ああ。あれは子どもの頃から数えての通算です」
「幼なじみなのですか!?」
「はい。今のところ私、彼に馬で負けたことがないので」
「女性がズボンでまたがって馬に乗っていたので……驚きました」
「あははは。速駆けだとスカートに横鞍じゃ落ちちゃいますからね!」
「異性装に当たりますよね……教会や、社交界の方から何か言われたりなど、ないのですか?」
「よくあります。けれど、いちいち人の言うことなんて聞いてたら、必要なこともできないですものね」
強い。アイギス様もこんな風に考えてるのかしら。
……やっぱり私には真似できないかも。
「きゅ、休日は普段何をなさってますか?」
「休日ですか? そうですね……王太子の気晴らしに付き合ったり、親友の赤ちゃんを愛でに行ったりしてます」
「なる、ほど?」
(……それじゃ、あんまりお茶って感じじゃない?)
というか休日も王太子殿下と一緒なのね。
「そうだ王女殿下、見ました? あのクロの……王太子の顔」
「え? ええ…………あ、あの、カサンドラ様っ」
「普段『出来ないことはない』みたいな顔でツンとしていますけど、中身は恐ろしく負けず嫌いなんですよ!
勝負ごとをすると、むきになって、やたらと可愛いんです!」
「カ、カサンドラ様……」
「だからこっちもつい負かしたくなっちゃって、手加減できなくて。
あとチェスなんかやってる時も……」
「あの……カサンドラ様。うしろ……」
「……え?」
カサンドラ様が後ろを振り返る。と、クロノス王太子殿下が氷のような眼差しでカサンドラ様を見下ろしていた。
一瞬、その場の空気が凍った。
「や、やぁ……お疲れ様です王太子殿下?」
クロノス王太子殿下はカサンドラ様に返事をせず目を外すと、私のほうに目礼したあと、「先に出ます」と冷たい声で踵を返した。
「待った! クロ、誤解、だからっ」カサンドラ様があわててクロノス殿下の腕をつかむ。
「誤解? 私が君に負けたのもむきになったのも事実ですが何か」
「いや、言い方がね? 決して馬鹿にしたわけじゃないんだよ。ほら何ていうんだろう『うちのこ可愛いでしょ』自慢的な感じのさ」
「君の子に生まれた覚えはありませんが?」
「言葉の綾! 謝る、本当に! 夕食のデザートあげてもいいから! あ、そ、そうだクロノス。話はとんでもなく変わるんだが、あの件アルヴィナ殿下の意見も聞いてみたらいいんじゃないか? ね?」
焦ったカサンドラ様がものすごく強引に私を巻き込んできた。
「あの件、ですか」
「せっかくだからさ、ね?」
クロノス王太子殿下は、少し躊躇する様子をみせたけど、カサンドラ様に力ずくでぐいぐい腕を引っ張られ引き戻されると、「仕方ないですね」とため息をついて、私に目をむける。
「アルヴィナ王女殿下。申し訳ないのですが、少しお時間をいただいてもよろしいですか?」
「え……ええ……。どういったお話ですの?」
カサンドラ様の隣に、クロノス王太子殿下は座った。
「長く、トリニアス王国の政務に携わっていらしたと伺っています。ご意見を伺いたいのは、我が国の西方の食料事情なのです」
「食料事情で、私に助言できるかどうか……トリニアスはいまもしばしば食料危機が発生している国ですので」
「その食料危機についてなのです。
西方のある地域で、大量発生した蝗の被害を受けまして……駆逐するとともに12月頃に一度食料支援をしたのですが、この度、その地域の領地の1つから追加支援の要請がありました」
「今の時期ですと……ベネディクト王国では領主の方は1月から皆さん王都にいらっしゃるのですよね……」
「ええ。追加支援を求めてきたのは領地にいた領主代行です。支援に問題はありませんが、同じぐらいの被害があった他の領地はそのままで良いか?懸念しています。
領主らは王都にいるので、現地を把握しているわけではありません」
「ただ、もう3月に入りますよね?」とカサンドラ様が口を挟む。
「冬の間はともかく、さすがに春ともなれば領民のほうでどうにでも乗り切れるんじゃないかと、重臣の皆さんは見ているんですよね……」
「いえ」
私は思わず口を開いた。
「────春は餓死者が増える季節です」
「え?」
私は続ける。
「冬小麦の収穫は初夏まで待たなければなりません。大麦や芋や蕎麦の収穫時期でもありません。
秋の実りを冬の間に食べつくし、しかしすぐにお腹を満たす穀物類が収穫できるわけではない。自生している植物も期待できない。春はそういう時期なのです」
……と、そこまで語って、ちょっと不安になって「その土地の農業事情に合っているかはわかりませんが……」と私は続けた。
「いえ。勉強になります」
王太子殿下がうなずく。
「かの地の主力の作物は小麦です。あまり猶予はありませんね。念のため、支援食糧を多めに持たせて西方に視察官を送りましょう。
ご助言くださり、大変助かりました。深く感謝申し上げます」
「い、いえ……そのような。お役に立ったのなら良いのですが」
「カシィ。早々に王宮に戻りますよ」
「え、あ、待って────」
早足で去ろうとするクロノス王太子殿下。カサンドラ様は私に「ありがとうございましたっ」と頭を下げてから、その背中を追っていった。
近くで控えていたナナが小走りに駆け寄ってくる。紅潮した顔で声をかけてくる。
「やはり王女様なんですね! 王太子殿下が助言を乞うなんて……すごいです」
「そんなわけでも……」
(……余計なこと……したかしら)
ただ、あの助言、2年前、私自身がもう少しで失敗するところだった経験からきていたのだ。
────う。そういえば。
(カサンドラ様をお茶に誘えなかったわ……)
……残念。
◇ ◇ ◇
「王女殿下も馬に乗られるんですか?」
「長いこと乗っていなかったので……イーリ……いえ、夫に教えてもらいながら乗ろうかと思いまして」
「そうなんですね。ここ、すごく走りやすくていいですよ。朝が特にオススメです」
────友達づくり作戦、第1弾。
(乗馬の講義後にカサンドラ様に話しかけて仲良くなろう。できればお茶とかに誘えたら……)
……と思っていたら、ささっと着替えて出てきたカサンドラ様のほうから、私のところにやってきた。
そして、
『王太子の身支度が終わるまで待つので、その間お話ししましょう』
と、さらっと言われた。さすがのコミュニケーション強者だわ。
私たちは見学席のような場所で椅子に座って話をしている。
イーリアス様を『夫』と呼ぶのが、なんだか自分で言っててもくすぐったい。
「カサンドラ様、学生でいらしたんですね」
「はい。王宮事務官候補生です。学業と実習の合間に王政関連の仕事を手伝ったり、王太子が国外に出るときには臨時で補佐官を務めています」
「それで和平交渉の際もいらしてたのですね」
夜会でのカサンドラ様を思い出す。
南の大陸にあるリュキア王国らしい、身体の線が出る薄手の生地のドレスを(一部の女性に陰口を叩かれる中)堂々と着こなしていた。
カサンドラ様も、私のように大きすぎるというのではないけれど、胸が大きい方だ。
けれどその胸は、しなやかな筋肉のついた長身痩躯にメリハリをつけていて、むしろカッコいい印象さえある。
「クロノスも……うちの王太子も、公務をこなしつつ王太子教育を受けているので、一緒に受ける講義もあるんですよ。今回みたいに」
「そうなのですね。
乗馬の講義はそんなに多いのですか?
143勝めとか……」
「ああ。あれは子どもの頃から数えての通算です」
「幼なじみなのですか!?」
「はい。今のところ私、彼に馬で負けたことがないので」
「女性がズボンでまたがって馬に乗っていたので……驚きました」
「あははは。速駆けだとスカートに横鞍じゃ落ちちゃいますからね!」
「異性装に当たりますよね……教会や、社交界の方から何か言われたりなど、ないのですか?」
「よくあります。けれど、いちいち人の言うことなんて聞いてたら、必要なこともできないですものね」
強い。アイギス様もこんな風に考えてるのかしら。
……やっぱり私には真似できないかも。
「きゅ、休日は普段何をなさってますか?」
「休日ですか? そうですね……王太子の気晴らしに付き合ったり、親友の赤ちゃんを愛でに行ったりしてます」
「なる、ほど?」
(……それじゃ、あんまりお茶って感じじゃない?)
というか休日も王太子殿下と一緒なのね。
「そうだ王女殿下、見ました? あのクロの……王太子の顔」
「え? ええ…………あ、あの、カサンドラ様っ」
「普段『出来ないことはない』みたいな顔でツンとしていますけど、中身は恐ろしく負けず嫌いなんですよ!
勝負ごとをすると、むきになって、やたらと可愛いんです!」
「カ、カサンドラ様……」
「だからこっちもつい負かしたくなっちゃって、手加減できなくて。
あとチェスなんかやってる時も……」
「あの……カサンドラ様。うしろ……」
「……え?」
カサンドラ様が後ろを振り返る。と、クロノス王太子殿下が氷のような眼差しでカサンドラ様を見下ろしていた。
一瞬、その場の空気が凍った。
「や、やぁ……お疲れ様です王太子殿下?」
クロノス王太子殿下はカサンドラ様に返事をせず目を外すと、私のほうに目礼したあと、「先に出ます」と冷たい声で踵を返した。
「待った! クロ、誤解、だからっ」カサンドラ様があわててクロノス殿下の腕をつかむ。
「誤解? 私が君に負けたのもむきになったのも事実ですが何か」
「いや、言い方がね? 決して馬鹿にしたわけじゃないんだよ。ほら何ていうんだろう『うちのこ可愛いでしょ』自慢的な感じのさ」
「君の子に生まれた覚えはありませんが?」
「言葉の綾! 謝る、本当に! 夕食のデザートあげてもいいから! あ、そ、そうだクロノス。話はとんでもなく変わるんだが、あの件アルヴィナ殿下の意見も聞いてみたらいいんじゃないか? ね?」
焦ったカサンドラ様がものすごく強引に私を巻き込んできた。
「あの件、ですか」
「せっかくだからさ、ね?」
クロノス王太子殿下は、少し躊躇する様子をみせたけど、カサンドラ様に力ずくでぐいぐい腕を引っ張られ引き戻されると、「仕方ないですね」とため息をついて、私に目をむける。
「アルヴィナ王女殿下。申し訳ないのですが、少しお時間をいただいてもよろしいですか?」
「え……ええ……。どういったお話ですの?」
カサンドラ様の隣に、クロノス王太子殿下は座った。
「長く、トリニアス王国の政務に携わっていらしたと伺っています。ご意見を伺いたいのは、我が国の西方の食料事情なのです」
「食料事情で、私に助言できるかどうか……トリニアスはいまもしばしば食料危機が発生している国ですので」
「その食料危機についてなのです。
西方のある地域で、大量発生した蝗の被害を受けまして……駆逐するとともに12月頃に一度食料支援をしたのですが、この度、その地域の領地の1つから追加支援の要請がありました」
「今の時期ですと……ベネディクト王国では領主の方は1月から皆さん王都にいらっしゃるのですよね……」
「ええ。追加支援を求めてきたのは領地にいた領主代行です。支援に問題はありませんが、同じぐらいの被害があった他の領地はそのままで良いか?懸念しています。
領主らは王都にいるので、現地を把握しているわけではありません」
「ただ、もう3月に入りますよね?」とカサンドラ様が口を挟む。
「冬の間はともかく、さすがに春ともなれば領民のほうでどうにでも乗り切れるんじゃないかと、重臣の皆さんは見ているんですよね……」
「いえ」
私は思わず口を開いた。
「────春は餓死者が増える季節です」
「え?」
私は続ける。
「冬小麦の収穫は初夏まで待たなければなりません。大麦や芋や蕎麦の収穫時期でもありません。
秋の実りを冬の間に食べつくし、しかしすぐにお腹を満たす穀物類が収穫できるわけではない。自生している植物も期待できない。春はそういう時期なのです」
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「え、あ、待って────」
早足で去ろうとするクロノス王太子殿下。カサンドラ様は私に「ありがとうございましたっ」と頭を下げてから、その背中を追っていった。
近くで控えていたナナが小走りに駆け寄ってくる。紅潮した顔で声をかけてくる。
「やはり王女様なんですね! 王太子殿下が助言を乞うなんて……すごいです」
「そんなわけでも……」
(……余計なこと……したかしら)
ただ、あの助言、2年前、私自身がもう少しで失敗するところだった経験からきていたのだ。
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